婚約破棄が、実はドッキリだった? わかりました。それなら、今からそれを本当にしましょう。

木山楽斗

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「なるほど……」

 私の書いた手記を読んで、ソルガード様はゆっくりとそう呟いた。
 その表情は、非常に微妙なものだ。なんだか、不満がありそうにも見える。

「エルフィリナ様、あなたの事件を後世にも伝えていこうという志は、非常に立派なものだと思います。ただ、これは少し、その……趣旨とずれているのではないでしょうか?」
「そうでしょうか?」
「ええ、少し脚色というか……事実と異なる部分が散見されます。僕が関わっている部分だけでも、そう思ってしまいます」
「それは、目を瞑ってください。記憶を辿って書いたのですから、多少は仕方ないでしょう?」

 ソルガード様は、苦笑いをしていた。
 確かに、多少の脚色は加えてしまったかもしれない。だが、完全に当時のことを記すことなどできるはずはない。そんなに詳細に覚えている訳ではないのだから、想像力を働かせなければならない部分もあったのだ。

「まあ、確かに仕方ない部分もあるのかもしれません。ただ、少なくとも僕はこんなに格好良くはなかったと思います。そんなに堂々としていた訳ではないはずですし、これはなんというか……空想上の僕でしかありません」
「いえ、私にはそう映っていたということですよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですけど、やはりどこか違和感が……」
「でも、私は後世の人間に、あなたが情けない人だと思われたくはありません。勘違いされるような部分を敢えて書く必要なんてないはずです」
「……やっぱり、確信犯で脚色しているんですね」

 ソルガード様は、自分の描写が気に入らなかったようである。
 だが、個人が書いている以上、多少の贔屓目が入ってしまうのは仕方ないのではないだろうか。私にとって、ソルガード様は格好良い人なのだから、情けないように書くなんて無理な話である。

「そもそも、これは個人の手記です。そこまでこだわる必要があるのでしょうか? 趣味みたいなものですよ?」
「そう言われると、そうなのですけど……」
「不満があるなら、ソルガード様が修正しますか?」
「え? いえ、まあ、そこまでする必要は……ないのでしょうか?」

 私の言葉に、ソルガード様は目をそらした。どうやら、わざわざ修正しようとまでは思わなかったようである。

「さて、それではそろそろ出かける準備をしましょうか?」
「そうですね……お祖母様を待たせてはいけません」
「ええ、でも、お祖母様があの事件の後は、特に何もなく、健康に過ごしているとは、この手記を見た人は思わないかもしれませんね」
「まあ、それは確かにそうですね……あの方の生命力というのは、本当に見上げたものだと思ってしまいます」
「私のお祖母様ですもの」
「それは……なんとも説得力がありますね」

 私とソルガード様は、笑い合った。
 そんな風にしながら、私達はお祖母様の元に行く準備をするのだった。
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