3 / 50
3.突然の離婚
しおりを挟む
ファナト様とクルメア様が帰った後、私はウルガド様に呼び出されていた。
恐らく、今日のことを聞くためだろう。できれば話したくないのだが、流石にそろそろ核心に迫られるだろうか。
「リメリア、僕はこれでも立派な貴族だと思っている。早くに亡くなった父の後を継ぎ、これまで努力してきたつもりだ」
「……ええ、そうですね」
ウルガド様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼は、結果的にヴォンドラ伯爵をかなり早く引き継ぐことになってしまった。先代が亡くなったのは二年前だが、今でもまだまだ伯爵として若すぎるくらいだ。
「しかしながら、評価されるのはいつも君ばかりだ」
「え?」
「今日もファナトから言われたよ。君はいい奥さんを持っていると。大切にした方がいい。奴はそんな風に、知ったようなことを口にしてきた」
ウルガド様は、少し荒々しい口調でそんなことを言ってきた。
それに私は、少し面食らってしまう。まさか話が、そんな方向に向くとは思っていなかったからである。
「ラルバルーズの子孫だかなんだか知らないが、それだけで君は随分と持てはやされているものだ。父上も、それに踊らされた一人だな。英雄の子孫という肩書きで、僕の婚約者を選んだ」
「な、何を言っているのですか?」
「もううんざりなんだよ! 君のお陰だとかなんだとか言われるのは!」
ウルガド様は、大きな声を出して私を睨みつけてきた。
なんだか、話がどんどんと変な方向に転がっている。今日の彼は、相当虫の居所が悪いらしい。
「僕は、ヴォンドラ伯爵だ! その功績とは全て僕に起因している。君のお陰ではない!」
「ウルガド様、別に私は……」
「君の存在が邪魔なんだ。僕には君なんて必要がない! この家から出て行け! 君とは離婚する!」
「何をっ……」
ウルガド様は、私に対して近くにあったものを投げつけてきた。
それはまるで、子供の癇癪だ。今までも不満が溜まっていたのだろうか。私が口を挟む余裕がない。
私は、そのままウルガド様の部屋から出て行かざるを得なかった。
今のウルガド様は、聞く耳を持たない。そう思ったからだ。
「……どうやら終わったようね?」
「え?」
出て行った私を待っていたのは、ウルガド様の母親――お義母様だった。
お義母様は、何か荷物を持っている。その荷物がなんであるか、私にはすぐに理解できた。
「あなたには、このヴォンドラ伯爵家から出て行ってもらうわ」
「お義母様まで、何を……」
「あなたは、この家に必要ないの。すぐに出て行って頂戴」
お義母様は、私に対して嫌らしい笑みを浮かべていた。
どうやら私がここから出て行くことは、決まっていることであるらしい。
それを理解した私は、項垂れるのだった。
恐らく、今日のことを聞くためだろう。できれば話したくないのだが、流石にそろそろ核心に迫られるだろうか。
「リメリア、僕はこれでも立派な貴族だと思っている。早くに亡くなった父の後を継ぎ、これまで努力してきたつもりだ」
「……ええ、そうですね」
ウルガド様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼は、結果的にヴォンドラ伯爵をかなり早く引き継ぐことになってしまった。先代が亡くなったのは二年前だが、今でもまだまだ伯爵として若すぎるくらいだ。
「しかしながら、評価されるのはいつも君ばかりだ」
「え?」
「今日もファナトから言われたよ。君はいい奥さんを持っていると。大切にした方がいい。奴はそんな風に、知ったようなことを口にしてきた」
ウルガド様は、少し荒々しい口調でそんなことを言ってきた。
それに私は、少し面食らってしまう。まさか話が、そんな方向に向くとは思っていなかったからである。
「ラルバルーズの子孫だかなんだか知らないが、それだけで君は随分と持てはやされているものだ。父上も、それに踊らされた一人だな。英雄の子孫という肩書きで、僕の婚約者を選んだ」
「な、何を言っているのですか?」
「もううんざりなんだよ! 君のお陰だとかなんだとか言われるのは!」
ウルガド様は、大きな声を出して私を睨みつけてきた。
なんだか、話がどんどんと変な方向に転がっている。今日の彼は、相当虫の居所が悪いらしい。
「僕は、ヴォンドラ伯爵だ! その功績とは全て僕に起因している。君のお陰ではない!」
「ウルガド様、別に私は……」
「君の存在が邪魔なんだ。僕には君なんて必要がない! この家から出て行け! 君とは離婚する!」
「何をっ……」
ウルガド様は、私に対して近くにあったものを投げつけてきた。
それはまるで、子供の癇癪だ。今までも不満が溜まっていたのだろうか。私が口を挟む余裕がない。
私は、そのままウルガド様の部屋から出て行かざるを得なかった。
今のウルガド様は、聞く耳を持たない。そう思ったからだ。
「……どうやら終わったようね?」
「え?」
出て行った私を待っていたのは、ウルガド様の母親――お義母様だった。
お義母様は、何か荷物を持っている。その荷物がなんであるか、私にはすぐに理解できた。
「あなたには、このヴォンドラ伯爵家から出て行ってもらうわ」
「お義母様まで、何を……」
「あなたは、この家に必要ないの。すぐに出て行って頂戴」
お義母様は、私に対して嫌らしい笑みを浮かべていた。
どうやら私がここから出て行くことは、決まっていることであるらしい。
それを理解した私は、項垂れるのだった。
553
あなたにおすすめの小説
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。
結婚だってそうだった。
良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。
夫の9番目の妻だと知るまでは――
「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」
嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。
※最後はさくっと終わっております。
※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。
そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。
しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
ありがとうございました。さようなら
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
【完結】記念日当日、婚約者に可愛くて病弱な義妹の方が大切だと告げられましたので
Rohdea
恋愛
昔から目つきが悪いことをコンプレックスにしている
伯爵令嬢のレティーシャ。
十回目のお見合いの失敗後、
ついに自分を受け入れてくれる相手、侯爵令息のジェロームと出逢って婚約。
これで幸せになれる───
……はずだった。
ジェロームとの出逢って三回目の記念日となる目前、“義妹”のステイシーが現れるまでは。
義妹が現れてからの彼の変貌振りにショックを受けて耐えられなくなったレティーシャは、
周囲の反対を押し切って婚約の解消を申し出るが、
ジェロームには拒否され挙句の果てにはバカにされてしまう。
周囲とジェロームを納得させるには、彼より上の男性を捕まえるしかない!
そう結論づけたレティーシャは、
公爵家の令息、エドゥアルトに目をつける。
……が、彼はなかなかの曲者で────……
※『結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが』
こちらの話に出て来るヒーローの友人? 親友? エドゥアルトにも春を……
というお声を受けて彼の恋物語(?)となります。
★関連作品★
『誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら』
エドゥアルトはこちらの話にも登場してます!
逃走スマイルベビー・ジョシュアくんの登場もこっちです!(※4/5追記)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる