溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗

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32.おかしな発言

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「なんということだ。お前まで、私を騙していたのか……」

 お父様は、拳を握り締めて表情を強張らせていた。
 本当に私のことを信じ切っていたということだろうか。それはなんというか、愚かなことだ。私なんて、お父様を恨む筆頭であるというのに。

「……お前など、私の娘ではない!」
「ええ、そう思ってもらっても構いませんよ。私も、あなたのことを父親だなんて思っていませんでしたから」
「何だと? この不届き者め!」

 お父様は、口汚く私のことを罵倒し始めた。
 ロメリアの時もそうだったが、彼には親子の情というものはないのだろう。
 あくまで自分を好いているかどうかでしか判断していない。その癖、自分が嫌われるような行いをしていると気付いていないのは、なんと滑稽なことだろうか。

「ヴェリオン伯爵家は、もう終わりです。バンガルさんを殺したことや圧力をかけたことは、既に周知の事実ですからね」
「そんなものは、この私の権力で揉み消してやる!」
「それは無理です。エヴォート侯爵家のクレンド様が、私の味方ですからね」
「な、何?」

 既に出回っている情報を覆すことなんてそもそもできるのかは微妙な所だ。
 しかし仮にそれができるとしても、そうはさせない。エヴォート侯爵家の権力で、お父様は叩き潰される。つまり、ヴェリオン伯爵家は終わりだ。

「お前……自分が何をしたのか、わかっているのか! 先祖が代々守ってきたこの伯爵家を没落させようとするのは、どういうことだ!」
「お言葉ですが、最初にヴェリオン伯爵家の名誉を貶めたのはお父様です。あなたの自分勝手な行動は許されるべきものではありません」
「道理も何も知らない子供が、偉そうな口を聞きよって! 綺麗事だけでは、まかり通らないのだ。貴族というものは!」
「お父様がやったことは、私利私欲のための殺人ではありませんか」

 お父様は、ヴェリオン伯爵家の権力を自分の欲望のために用いて、人を一人に手にかけた。
 私はそれを許すつもりはない。ヴェリオン伯爵家は、その報いを受けなければならないのだ。私達がこれ以上権力を持っている訳にはいかないのである。

「まったく、愚かな考えしか持たない女だ。お前もさっさと始末しておけばよかった」
「え?」
「……うん?」

 そこでお父様は、おかしなことを口にした。
 今彼は、「お前も」と言った。それは事前に誰かを始末していなければ、出てこない言葉だ。
 その対象がバンガルさんだという可能性もある。ただ彼と私を並べるだろうか。今の言葉には、もっと別の意図が隠されているような気がする。
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