使用人の私を虐めていた子爵家の人々は、私が公爵家の隠し子だと知って怖がっているようです。

木山楽斗

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 私は、エルード様と一緒にとある部屋の前まで来ていた。
 ここに、グルラド様の妻であり、私の義理の姉であるサリーハ様がいるらしい。

「母上、叔母上を連れてきました」
「あら? 入ってもらって」

 エルード様の言葉に、中から女性の声が聞こえてきた。
 その声は、グルラド様と同じように嬉しそうである。恐らく、歓迎してくれているのだろう。
 正直、私はそこまで緊張していない。なぜなら、この後に会う人に比べれば、とても気楽だからである。
 グルラド様が、優しい人だとわかったこともあるかもしれない。だから、先程に比べると落ち着いていられるのだ。

「失礼します」
「失礼します」

 エルード様の言葉の後、私達は部屋の中に入っていった。
 部屋の中には、一人の女性がいる。その人が、サリーハ様であるようだ。
 彼女の第一印象は、綺麗な人だということである。貴族らしく華やかな女性だが、見た所は優しそうな人だ。とりあえず、安心していいのではないだろうか。

「あなたが……アルシアさんね」
「はい、アルシアです」
「なるほど……確かに、グルラドやお義父様に似ているわね」
「そ、そうですか?」

 サリーハ様は、私の顔を見て少し笑っていた。
 私は、そんなに二人に似ているのだろうか。
 自分では、そういうことはよくわからない。だが、サリーハ様がそう言うのだから、そうなのだろう。

「私のことは、気軽にお姉ちゃんと呼んでもらって構わないわ」
「え?」
「は?」
「こんな年下の妹ができるなんて、なんだか私も若返ったみたいだわ」

 そこで、サリーハ様はどこかで聞いたことがあるようなことを言ってきた。
 私もエルード様も、かなり驚いている。まさか、この衝撃的な言葉を再び聞くことになるとは思っていなかったからだ。

「母上、何を言っているのですか?」
「え? この場を和ませようと思って……」
「父上とまったく同じことを言わないでください」
「え? あの人も同じことを考えていたの……?」

 エルード様の言葉に、サリーハ様は少し照れていた。流石に、夫と被ったのは恥ずかしかったのだろう。
 それにしても、これが被るというのはかなりすごいことである。どうやら、二人は似た者同士のお茶目な夫婦であるらしい。

 そんなサリーハ様を見ていると、私はかなりリラックスできていた。
 もしかして、グルラド様はこれも見越して、私をこのタイミングでサリーハ様と会わせたのかもしれない。
 次に会うスレイナ様のことを、私はかなり怖く思っている。その緊張を和らげるために、この陽気なサリーハ様に会わせてくれたのではないだろうか。
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