怠惰な聖女の代わりに業務を担っていた私は、たまの気まぐれで働いた聖女の失敗を押し付けられて追放されました。

木山楽斗

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 私は、レパイア王国に張られた結界からカーテナ様の命を感じた。
 彼女は、命を燃やしてこの結界を張ったのだ。いや、張らされたのかもしれない。
 今回の失敗で、彼女が結界を張れなくなったことは理解されただろう。その責任を取らされたとしてもおかしくはない。

「その禁忌の魔法によって張られた結界は、通常よりも強固なのですか?」
「ええ、私もよく知りませんが、強力になるらしいです」
「そうですか……」

 命を使った結界は、とても強力なものであると聞いている。
 実際に強い力を感じるので、それは間違いないだろう。

「でも、解けない訳ではありません。根本は、前の結界と同じですから、時間と術師がいれば、解けるはずです」
「なるほど……具体的に、どれくらいかかるかわかりますか?」
「……二日はかかりますかね」

 リルガー様の質問に、私はそのように結論を出した。
 恐らく、この結界を解くには二日程必要である。
 二日という時間は、今の状況でいえばとても長い。そのため、リルガー様からもあまりいい反応は返って来ないだろう。

「兄上、聞いていましたか?」
『ええ、聞いていますよ』
「あ、ラルーグ様」

 そこで、リルガー様はラルーグ様に通信した。
 どうやら、本部に繋いでいたようである。

『イルアナさん、この結界を二日で解くことができると言いましたね?』
「ええ、そうですけど……」
『一日でやってください』
「え?」

 ラルーグ様は、驚くべきことを言ってきた。
 二日かかるはずの作業を一日でやれ。そんな言葉は、受け入れられるはずはない。

「無理です。流石に一日ではできません」
『やってもらわなければ困るのです。ここは、この戦いの正念場。相手に立て直す時間を与える訳にはいかないのです』
「でも……」
『もちろん、こちらも協力は惜しみません。エルグレンド王国の強力な術師も協力します。ですから、なんとかしてください』

 ラルーグ様は、無茶な願いをしてきた。
 だが、もしかしたらなんとかなるかもしれない。
 私は、私以外の術師が普通の術師であることを想定していた。だが、強力な術師が助力してくれるなら、その仮定は覆るのだ。

「……わかりました。できる限りのことはやってみます。でも、どうしようもないかもしれませんよ?」
『ええ、お願いします』

 ラルーグ様は、特に声色を変えずにそう言ってきた。
 あの人のことなので、失敗した時は何か考えているのだろう。だから、私はそこまで心配する必要はないのかもしれない。
 もっとも、失敗すると厄介なことになるのは確かなのだろう。そのため、私は急いで結界を解くしかないのだ。
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