旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

文字の大きさ
18 / 50

18.彼らの輪の中に

しおりを挟む
「お義兄様の件については、私も苦労させられましたよ」

 バルハルド様の話した一段落した時、クルメア様が言葉を発した。
 彼女は、少し呆れたような笑みを浮かべている。それに対して、バルハルド様は少しだけ不愉快そうな表情をした。

「義妹殿に苦労をかけた記憶はないが」
「いえ、そんなことはありませんよ。義兄殿は、いつも不機嫌そうにしていましたからね。そのことに落ち込んだファナトを慰めるのは、私の役目でしたから」

 バルハルド様の言葉に、クルメア様は露骨な程に嫌味を含んだ答えを返していた。
 ただ、それはよく考えてみれば、ただの惚気だ。ファナト様が顔を赤くしていることに、クルメア様は気付いていないのだろうか。

 ただ、クルメア様の言葉がどうしてそんな感じなのか、その意図は理解できた。
 彼女は恐らく、重くなった空気を和らげてくれているのだ。決して、バルハルド様を煽る隙を見つけたから言葉を発したとか、そういう訳ではないと思う。

「ただ思い返してみると、あの頃のお義兄様は今よりも紳士的だったような気がしますね。少なくとも、そんな風に睨んでくる人ではなかった」
「それは順序が逆というものだ。あの頃の義妹殿が淑女であったから、俺もそのように振る舞っていたに過ぎない」
「おやおや、私は今でもしっかりとした淑女ですよ?」
「淑女にしては、荒々しいことばかり言っていると思うが、もしかして淑女というものへの捉え方が異なっているのだろうか?」
「女性である私の方が、淑女に対する造詣が深いのは当然のことです。恥じる必要はありませんよ、お義兄様」

 私が色々と考えている内に、二人は言い合いを始めていた。
 それにファナト様は、苦笑いを浮かべている。
 このまま止めなければ、二人はいつまでも言い合ってそうだ。その場合、どちらが先にばてるのだろうか。それは少し、気になる所だ。

「まあ何はともあれ、僕とお義兄様、それにクルメアは今はこうして仲良くやれているんです。色々とありましたが、丸く収まったといっていいでしょう」
「そのようですね。私も、お三方の輪に入れるようになりたいものです」
「……そういうことなら心配はいらない。あなたはもう入れている」
「お義兄様に同意するのは癪ではありますが、彼の言う通りです。リメリアさんは、既に私達の家族の一員ですからね」

 私の言葉に、バルハルド様とクルメア様は、すぐに言葉を返してくれた。
 その言葉が嬉しくて、私は笑顔を浮かべるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。 結婚だってそうだった。 良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。 夫の9番目の妻だと知るまでは―― 「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」 嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。 ※最後はさくっと終わっております。 ※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。

クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」 平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。 セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。 結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。 夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。 セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。 夫には愛人がいた。 愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される… 誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

処理中です...