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24.未来へと(モブside)
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「なんでこんなことにっ!」
「まったく意味がわからない! 理不尽な限りだ!」
王城の一室にて、一組の男女が声を荒げていた。
それを第二王子であるイーヴェルは、静かに聞いていた。彼にとっても、この結果は望ましいものではなかったからだ。
「どうやら裏目に出てしまったようですね……」
「……イーヴェル、責任を感じる必要などはないぞ。もちろんこの結果は望ましいものではなかったが、決めたのは僕達全員の判断だ」
「まあ、貴族達が愚かだったというだけですからね」
リルルナを聖女とすることに対して、権力者達は反対しなかった。
ただ、それでもアドルヴと婚約するべきだという主張をしてきたのだ。
忙しくなることは確実であるリルルナに、王妃は荷が重い。その主張も退けられた。権力者達は、リルルナならそれも可能だと考えているようだ。
「とはいえ、実際の所私なら王妃と聖女の両方をこなせないという訳ではありませんからね。優秀なのが仇となりましたか」
「しかし、君に一点集中するというのは良いことであるとは言い難い」
「どうやら貴族達は、リルルナ嬢が王妃であるべきだと考えているようですね。最早そこには柔軟性がなくなっている」
三人の目論見は、失敗に終わってしまった。
アドルヴとラルリアの婚約、それを成立させるのは、今の状況では中々に難しいことである。
「……この際ですから、兄上にはラルリア嬢との婚約を諦めてもらうべきかもしれませんね」
「……何?」
「王妃の役目というものは、別に王妃でなければ果たせないという訳ではありません。リルルナ嬢には聖女の仕事に注力してもらい、ラルリア嬢には王妃に代わって役割を果たしてもらうという形はどうでしょうか? 彼女を王家に引き入れる。つまりは兄上以外と婚約させるのです。そうすれば、少なくとも傍にはいられます」
「なんだと?」
イーヴェルの言葉に、アドルヴの表情は変わった。
兄の言わんとしていること、それがイーヴェルにはわかっている。ラルリアに好感を抱いている自分が、己の欲望のために婚約を決めていると、アドルヴが思っているのだと。
「何も私が妻として迎えようと思っている訳ではありません。ヴァナキス辺りが適任でしょう」
「ラルリアの婚約相手が僕でないのが問題なんだ。それから、僕はリルルナと結ばれるなんてまっぴらごめんだ」
「私は、お姉様の相手についてはどうでも良いと思っています。王城でともに過ごせるなら相手がヴァナキスでも構いません。むしろ、これよりましなくらいです。ただ、私の相手がこれであるというのは不服です」
イーヴェルの案に対して、二人は反論してきた。
ただ、国を円滑に運営するためにはその方がイーヴェルは良いと思っている。結局の所割り切ってもらいたいというのが、彼の考えだ。
とはいえ、二人を説得するのは骨が折れる。イーヴェルはそう考えていた。
◇◇◇
「くしゅん!」
「……風邪か?」
王城で行われている会議のことは露知らず、ラルリアは屋敷にやって来たヴァナキス、エヴァンス、オリヴィアの相手を弟のルドールとともにしていた。
アドルヴとの婚約について、彼女は最早それ程気にしていない。色々と揉めてはいるが、最終的に結論を出すのが父と伯父であると、彼女は理解しているからだ。
「誰か噂でもしているのかも」
「……まあ、ラルリアの話題にはこと欠かないだろうからな」
「え?」
「うん? いや、まあほら、婚約の話とかあるだろう?」
「ああ……まあ、大丈夫じゃないかな?」
「余裕だな?」
「うん。どんな結論でも大丈夫だって思っているから」
ラルリアにとっては、どのような形でも納得することはできるものだった。
アドルヴと結婚することになったら王妃として頑張るし、そうならなくてもバレリア公爵家の一員として務める。そう考えていた。
「大人だな……誰かさんにも見習ってもらいたいものだ」
「誰かさんって?」
「いや、なんでもないさ。これからもラルリアは、そんな風に前向きでいてくれ」
「あ、うん。それはもちろん」
未来に対して、ラルリアは前向きであった。
王族も含めて、信頼できる親族達がいるから大丈夫だと、彼女はそう思っているのだ。
