私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗

文字の大きさ
7 / 24

7.仕送りの行方

しおりを挟む
「大変だったね……」
「うん……」

 夕食の時間、私は父と母に王都であったことを伝えた。
 二人とも、私の身に起こったことを悲しんでくれた。あまりいいことではないが、それが嬉しい。二人の思いやりが伝わってきたからだ。
 思えば、私は王都で一人だった。頼れるような人もほとんどおらず、責任がある立場に立ってしまった。今思えば、それもよくなかったのかもしれない。

「まあ、僕達から言えることはただ一つかな。お疲れ様」
「あなたは、聖女として立派に務めたと思うわ。だから、これからはこの村でゆっくりとしなさい」
「うん、そうさせてもらおうと思う」

 お母さんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 私が王都に戻ることは、もうないだろう。この故郷の村で、これからは穏やかな生活を送る。それでいいはずだ。

「ああ、そういえば、アフィーリがしてくれた仕送りなんだけどね」
「仕送り? それがどうかしたの?」
「実は使っていなくてね」
「え?」

 私は確かに二人に仕送りをしていた。聖女はこの国でもかなり高い役職であったため、かなりの給料がもらえており、両親にもそれなりの金額を送っていたはずだ。
 それが使われていないという事実に、驚きを隠せない。いや、だがよく考えてみれば、いつもと家の様子が変わっていないことからそれは予想できたことである。

「使っていないなんて、どうして?」
「まあ、大金だったからね……この村では、そんなにお金を使う機会もないし」
「でも、行商人とかが来た時に使えたんじゃないの?」
「お父さんもお母さんも、そんなに欲がある方ではないからね。生活に困ってもいなかったから、お金は使わなかったんだ」
「そ、そうなんだ……」

 確かに、お父さんもお母さんもお金があるからと無闇に使う人達ではない。そもそも、この村は助け合いの村であるため、物々交換も多くお金を使う機会はないような気もする。
 ということは、私の仕送りは意味がなかったのかもしれない。もう少し知恵を働かせて、王都の名物なんかを送ればよかった。私の配慮不足である。

「だから、そのお金をアフィーリに返すよ。まあ、アフィーリにも蓄えはあるんだろうけど……」
「あ、うん。正直、私にも必要ないかも。これからはこの村で暮らす訳だし……あ、いや、やっぱりもらえるならもらっておこうかな」
「そうかい? まあ、元々アフィーリのお金だから、好きなようにしてくれていいよ」
「うん、そうさせてもらう」

 お父さんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 別に私もお金をそこまで欲しいとは思っていない。しかし、お父さんとお母さんに持たせておいてもどうせ使わないので、私が預かって何かに変えて二人に返す方がいいだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結 私の人生に貴方は要らなくなった

音爽(ネソウ)
恋愛
同棲して3年が過ぎた。 女は将来に悩む、だが男は答えを出さないまま…… 身を固める話になると毎回と聞こえない振りをする、そして傷つく彼女を見て男は満足そうに笑うのだ。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

処理中です...