妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗

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15.王子殿下の転身

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「私とローレント侯爵は、寛大な措置を取っている。ヴォーラス、お前にはそれがわからないのか? 本来であれば、リオーラ嬢とともに暮らすなどということも許されないのだぞ?」
「……」

 国王様の言葉に、ヴォーラス殿下はその目を細めた。
 彼の表情からは、思考していることが読み取れる。この状況を打開する策を練っているのだろうか。
 しかしそれは無駄なことである。私はジオルト様とともに、綿密に作戦を立てたのだ。二人を追い詰める体制は、できあがっている。

「……父上、僕にリオーラ嬢との生活など必要ありません」
「何?」

 ヴォーラス殿下は、ゆっくりと言葉を発した。
 彼の表情は、強張っている。その視線は真っ直ぐだ。そこからは明確な意思という者が読み取れる。
 ただリオーラは、不安そうにしている。彼女の方は、ヴォーラス殿下に置いていかれているようだ。

「寛大な措置を取ってくれるというなら、そんなものよりも王家に留まらせていただきたい。リオーラ嬢との生活など、僕には不要だ」
「なっ……!」

 ヴォーラス殿下は、リオーラを切り捨てることを選んだようだった。
 それに妹は、唖然としている。ヴォーラス殿下の裏切りは、予想外だったということだろう。リオーラなりに、彼のことを信頼していたのかもしれない。

 その気持ちに関しては、わからない訳ではなかった。
 私もジオルト様とは利害の一致で協力していが、既に信頼してしまっている。彼に裏切られた場合、私も今の妹のようになるかもしれない。
 とはいえ、ジオルト様とヴォーラス殿下が同じという訳ではない。少なくともこのような誇りも何内裏切り方を、彼はしないと思う。

「ヴォーラス殿下、どういうつもりです?」
「……あまり馴れ馴れしく、僕に話しかけないでもらいたい。僕と君は、なんでもないのだから」
「な、なんですって?」

 ヴォーラス殿下は、方向をかなり転換するつもりらしい。
 彼はリオーラのことを冷たく突き放している。それはこれからする主張の下準備といった所か。

「ヴォーラス、どうしたというのだ?」
「父上、全ては勘違いです。僕とリオーラ嬢は、思い合ってなどおりません。少なくとも僕は違います。リオーラ嬢に気を遣って話を合わせていましたが、それももう終わりです」

 ヴォーラス殿下の表情は、なんとも不快なものだった。
 リオーラのことも私は快く思っていない訳だが、それでもこれには彼女に同情する。ヴォーラス殿下の転身は、あんまりだ。

 それは恐らく、彼なりに生き残るための術であるのだろう。
 しかしそれはむしろ逆効果だ。こんな転身を快く思う者などいない。現に国王様の表情も、今まで見たことがない程に強張っている。
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