旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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43.難解な問題

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 ラルバルースのファンクラブの定例会は、特に何事も起きずに進んでいた。
 まあそもそもの話、この定例会は集まって食事をしたりするだけの会なので、問題なんてものは起こりようがないのだが。

「さて、今日は皆のためにラルバルースに関するクイズを作ってきた。全問正解した者には景品もある故に、是非頑張ってもらいたい」

 食事が落ち着いた折に、エルヴァイン公爵がそのようなことを言い出した。
 そういったレクリエーションも、この定例会の醍醐味だ。
 私とバルハルド様の前にも、解答用紙なるものが配られている。どうやら十問くらいありそうだ。生粋のファンであるエルヴァイン公爵が作った問題ということは、かなり難しいのだろうか。

「まず第一問目は、ラルバルースが活躍したサウヴァルトルの戦いに関する問題だ」

 エルヴァイン公爵が口にしたのは、ある戦のことだった。
 その戦は、オーケイン王国の歴史を学んでいれば、わかるものだ。そういった問題であるならば、私にも答えられるチャンスがあるかもしれない。

「その戦いの際にラルバルースは、部下であるセイフォニーにとある食べ物を持ってこさせたそうだ。ゲン担ぎのためにその食べ物を食べた訳だな。その際にセイフォニーが苦労したという逸話は有名であるだろう。その食べ物は何で、セイフォニーは何で苦労したのかというのが、第一問目だ」

 そんなものは全然有名な話ではない。私は思わずそう口に出したくなっていた。
 やはり、ファンの人が作る問題は難しい。とても一般常識だけで答えられるようなものではない。その時点で私は回答を諦めることにした。

「……え? バルハルド様、わかるのですか?」
「うん? ああ、その話は耳にしたことがあるからな」

 私が諦めている横で、バルハルド様はペンを走らせていた。
 その動作に迷いはない。本当にこの問題の答えを知っていそうだ。
 それには驚きを隠せない。なんでこんな問題の答えがわかるのだろうか。

「ラルバルース氏は、王国でも有名な英雄だ。取引先と彼の話をすることは何度もあった。そのためか、ある程度の知識は身に着いている」
「なるほど、そういうものですか……大変、なのですね」
「……まあ、そうかもしれないな」

 バルハルド様は、自嘲気味な笑みを浮かべていた。
 その表情からは、それらの知識が不本意ながら身に着いたものだとわかる。
 彼も彼で、色々と苦労しているようだ。取引先故に無下にはできないだろうし、大変なのだろう。それがその表情から、伝わってきた。
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