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15.当然の反対

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「今回の件に答えがあるとするならばただ一つだ」

 ルベルス様とラガルス伯爵が帰った後、オーデン伯爵家では家族会議のようなものが開かれていた。それは私の婚約に関する話だ。
 お父様の話が終わり、最初に口火を切ったのはお兄様だった。お兄様はひどく怒った様子だ。その怒りが誰に向けたものかは明白である。

「そのような無礼な者達との婚約など受け入れる必要はない」
「イルギス、落ち着いて」
「父上、まさかこの婚約を受け入れるなどという戯言を述べるつもりではないだろうな?」
「……そんなことはないよ。もちろん僕も、憤っている。ただ、無闇に怒るだけでは何も解決しないというだけだ」

 落ち着いているお父様に対して、お兄様は鋭い視線を向けていた。
 現当主と次期当主として、二人は意見をぶつけ合うことがある。そういう時にはいつも二人は冷静であるはずなのだが、今回に関してはそうではない。二人とも少し興奮している。

「……イルギス、落ち着きなさい。この人がそんなことを考えていないことなんて、あなたが一番わかっているはずでしょう?」
「お父様も冷静になってください」

 そんな二人に声をかけたのは、お母様とお姉様だった。
 ただ、二人も冷静であるとは言い難い。私のために、皆怒ってくれているということだろう。

 それは私にとって、嬉しいことではある。
 しかし、この件で雰囲気が悪くなることは悲しい。いつもは皆、和気あいあいとしているというのに。

「……イルギス、すまない。どうやら僕も、冷静さを欠いていたようだ」
「いや、先に仕掛けたのは俺の方だ。父上、申し訳なかった。しかしながら、今回の婚約については改めて反対だ。エレティアを無礼な者達の元に嫁がせるなどあり得ない」
「先程も言った通り、それは私もわかっている。ただ、断るにしても上手く断らなければならない。敵対するのも厭わないと言いたい所だが、はっきりと言ってそれは得策ではない」

 お兄様とお父様は、再び意見をすり合わせ始めていた。
 お父様としては、穏便に今回の件を終わらせたいと考えているようだ。
 お兄様は少し不服そうにしているが、それは当然のことである。ラガルス伯爵家とわざわざ敵対する必要なんて、あるはずがない。

「丁重にお断りするとしよう。まあ、その辺りは私に任せてくれればいい。イルギス、君の気持ちはよくわかっているつもりだけれど、大人しくしていてくれ」
「……もちろんだ。俺も貴族同士の関係を無闇に悪くしようとは思っていない。ただ、俺と父上は家族だ。故に本心は伝えておきたいと思っている」
「それについて、私は嬉しく思っているよ」

 お兄様の言葉に、お父様は笑顔を浮かべていた。
 やはり二人は、なんだかんだ言って仲良しだ。現当主と後継者として、二人の関係は素敵だといえるのではないだろうか。
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