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5.変わらない村
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カルックという村は、ウォーマルス王国の僻地にある小さな村だ。
高い魔力を持つ私は、王都で聖女を目指すことを決意してこの静かな村から旅立った。その日のことは、今でも鮮明に思い出せる。
あの日から、この村はあまり変わっていない。それが嬉しかった。発展していないということなので喜ぶべきかは微妙な所だが、故郷に帰って来たという感じがする。
「……アフィーリ?」
「え?」
故郷を見渡していた私は、聞き覚えのある声に視線を向けた。
すると、見覚えのある顔が見えてくる。
「ロヴァイド、久し振りだね」
「ああ、久し振りだな……しかし、どうしてお前がここに?」
幼馴染であるロヴァイドは、私が帰って来たことに驚いているようだ。
それは、当然のことではある。本来なら私は帰れるような立場ではない。
「故郷に帰って来るのが、そんなに変かな?」
「それはもちろん変ということはないが、しかしお前は聖女だろう? 簡単に帰って来られる立場ではないはずだ」
「聖女、やめたんだよね……」
「何?」
私の説明に、ロヴァイドは目を丸めていた。
聖女をやめた。その事実も、もちろん驚くべきことであるだろう。
とりあえず、私は事情を説明することにした。小さな村なので、誰かに事情を伝えておけばすぐに村中に広まる。説明の手間も省けるだろう。
「なるほど、どうやら大変だったようだな」
「うん、かなり大変だった」
「まあ、そういうことならこの村でゆっくりと暮らすといいさ。おじさんもおばさんも、喜ぶだろう。お前の夢を応援していたが、寂しそうだったからな」
「そっか……」
カルックには、私の両親がいる。二人とも、私の夢を応援して送り出してくれた。
だが、もちろん寂しかっただろう。この村で生まれた者は、大抵この村で一生を終える。二人もそう思っていたはずなので、私が王都に旅立つのは予想外のことだったはずだ。
「お父さんとお母さんのことを気にかけてくれていたんだね。ありがとう、ロヴァイド」
「いや、おじさんとおばさんには、俺もお世話になっているからな。そもそも、この村では助け合うのが当り前さ」
「そうだったね……」
カルックは小さな村で、他の地域との交流もそれ程盛んな訳ではない。
そのため、村人同士が助け合うのは当然なのだ。そうしなければ、この村では生きていけない。
そんな当たり前のことを忘れてしまう程、私はこの村を離れていた。その事実を改めて認識する。
「まあ、でも、それでもありがとう。私は、お父さんとお母さんを助けてあげられなかったから」
「その代わりに、お前はこの国のために尽くしてきたのさ。おじさんもおばさんも、それは誇りに思っているよ」
「そっか……」
話していると、なんだかお父さんとお母さんに無性に会いたくなってきた。
これからは、二人の傍にいられる。今までできなかった親孝行をしっかりと果たすことにしよう。
高い魔力を持つ私は、王都で聖女を目指すことを決意してこの静かな村から旅立った。その日のことは、今でも鮮明に思い出せる。
あの日から、この村はあまり変わっていない。それが嬉しかった。発展していないということなので喜ぶべきかは微妙な所だが、故郷に帰って来たという感じがする。
「……アフィーリ?」
「え?」
故郷を見渡していた私は、聞き覚えのある声に視線を向けた。
すると、見覚えのある顔が見えてくる。
「ロヴァイド、久し振りだね」
「ああ、久し振りだな……しかし、どうしてお前がここに?」
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それは、当然のことではある。本来なら私は帰れるような立場ではない。
「故郷に帰って来るのが、そんなに変かな?」
「それはもちろん変ということはないが、しかしお前は聖女だろう? 簡単に帰って来られる立場ではないはずだ」
「聖女、やめたんだよね……」
「何?」
私の説明に、ロヴァイドは目を丸めていた。
聖女をやめた。その事実も、もちろん驚くべきことであるだろう。
とりあえず、私は事情を説明することにした。小さな村なので、誰かに事情を伝えておけばすぐに村中に広まる。説明の手間も省けるだろう。
「なるほど、どうやら大変だったようだな」
「うん、かなり大変だった」
「まあ、そういうことならこの村でゆっくりと暮らすといいさ。おじさんもおばさんも、喜ぶだろう。お前の夢を応援していたが、寂しそうだったからな」
「そっか……」
カルックには、私の両親がいる。二人とも、私の夢を応援して送り出してくれた。
だが、もちろん寂しかっただろう。この村で生まれた者は、大抵この村で一生を終える。二人もそう思っていたはずなので、私が王都に旅立つのは予想外のことだったはずだ。
「お父さんとお母さんのことを気にかけてくれていたんだね。ありがとう、ロヴァイド」
「いや、おじさんとおばさんには、俺もお世話になっているからな。そもそも、この村では助け合うのが当り前さ」
「そうだったね……」
カルックは小さな村で、他の地域との交流もそれ程盛んな訳ではない。
そのため、村人同士が助け合うのは当然なのだ。そうしなければ、この村では生きていけない。
そんな当たり前のことを忘れてしまう程、私はこの村を離れていた。その事実を改めて認識する。
「まあ、でも、それでもありがとう。私は、お父さんとお母さんを助けてあげられなかったから」
「その代わりに、お前はこの国のために尽くしてきたのさ。おじさんもおばさんも、それは誇りに思っているよ」
「そっか……」
話していると、なんだかお父さんとお母さんに無性に会いたくなってきた。
これからは、二人の傍にいられる。今までできなかった親孝行をしっかりと果たすことにしよう。
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