旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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44.聞き流したいこと

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 結果として、バルハルド様は十問中五問正解していた。
 会場の人が全問正解とか、九問正解などをしていることを考えれば正答率は低い方だろうが、一般の人としては充分過ぎる正答率だといえる。
 ちなみに私は、一問も正解することができなかった。問題がマニアック過ぎて、まったく太刀打ちできなかったというのが、正直な所だ。

「バルハルド様、すごいですね。まさか五問も正解するなんて」
「ああ、自分でも驚いている。我ながら、訳のわからない知識を身に着けたものだ」

 バルハルド様は、苦笑いを浮かべていた。
 このような問題に答えられるなんて、思っていなかったということだろう。その表情からは、困惑が読み取れる。

「バルハルド様は、記憶力が良い人なのですね。取引先の人とした雑談を覚えていて答えられるなんて、驚きです」
「まあ、ある意味において印象深い話だからな……そういう意味では、リメリア嬢は何も覚えていないのか? こういった場によく呼ばれるなら、話くらい聞くだろう」
「いえ、そういう話は聞き流さないとやってられなくて……」

 エルヴァイン公爵の作った問題の中には、私が今まで聞いてきたようなことも含まれていたかもしれない。
 ただ、私はそれらのことは基本的に右から左に抜けていくようになっている。色々な経験をした結果、そうなってしまったのだ。

「その……子孫としてはあまり聞きたくないような話もありますからね」
「む……」
「いやまあ、別に先祖ですから、そんなにショックを受けるようなことではないんですよ? でもなんというか、ちょっと嫌だなぁ、みたいに思うこともあって」
「なるほど、考えてみれば当然か。ラルバルースの逸話の中には、中々に濃いものもあったと記憶している」

 ラルバルースは英雄であるが、別に完璧な人物という訳でもない。
 色々と失敗もしているし、それに彼は戦士だ。非道なことだって行っている。女性関係なども、良いという訳でもない。
 そういう話を聞くと、心に来ることがある。だからラルバルースのエピソードなどは、聞き流すようにしているのだ。

「まあ、覚えておいた方が良いことだってあるのでしょうけれど、もう子供の頃の癖みたいなもので……」
「忌々しいことだな」
「え?」
「ファンを名乗る者達にとって、あなたは英雄の子孫であるのだろう。そういったことを話したくなる存在なのかもしれない。だが、あなた自身を慮っているとは言い難い。俺はそれが気に食わない。あなたはリメリア嬢だ。ラルバルースの子孫というだけではない」
「バルハルド様……」

 バルハルド様の言葉に、私は少し驚いた。
 彼が少し冷たい態度だったのは、それが理由だったということだろうか。
 ただそう思ってくれていることは、私にとっては嬉しいことである。バルハルド様は素晴らしい人であると、私は改めて認識するのだった。
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