そうしてラルリアは、これからも生きていくだろう。未来が明るいものになると信じながら。
END
「まったく意味がわからない! 理不尽な限りだ!」
王城の一室にて、一組の男女が声を荒げていた。
それを第二王子であるイーヴェルは、静かに聞いていた。彼にとっても、この結果は望ましいものではなかったからだ。
「どうやら裏目に出てしまったようですね……」
「……イーヴェル、責任を感じる必要などはないぞ。もちろんこの結果は望ましいものではなかったが、決めたのは僕達全員の判断だ」
「まあ、貴族達が愚かだったというだけですからね」
リルルナを聖女とすることに対して、権力者達は反対しなかった。
ただ、それでもアドルヴと婚約するべきだという主張をしてきたのだ。
忙しくなることは確実であるリルルナに、王妃は荷が重い。その主張も退けられた。権力者達は、リルルナならそれも可能だと考えているようだ。
「とはいえ、実際の所私なら王妃と聖女の両方をこなせないという訳ではありませんからね。優秀なのが仇となりましたか」
「しかし、君に一点集中するというのは良いことであるとは言い難い」
「どうやら貴族達は、リルルナ嬢が王妃であるべきだと考えているようですね。最早そこには柔軟性がなくなっている」
三人の目論見は、失敗に終わってしまった。
アドルヴとラルリアの婚約、それを成立させるのは、今の状況では中々に難しいことである。
「……この際ですから、兄上にはラルリア嬢との婚約を諦めてもらうべきかもしれませんね」
「……何?」
「王妃の役目というものは、別に王妃でなければ果たせないという訳ではありません。リルルナ嬢には聖女の仕事に注力してもらい、ラルリア嬢には王妃に代わって役割を果たしてもらうという形はどうでしょうか? 彼女を王家に引き入れる。つまりは兄上以外と婚約させるのです。そうすれば、少なくとも傍にはいられます」
「なんだと?」
イーヴェルの言葉に、アドルヴの表情は変わった。
兄の言わんとしていること、それがイーヴェルにはわかっている。ラルリアに好感を抱いている自分が、己の欲望のために婚約を決めていると、アドルヴが思っているのだと。
「何も私が妻として迎えようと思っている訳ではありません。ヴァナキス辺りが適任でしょう」
「ラルリアの婚約相手が僕でないのが問題なんだ。それから、僕はリルルナと結ばれるなんてまっぴらごめんだ」
「私は、お姉様の相手についてはどうでも良いと思っています。王城でともに過ごせるなら相手がヴァナキスでも構いません。むしろ、これよりましなくらいです。ただ、私の相手がこれであるというのは不服です」
イーヴェルの案に対して、二人は反論してきた。
ただ、国を円滑に運営するためにはその方がイーヴェルは良いと思っている。結局の所割り切ってもらいたいというのが、彼の考えだ。
とはいえ、二人を説得するのは骨が折れる。イーヴェルはそう考えていた。
◇◇◇
「くしゅん!」
「……風邪か?」
王城で行われている会議のことは露知らず、ラルリアは屋敷にやって来たヴァナキス、エヴァンス、オリヴィアの相手を弟のルドールとともにしていた。
アドルヴとの婚約について、彼女は最早それ程気にしていない。色々と揉めてはいるが、最終的に結論を出すのが父と伯父であると、彼女は理解しているからだ。
「誰か噂でもしているのかも」
「……まあ、ラルリアの話題にはこと欠かないだろうからな」
「え?」
「うん? いや、まあほら、婚約の話とかあるだろう?」
「ああ……まあ、大丈夫じゃないかな?」
「余裕だな?」
「うん。どんな結論でも大丈夫だって思っているから」
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「大人だな……誰かさんにも見習ってもらいたいものだ」
「誰かさんって?」
「いや、なんでもないさ。これからもラルリアは、そんな風に前向きでいてくれ」
「あ、うん。それはもちろん」
未来に対して、ラルリアは前向きであった。
王族も含めて、信頼できる親族達がいるから大丈夫だと、彼女はそう思っているのだ。
そうしてラルリアは、これからも生きていくだろう。未来が明るいものになると信じながら。
END
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