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2.わからない原因
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「とりあえず紅茶をどうぞ。心を落ち着けてくれますよ」
「す、すみません……」
「いえ、お気になさらず……」
舞踏会の会場から客室に通された私の目の前には、エリクス殿下がいる。
彼は笑顔を浮かべているが、幾分か私を見定めているようにも見える。先程の騒ぎの原因がなんだったのか、彼も考えているということだろうか。
「あの、先程のリリアナ嬢とのことですが……」
「無理に話していただかなくても結構ですよ? まずは落ち着くことが先決です」
「いえその、何もわからないのです」
「……そうですか」
エリクス殿下は、私の言葉に対してなんとも端的な返事を返してきた。
私の様子から薄々わかっていたということだろうか。彼はとても冷静であった。
「一度深呼吸することをおすすめします。それから少し考えてみましょう」
「……わかりました」
とりあえず私は、言われた通り深呼吸してみた。
それから紅茶にも口をつける。それで幾分か心は落ち着いた。エリクス殿下としては、この状態で改めて考えて欲しいということだろうか。
ただそれでも、思い浮かびはしなかった。リリアナ嬢の行動、その要因は一体なんだったというのだろうか。
「やっぱりわかりません。リリアナ嬢とは今まで、ほとんど関わってきませんでした。個人としても家としてもです……ああでも、そういえば彼女は泥棒猫などと言っていました」
「泥棒猫、ですか……それは気になる所ですね」
落ち着いたからなのか、私はリリアナ嬢の言葉を思い出していた。
泥棒猫、彼女は確かにそう言っていたはずだ。その言葉から考えると、あれは交際関係などの恨みであるように思える。
「リリアナ嬢は、先月婚約されています。相手はドルファン伯爵家の嫡子チャルド……ケイティア嬢、彼と何かありますか?」
「いいえ、そちらとも関わりはありません。リリアナ嬢と同程度です。挨拶を交わしたくらいはありますが……」
「しかしそれなら、妙なものですね。リリアナ嬢の言動とは食い違う……」
「本当なんです」
「ケイティア嬢が嘘をついているとは思っていませんよ。リリアナ嬢の方に、何か認識の違いがあるのかもしれませんね……」
エリクス殿下は、私の頬を見ていた。
そこには現在、ガーゼが張られている。リリアナ嬢がぶった場所だ。
これが勘違いだったというならば、私にとってはとんだ災難である。エリクス殿下もそう思って、苦い顔をしているのだろう。
「……ともあれ、リリアナ嬢のことを放っておく訳にはいきませんね。彼女は何やら物騒なことを言っていましたね?」
「ええ、私だけではなくガルタン男爵家にも手を出すとか……」
「王家としては、貴族同士の争いは望ましくありません。ましてやその原因が、個人の恨みなど、到底許容できることではありませんね。何かあったら、遠慮せずに僕を頼ってください。王家はガルタン男爵家をお守りしますよ」
エリクス殿下の言葉は、とても心強いものだった。
ラナール伯爵家の権力があれば、ガルタン男爵家などという弱い貴族は潰されかねない。王家が味方してくれるというなら、とりあえず安心することはできる。
「す、すみません……」
「いえ、お気になさらず……」
舞踏会の会場から客室に通された私の目の前には、エリクス殿下がいる。
彼は笑顔を浮かべているが、幾分か私を見定めているようにも見える。先程の騒ぎの原因がなんだったのか、彼も考えているということだろうか。
「あの、先程のリリアナ嬢とのことですが……」
「無理に話していただかなくても結構ですよ? まずは落ち着くことが先決です」
「いえその、何もわからないのです」
「……そうですか」
エリクス殿下は、私の言葉に対してなんとも端的な返事を返してきた。
私の様子から薄々わかっていたということだろうか。彼はとても冷静であった。
「一度深呼吸することをおすすめします。それから少し考えてみましょう」
「……わかりました」
とりあえず私は、言われた通り深呼吸してみた。
それから紅茶にも口をつける。それで幾分か心は落ち着いた。エリクス殿下としては、この状態で改めて考えて欲しいということだろうか。
ただそれでも、思い浮かびはしなかった。リリアナ嬢の行動、その要因は一体なんだったというのだろうか。
「やっぱりわかりません。リリアナ嬢とは今まで、ほとんど関わってきませんでした。個人としても家としてもです……ああでも、そういえば彼女は泥棒猫などと言っていました」
「泥棒猫、ですか……それは気になる所ですね」
落ち着いたからなのか、私はリリアナ嬢の言葉を思い出していた。
泥棒猫、彼女は確かにそう言っていたはずだ。その言葉から考えると、あれは交際関係などの恨みであるように思える。
「リリアナ嬢は、先月婚約されています。相手はドルファン伯爵家の嫡子チャルド……ケイティア嬢、彼と何かありますか?」
「いいえ、そちらとも関わりはありません。リリアナ嬢と同程度です。挨拶を交わしたくらいはありますが……」
「しかしそれなら、妙なものですね。リリアナ嬢の言動とは食い違う……」
「本当なんです」
「ケイティア嬢が嘘をついているとは思っていませんよ。リリアナ嬢の方に、何か認識の違いがあるのかもしれませんね……」
エリクス殿下は、私の頬を見ていた。
そこには現在、ガーゼが張られている。リリアナ嬢がぶった場所だ。
これが勘違いだったというならば、私にとってはとんだ災難である。エリクス殿下もそう思って、苦い顔をしているのだろう。
「……ともあれ、リリアナ嬢のことを放っておく訳にはいきませんね。彼女は何やら物騒なことを言っていましたね?」
「ええ、私だけではなくガルタン男爵家にも手を出すとか……」
「王家としては、貴族同士の争いは望ましくありません。ましてやその原因が、個人の恨みなど、到底許容できることではありませんね。何かあったら、遠慮せずに僕を頼ってください。王家はガルタン男爵家をお守りしますよ」
エリクス殿下の言葉は、とても心強いものだった。
ラナール伯爵家の権力があれば、ガルタン男爵家などという弱い貴族は潰されかねない。王家が味方してくれるというなら、とりあえず安心することはできる。
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