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9.もたらされた報告
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チャルド様の所在は、エリクス殿下が把握している。念のために彼には、常に監視をつけているそうだ。
とはいえ、それらは最低限のものである。仮にチャルド様が何者かに襲われたりしたら、それを助ける術はないそうだ。
「チャルド伯爵令息は、ドルファン伯爵家にも特に何も伝えずに最低限の従者とともにガルタン男爵家に来ていたはずです。その状況で仮に襲撃されたとしたら……ただでは済みません」
「……私の勘が当たっていないといいですけれど」
「とりあえずまた騎士団に動いてもらっています。到着すれば、まず問題はないでしょう。問題はそれよりも前に、リリアナ嬢が仕掛けている場合です」
エリクス殿下は、その表情を強張らせていた。当然のことながら、チャルド様のことを心配しているのだろう。
それは私も同じだ。彼にはいい印象など抱いてはいないが、それでも賊の襲撃の犠牲になって欲しいなどとは思わない。なんとか騎士団が間に合うと良いのだが。
「現状を考えると、その可能性が高いというのがもどかしい所です。こちらへの襲撃とわざわざずらす必要はないでしょうからね……」
「……私達は、待っていることしかできないのですよね」
「ええ、出向いた所でできることはありませんからね。そもそもケイティア嬢は、まだ安全な状態ではありません。とにかくリリアナ嬢を見つけなければ……」
私やチャルド様を守ると同時に、騎士団はリリアナ嬢の探索も行っている。それはどちらかというと、ラナール伯爵家が主体となって行っていることらしい。
当然のことながら、子女が行方不明などという状況は許容できないものだろう。ラナール伯爵家は、騎士団以外の人員も割いて探索を行っているはずだ。
「見つかるのは恐らく、時間の問題ですよね? いくらリリアナ嬢が逃げているといっても、伯爵家の捜索網から逃れられるとは思えません」
「そうですね。それについては難しいことではないはずです。故にこの問題は解決できるものだと、僕は踏んでいました。チャルド伯爵令息のことに気が回らなかったのは、僕の落ち度です……」
「エリクス殿下、そのようなことは……」
「……すみません。少し取り乱してしまいました」
責任感の強いエリクス殿下は、今回の一件を被害を出さずに終わらせたかったようである。
ただそれは、中々に難しいことであっただろう。リリアナ嬢の狂気の全てを予測するなんて、無理な話だ。そもそもまだ、私の予想が当たっているとも限らない訳だし。
「……失礼します」
「入ってください……何か、状況がわかりましたか?」
「ええ、報告がありました」
色々と考えていると、私達が待機している客室に一人の騎士がやって来た。
彼はなんとも、神妙な顔をしている。それがどのような意味を持つのかはわからない。ただ私は、嫌な予感がしていた。
「チャルド伯爵令息が襲われました……」
「そうですか……」
騎士の言葉に、エリクス殿下はゆっくりとため息をついた。
私の予感は、当たってしまっていたようだ。しかしその可能性のもう少し早く思い至っていたら、結果は違っただろう。そのことについて、私は少し後悔するのだった。
とはいえ、それらは最低限のものである。仮にチャルド様が何者かに襲われたりしたら、それを助ける術はないそうだ。
「チャルド伯爵令息は、ドルファン伯爵家にも特に何も伝えずに最低限の従者とともにガルタン男爵家に来ていたはずです。その状況で仮に襲撃されたとしたら……ただでは済みません」
「……私の勘が当たっていないといいですけれど」
「とりあえずまた騎士団に動いてもらっています。到着すれば、まず問題はないでしょう。問題はそれよりも前に、リリアナ嬢が仕掛けている場合です」
エリクス殿下は、その表情を強張らせていた。当然のことながら、チャルド様のことを心配しているのだろう。
それは私も同じだ。彼にはいい印象など抱いてはいないが、それでも賊の襲撃の犠牲になって欲しいなどとは思わない。なんとか騎士団が間に合うと良いのだが。
「現状を考えると、その可能性が高いというのがもどかしい所です。こちらへの襲撃とわざわざずらす必要はないでしょうからね……」
「……私達は、待っていることしかできないのですよね」
「ええ、出向いた所でできることはありませんからね。そもそもケイティア嬢は、まだ安全な状態ではありません。とにかくリリアナ嬢を見つけなければ……」
私やチャルド様を守ると同時に、騎士団はリリアナ嬢の探索も行っている。それはどちらかというと、ラナール伯爵家が主体となって行っていることらしい。
当然のことながら、子女が行方不明などという状況は許容できないものだろう。ラナール伯爵家は、騎士団以外の人員も割いて探索を行っているはずだ。
「見つかるのは恐らく、時間の問題ですよね? いくらリリアナ嬢が逃げているといっても、伯爵家の捜索網から逃れられるとは思えません」
「そうですね。それについては難しいことではないはずです。故にこの問題は解決できるものだと、僕は踏んでいました。チャルド伯爵令息のことに気が回らなかったのは、僕の落ち度です……」
「エリクス殿下、そのようなことは……」
「……すみません。少し取り乱してしまいました」
責任感の強いエリクス殿下は、今回の一件を被害を出さずに終わらせたかったようである。
ただそれは、中々に難しいことであっただろう。リリアナ嬢の狂気の全てを予測するなんて、無理な話だ。そもそもまだ、私の予想が当たっているとも限らない訳だし。
「……失礼します」
「入ってください……何か、状況がわかりましたか?」
「ええ、報告がありました」
色々と考えていると、私達が待機している客室に一人の騎士がやって来た。
彼はなんとも、神妙な顔をしている。それがどのような意味を持つのかはわからない。ただ私は、嫌な予感がしていた。
「チャルド伯爵令息が襲われました……」
「そうですか……」
騎士の言葉に、エリクス殿下はゆっくりとため息をついた。
私の予感は、当たってしまっていたようだ。しかしその可能性のもう少し早く思い至っていたら、結果は違っただろう。そのことについて、私は少し後悔するのだった。
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