44 / 50
44.聞き流したいこと
しおりを挟む
結果として、バルハルド様は十問中五問正解していた。
会場の人が全問正解とか、九問正解などをしていることを考えれば正答率は低い方だろうが、一般の人としては充分過ぎる正答率だといえる。
ちなみに私は、一問も正解することができなかった。問題がマニアック過ぎて、まったく太刀打ちできなかったというのが、正直な所だ。
「バルハルド様、すごいですね。まさか五問も正解するなんて」
「ああ、自分でも驚いている。我ながら、訳のわからない知識を身に着けたものだ」
バルハルド様は、苦笑いを浮かべていた。
このような問題に答えられるなんて、思っていなかったということだろう。その表情からは、困惑が読み取れる。
「バルハルド様は、記憶力が良い人なのですね。取引先の人とした雑談を覚えていて答えられるなんて、驚きです」
「まあ、ある意味において印象深い話だからな……そういう意味では、リメリア嬢は何も覚えていないのか? こういった場によく呼ばれるなら、話くらい聞くだろう」
「いえ、そういう話は聞き流さないとやってられなくて……」
エルヴァイン公爵の作った問題の中には、私が今まで聞いてきたようなことも含まれていたかもしれない。
ただ、私はそれらのことは基本的に右から左に抜けていくようになっている。色々な経験をした結果、そうなってしまったのだ。
「その……子孫としてはあまり聞きたくないような話もありますからね」
「む……」
「いやまあ、別に先祖ですから、そんなにショックを受けるようなことではないんですよ? でもなんというか、ちょっと嫌だなぁ、みたいに思うこともあって」
「なるほど、考えてみれば当然か。ラルバルースの逸話の中には、中々に濃いものもあったと記憶している」
ラルバルースは英雄であるが、別に完璧な人物という訳でもない。
色々と失敗もしているし、それに彼は戦士だ。非道なことだって行っている。女性関係なども、良いという訳でもない。
そういう話を聞くと、心に来ることがある。だからラルバルースのエピソードなどは、聞き流すようにしているのだ。
「まあ、覚えておいた方が良いことだってあるのでしょうけれど、もう子供の頃の癖みたいなもので……」
「忌々しいことだな」
「え?」
「ファンを名乗る者達にとって、あなたは英雄の子孫であるのだろう。そういったことを話したくなる存在なのかもしれない。だが、あなた自身を慮っているとは言い難い。俺はそれが気に食わない。あなたはリメリア嬢だ。ラルバルースの子孫というだけではない」
「バルハルド様……」
バルハルド様の言葉に、私は少し驚いた。
彼が少し冷たい態度だったのは、それが理由だったということだろうか。
ただそう思ってくれていることは、私にとっては嬉しいことである。バルハルド様は素晴らしい人であると、私は改めて認識するのだった。
会場の人が全問正解とか、九問正解などをしていることを考えれば正答率は低い方だろうが、一般の人としては充分過ぎる正答率だといえる。
ちなみに私は、一問も正解することができなかった。問題がマニアック過ぎて、まったく太刀打ちできなかったというのが、正直な所だ。
「バルハルド様、すごいですね。まさか五問も正解するなんて」
「ああ、自分でも驚いている。我ながら、訳のわからない知識を身に着けたものだ」
バルハルド様は、苦笑いを浮かべていた。
このような問題に答えられるなんて、思っていなかったということだろう。その表情からは、困惑が読み取れる。
「バルハルド様は、記憶力が良い人なのですね。取引先の人とした雑談を覚えていて答えられるなんて、驚きです」
「まあ、ある意味において印象深い話だからな……そういう意味では、リメリア嬢は何も覚えていないのか? こういった場によく呼ばれるなら、話くらい聞くだろう」
「いえ、そういう話は聞き流さないとやってられなくて……」
エルヴァイン公爵の作った問題の中には、私が今まで聞いてきたようなことも含まれていたかもしれない。
ただ、私はそれらのことは基本的に右から左に抜けていくようになっている。色々な経験をした結果、そうなってしまったのだ。
「その……子孫としてはあまり聞きたくないような話もありますからね」
「む……」
「いやまあ、別に先祖ですから、そんなにショックを受けるようなことではないんですよ? でもなんというか、ちょっと嫌だなぁ、みたいに思うこともあって」
「なるほど、考えてみれば当然か。ラルバルースの逸話の中には、中々に濃いものもあったと記憶している」
ラルバルースは英雄であるが、別に完璧な人物という訳でもない。
色々と失敗もしているし、それに彼は戦士だ。非道なことだって行っている。女性関係なども、良いという訳でもない。
そういう話を聞くと、心に来ることがある。だからラルバルースのエピソードなどは、聞き流すようにしているのだ。
「まあ、覚えておいた方が良いことだってあるのでしょうけれど、もう子供の頃の癖みたいなもので……」
「忌々しいことだな」
「え?」
「ファンを名乗る者達にとって、あなたは英雄の子孫であるのだろう。そういったことを話したくなる存在なのかもしれない。だが、あなた自身を慮っているとは言い難い。俺はそれが気に食わない。あなたはリメリア嬢だ。ラルバルースの子孫というだけではない」
「バルハルド様……」
バルハルド様の言葉に、私は少し驚いた。
彼が少し冷たい態度だったのは、それが理由だったということだろうか。
ただそう思ってくれていることは、私にとっては嬉しいことである。バルハルド様は素晴らしい人であると、私は改めて認識するのだった。
304
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした
三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。
書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。
ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。
屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』
ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく――
※他サイトにも掲載
※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。
結婚だってそうだった。
良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。
夫の9番目の妻だと知るまでは――
「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」
嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。
※最後はさくっと終わっております。
※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる