公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗

文字の大きさ
71 / 81

第56話 王族襲来

 私とレティは、お兄様とともに外で馬車を待っていた。
 サルティス・アルミシア様を出迎えるためである。

「あ、来ましたね……」
「うん……」

 レティの言葉に、私はゆっくりと頷く。
 少し遠くに、馬車が見える。いよいよ、サルティス様がやって来たのだ。

「ふう……」
「ルリア、大丈夫か?」
「あ、はい……」

 深呼吸をした私を、お兄様は心配してくれる。
 フォリシス家に来てから、私は色々な貴族と対峙してきた。その中でも、王族と会う時の緊張は一番だ。
 そのため、今もかなり緊張している。だが、お兄様の声で少しだけそれも薄れてきた。きっと、なんとかなるはずだ。

「あっ……」

 そんなことを考えている内に、馬車が着いていた。
 私達は、ゆっくりと頭を下げる。
 その直後、馬車の中から華やかな服を着た女性が下りてきた。

「皆様、ご機嫌よう。今日は、急な訪問で申し訳ありませんでした」

 出てきて早々、サルティス様はそのように謝罪してきた。
 一応、サルティス様も非常識な訪問であることは自覚しているようだ。
 それなのに、この訪問をしなければならなかったということは、余程重要な用件があるのだろう。

「いえ、問題ありません。本日は、ようこそおいでくださいました、サルティス・アルミシア様」
「リクルド様、お久し振りですね。お元気そうで、何よりです」
「ありがとうございます」

 サルティス様に対して、お兄様は笑顔で対応する。
 この笑顔は、お兄様が外部の人に対応するための笑顔だ。
 つまりは、作り笑いである。本当は、サルティス様に対して怒っているが、それを表に出さない。これも、仕方がないことなのだ。

「ルリア様もレティ様も、変わりはありませんか?」
「はい、サルティス様」
「ありがとうございます」

 そこで、サルティス様は私達にも話を振ってきた。
 私もレティも、少し声を震わせながら、それに答える。
 王族というのは、この国で最も高い地位に位置する人達だ。そのような人達には、無礼があってはいけない。
 そのため、慎重に対応する必要があるのだ。

「さて、立ち話もなんですから、中でお話ししましょう。本日は、私に用があるということでしたね?」
「はい。リクルド様に、是非聞いてもらいたい話があるのです」
「わかりました。では、お部屋の方へご案内いたします」

 お兄様の言葉で、サルティス様は早速中に入ることになった。
 それによって、私は少し安心する。私とレティの役目は、このお出迎えと帰る時のお見送りだ。それ以外は、お兄様が対応するらしいので、私達は部屋で待機しておけばいいらしい。
 こうして、私とレティはしばらく部屋で待機することになるのだった。



◇◇◇



 私とレティは、部屋で待機していた。
 現在、お兄様とサルティス様が話をしている。その間は、一応自由にすることができるのだ。

「いやあ、緊張しましたね……」
「うん……」

 流石のレティも、今回はかなり緊張したらしい。
 それも、当然だろう。王族というのは、この国のトップだ。その人達相手に、緊張しないという方が無理である。

「王族なんて、関わることがありませんから、やっぱり厳しいですよね。普通の貴族だったら、話は別なんですけど……」
「私は、未だに普通の貴族の人達でも緊張するけど……」

 レティは、他の貴族と話す時は、そこまで緊張しない。
 生まれながら、公爵家で育った彼女にとって、それは日常の一部でしかないらしいのだ。
 一方、私は未だにどの地位の貴族でも緊張してしまう。やはり、生れながらの公爵家は違うのだ。

「平民の人達は、私達と話す時、あのような気分なのでしょうね……」
「うん……そう考えると、私はプリネさんや他の平民の人達に、そこまでいい対応ができていなかったのかな……?」
「どうなんでしょうね……」

 そこで私が考えたのは、先日までのプリネさんや平民の人達への対応である。
 やはり、地位が上の人間に近づかれるのは嫌なのだろうか。
 自身が同じ体験をして、改めてそう思ってしまうのだ。

「最近は、こういうことがありませんでしたから、忘れていましたね……」
「うん……」

 こういうことは、もう少し考えなければならないのかもしれない。
 今回の出来事で、私はそう思うのだった。

 そういえば、貴族と話す時緊張する私でも、学園ではそれを感じたことがない。
 何故かわからないが、学園では皆平等であるように感じてしまうのだ。
 そのことに少し疑問を覚えつつ、私はレティとともに待機しているのだった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

勘違いで私を抱いていた執着王太子に真実を教えたら、泣いて土下座しました

唯崎りいち
恋愛
平民メイドのエマは、王太子フェリクスに見初められ、なぜか毎日呼び出される日々を送っていた。 「愛している」と囁かれ続けるけれど――それは完全な勘違い。 エマには、故郷に婚約を誓った恋人がいるのに。 逃げ出すために国外へ向かう旅に出るが、 そこで発覚したのは――王太子の盛大すぎる思い違いだった。 「君は俺を愛していなかったのか……?」 真実を知った瞬間、王太子は泣いて土下座。 そして、関係は一変する――。 執着系王太子×巻き込まれメイドの、勘違いから始まる逆転溺愛ラブコメ。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※