私のために婚約破棄したと言われましても

木山楽斗

文字の大きさ
1 / 12

1.舞踏会での糾弾

しおりを挟む
「この泥棒猫!」
「きゃあ!」

 王家が主催する舞踏会は、王城にて定期的に開催されているものだ。
 その舞踏会において、私はとある令嬢から平手打ちされて尻もちをついていた。彼女はリリアナ嬢――ラナール伯爵家の令嬢だ。

 それは突然のことだった。舞踏会の会場で彼女が怒りの形相で近づいてきたと思ったら、私は既にぶたれていた。
 ガルタン男爵家の長女である私は、リリアナ嬢とは特に関わりなどはない。それなのにいきなりこんなことをされるなんて、正直訳がわからなかった。

「リリアナ嬢、落ち着いてください」
「な、何をやっているのですか?」

 周囲からも、困惑が伝わってきた。この舞踏会の会場にてこんなことをするなんて、明らかに普通ではない。リリアナ嬢は、冷静ではないのだろう。怒りに身を任せているといった感じだ。
 しかし彼女の怒りというものがなんなのか、それが私にはわからなかった。私は何か知らない間に、リリアナ嬢の機嫌を損ねるようなことをしていたのだろうか。

「リ、リリアナ嬢、どうしたのですか? 何故私に……」
「自分の胸に聞いてみればいいでしょう? それともあなたのような下賤な女には、自分がやったことの卑しさというものも理解できないのかしら?」
「な、何を……」

 リリアナ嬢は周囲からの制止も聞かず、私に詰め寄ってきた。
 理由を尋ねても、彼女は答えてくれない。怒りの原因がわからないため、私は何も言うことができなかった。下手に謝罪しても、彼女の気を荒立てるだけのような気がしてしまう。

「あなたはこれから自らの愚かな行いに対する報いを受けることになるのよ……あなたの家、ガルタン男爵家も私は許さない」
「……リリアナ嬢、そこまでにしてもらいましょうか?」
「誰よ……あっ!」

 怒るリリアナ嬢は、後ろを振り返って固まっていた。
 それは彼女の目の前に、このアーゼン王国の第三王子が立っているからだろう。
 その第三王子エリクス殿下は、普段は優しいその顔を少し強張らせている。今回の王家の舞踏会は彼が責任者となっているため、この騒ぎは見過ごせないということだろう。

「リリアナ嬢、あなたはここがどういった場で何をしているのか、わかっているのですか?」
「……ちっ! 覚えておきなさい」

 王子殿下の来訪には流石に参ったのか、リリアナ嬢は捨て台詞を吐いてからその場から去っていった。
 エリクス殿下は、その背中と私の方を交互に見る。その視線は私の方に止まり、彼はその手を差し伸べてくれた。

「ケイティア嬢、大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……」

 私がその手を取って立ち上がった後、エリクス殿下は場をまとめた。
 舞踏会はまだ始まったばかりだ。ここで中止という訳には、いかないということだろう。
 ただ私は、それに参加できそうにはない。周囲の視線からは、私はそれを悟っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。

【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜

珊瑚
恋愛
「ねぇセシル。私、好きな人が出来たの。」 「……え?」 幼い頃から何かにつけてセシリアを馬鹿にしていたモニカ。そんな彼女が一目惚れをしたようだ。 うっとりと相手について語るモニカ。 でもちょっと待って、それって私の旦那様じゃない……? ざまぁというか、微ざまぁくらいかもしれないです

突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました

恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。 メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。

生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
伯父である子爵の元で、ルシェーラは苦しい生活を送っていた。 父親が不明の子ということもあって、彼女は伯母やいとこの令嬢から虐げられて、生きてきたのだ。 ルシェーラの唯一の味方は、子爵令息であるロナードだけだった。彼は家族の非道に心を痛めており、ルシェーラのことを気遣っていた。 そんな彼が子爵家を継ぐまで、自身の生活は変わらない。ルシェーラはずっとそう思っていた。 しかしある時、彼女が亡き王弟の娘であることが判明する。王位継承戦において負けて命を落とした彼は、ルシェーラを忘れ形見として残していたのだ。 王家の方針が当時とは変わったこともあって、ルシェーラは王族の一員として認められることになった。 すると彼女の周りで変化が起こった。今まで自分を虐げていた伯父や伯母やいとこの令嬢が、態度を一変させたのである。 それはルシェーラにとって、到底許せることではなかった。彼女は王家に子爵家であった今までのことを告げて、然るべき罰を与えるのだった。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

縁あって国王陛下のお世話係になりました

風見ゆうみ
恋愛
ある日、王城に呼び出された私は婚約者であるローク殿下に婚約を破棄され、姉が嫁ぐことになっていた敗戦国シュテーダム王国の筆頭公爵家の嫡男の元へ私が嫁ぐようにと命令された。 しかも、王命だという。 嫁げば良いのでしょう、嫁げば。 公爵令嬢といっても家では冷遇されていた私、ラナリーは半ば投げやりな気持ちでルラン・ユリアス様の元に嫁ぐことになった。  ユリアス邸の人たちに大歓迎された私だったけれど、ルラン様はいつもしかめっ面で女性が苦手だと判明。 何とかコミュニケーションを取り、ルラン様と打ち解けていくと、義理の父からもうすぐ6歳になる国王陛下の臨時のお世話係を任されてしまい―― ※史実とは異なる異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~

和泉鷹央
恋愛
 忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。  彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。  本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。    この頃からだ。  姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。  あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。  それまではとても物わかりのよい子だったのに。  半年後――。  オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。  サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。  オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……  最後はハッピーエンドです。  別の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...