私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗

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3.無責任な願い

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 故郷に帰るのは、随分と久し振りのことである。軽々しく帰れる距離でもないので、王都に来てからは年に一回くらいしか帰れなかった。
 聖女になってからは、もっと帰るのは難しくなってしまい、結局故郷には帰れていない。

「突然帰ったら、驚かれるかな……」

 馬車の中で、私はそんなことを呟いた。
 父や母には連絡しようかとも思ったのだが、すぐに出発するため手紙を出してもそれとそれ程変わらないくらいに着くはずなので、やめておいた。
 とにかく、今は故郷に帰りたい。空気の綺麗な故郷なら、きっと私の疲弊したこの体を癒してくれるだろう。

「王城は大丈夫だろうか……」

 ほぼ衝動的に啖呵を切ってしまったが、今になって少し心配になってきた。
 王城は、私がいなければまず回らなくなってしまう。その皺寄せが部下達に行ったりしなければいいのだが。

「いや、そもそも私が上に立っていたからいけなかったのかもしれない……」

 今になって振り返ってみれば、最初にドルマール様の要求を叶えたのが間違いだったのかもしれない。
 あの時も無理な日程だった。しかし、私はできると思ってしまった。自分で言うのもなんだが、私は優秀だったのだ。
 ドルマール様の無理な要求を、私は次々と叶えてしまった。もっと早く折れていた方がよかったのかもしれない。問題が起こった方が、結果的には良かったように思える。

「まあ、無責任なことには変わらないか……結局、私は役割を全て投げ出してしまったのだから」

 私は、無責任な人間だ。それはわかっている。
 部下達が私を責めても仕方ない。悲しいことではあるが、それは私の行動の結果だ。

「私にもっと力があればよかったのかもしれない……ドルマール様の言う通り、平民に聖女は荷が重かったということかな」

 私は平民である。王族とは圧倒的に権力が違う。
 私はドルマール様に逆らえなかった。彼が権力を振りかざせば、私の大切なものは簡単に奪われてしまう。
 せめて貴族であったなら、皆をまとめて抗議を行えた可能性はある。王族の直属の部下が平民というのは、歪な体制だったのかもしれない。

「まあ、それも言い訳か……」

 私は、自分の思考を締めくくった。
 結局私は、できなかった理由を探しているだけなのかもしれない。私が不出来な聖女だった。実際は、ただそれだけのことだったのだろう。

「無責任だけど、いい方向に向かってくれることを願うしかないか……」

 私が逃げ出したことによって、事態が好転する可能性もある。魔法関連の仕事の体制が崩れ去り、ドルマール様の悪行が白日の元に晒されるということもあり得るはずだ。
 無能だった聖女が退き、愚かなる王子の罪が晒される。それが最良の結末だ。そうなることを私は願っておこう。
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