旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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4.温かい家族

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 出戻りというのは、なんとも言えない気分になるものだ。
 懐かしいルヴァーリ伯爵家の屋敷に戻って来ても、私の心はちっとも明るくならない。
 だが両親は、私のことを快く迎え入れてくれた。事情をどれだけ知っているのかはわからないが、とりあえずここにいることを許してくれたのだ。

「しかし離婚とは、驚きだ」
「ええ、本当に……」

 そんな私の前には、今とある夫婦がいる。
 私の兄と義姉は、心配そうに見つめている。その生温かい視線からは、少し目をそらしたくなってしまう。

「リメリアちゃんみたいな良い子と離婚するなんて、ウルガド君はどうしてしまったのかしら?」
「まあ、元々気性が荒いとは思っていたが……どうやらろくでもない奴だったらしいな」
「ランペル様、そういう言い方は良くありませんよ。お気持ちはわかりますが……」

 ランペル・ルヴァーリとイファーナ、次期ルヴァーリ伯爵夫妻は、大のおしどり夫婦だ。
 ファナト様とクルメア様も大概ではあるが、この二人程の仲良しではないと思う。いや、人前以外なのではそうなのかもしれないが。

「大切な妹がこのような扱いを受けたのだ。怒らずにはいられない」
「私も気持ちはわかると言っているでしょう? リメリアちゃんは、私にとっても大切な義妹なのだから」
「……そうだったな。すまない、一人ではやり過ぎたか」

 基本的に、二人は妹思いである。
 お兄様はもちろん、お義姉様もだ。幼少期の頃から交流があったため、私も本当の姉のように思っている。
 そんな二人が心を痛めているということが、私にとっては辛かった。本当にどうしてこうなってしまったのか、私もまだ完全に理解できてはいない。

「ただリメリア、今回の件はお前が悪いという訳ではない。立派な妻だったと僕の耳にも入ってくるくらいだったからな」
「ええ、あなたはよくやったと思うわ。まあ、これからはゆっくりと休んで……」
「ああ、お前が良いなら、これからもずっとここにいればいいさ。僕もイファーナも、それでいいと思っている」

 二人の言葉は、嬉しいものだった。
 多分、心からの言葉だろう。それはその表情から伝わった。
 しかし、そんな二人のためにも、立ち止まりたくはない。私はまだ、ルヴァーリ伯爵家に貢献していきたいと思っている。

「お二人とも、ありがとうございます。しかし私は、また次の結婚に臨もうと思っています。それが私がルヴァーリ伯爵家のためにできることだと思いますから」
「……立派だな、お前は」
「……あまり無理しちゃ駄目よ?」

 私の言葉に、二人は少し呆れたような笑みを浮かべていた。
 それに私も、笑顔を返すのだった。
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