溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗

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10.酒場にて

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 私はクレンド様とともに、とある町に来ていた。
 ここはヴェリオン伯爵家の領地内にあるとある町だ。ここではかつて、ペルリナが暮らしていたという。

「さてと、情報を集めるためにはやはり酒場などが良いだろうか」
「酒場、ですか……大丈夫ですかね?」

 クレンド様が示した目的地に、私は不安を感じていた。
 酒場というものに、正直そこまで良い印象はない。なんというか、柄の悪い人達が集まっていそうな気がする。
 もちろん、それは私の偏見かもしれない。ただやはり、酒を扱っている所なので、そういった人がいる可能性は高いのではないだろうか。

「レフティア嬢のことは、俺が守ってみせる。故に心配をすることはない」
「クレンド様が頼りになることはわかっています。でももしも怪我などしたら……」
「まあとにかく、入ってみるとしよう」

 クレンド様は、私の心配をそれ程聞かずに酒場に入っていった。
 仕方ないので、私もそれについて行く。クレンド様は慣れているのだろうか。それとも怖い者知らずなのだろうか。

「店主、少し邪魔をする」
「あ、ああ……いや、あなた達は」
「……おいおい、これはまた大そうなお客さんが来たじゃないか」
「本当だ。貴族か、それも子供だぜ」

 私達が店内に入ると、周囲の視線がこちらに集中した。
 身なりなどから、身分の予想はついたらしい。それにして、結構多くの人は萎縮している。
 それは当然のことだ。貴族に失礼なことをしたら、ただでは済まない。普通の人なら、絡んで来たりはしないだろう。

「気に食わねぇなぁ」
「まったくよ、貴族の坊ちゃん嬢ちゃんが何の用だ。まさかとは思うが、俺達の邪魔でもしに来たのかよぉ」

 しかし中には、そういった常識が通用しない人もいるようだ。
 そう言った人達は、クレンド様の前に出て来ている。
 酒の臭いがするので、恐らく酔っているのだろうか。そのこともあって、冷静な判断ができていないのかもしれない。

「邪魔をしに来たつもりなどはない。店主、この店で一番高い酒を買いたい」
「あ、いや、未成年の方には……」
「ここにいる方々に振る舞ってもらいたいのだ。俺はお代を出すというだけで飲むつもりなどはないさ」
「ま、まあ、そういうことなら……」

 クレンド様の言葉に、彼にからもうとしていたゴロツキ達は顔を見合わせた。
 この店で一番高い酒なんて、滅多に飲めるものではないだろう。そちらに興味が移ったのかもしれない。

「なんだ、話がわかるな旦那」
「気前のいい人だ。しかし一体、どうしてこんな所に?」
「ペルリナという女性について調べたいのだ。ほら、最近ヴェリオン伯爵家に嫁いだ女性だ」
「おお、あいつのことか」
「なるほどな、貴族の坊ちゃんが直々に素行調査か……」

 酔っぱらい達は、クレンド様に対してかなり友好的になってきた。
 彼の手際が良かったということだろうか。これなら無事に話を聞けそうだ。
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