23 / 43
23
しおりを挟む
私は、レパイア王国に張られた結界からカーテナ様の命を感じた。
彼女は、命を燃やしてこの結界を張ったのだ。いや、張らされたのかもしれない。
今回の失敗で、彼女が結界を張れなくなったことは理解されただろう。その責任を取らされたとしてもおかしくはない。
「その禁忌の魔法によって張られた結界は、通常よりも強固なのですか?」
「ええ、私もよく知りませんが、強力になるらしいです」
「そうですか……」
命を使った結界は、とても強力なものであると聞いている。
実際に強い力を感じるので、それは間違いないだろう。
「でも、解けない訳ではありません。根本は、前の結界と同じですから、時間と術師がいれば、解けるはずです」
「なるほど……具体的に、どれくらいかかるかわかりますか?」
「……二日はかかりますかね」
リルガー様の質問に、私はそのように結論を出した。
恐らく、この結界を解くには二日程必要である。
二日という時間は、今の状況でいえばとても長い。そのため、リルガー様からもあまりいい反応は返って来ないだろう。
「兄上、聞いていましたか?」
『ええ、聞いていますよ』
「あ、ラルーグ様」
そこで、リルガー様はラルーグ様に通信した。
どうやら、本部に繋いでいたようである。
『イルアナさん、この結界を二日で解くことができると言いましたね?』
「ええ、そうですけど……」
『一日でやってください』
「え?」
ラルーグ様は、驚くべきことを言ってきた。
二日かかるはずの作業を一日でやれ。そんな言葉は、受け入れられるはずはない。
「無理です。流石に一日ではできません」
『やってもらわなければ困るのです。ここは、この戦いの正念場。相手に立て直す時間を与える訳にはいかないのです』
「でも……」
『もちろん、こちらも協力は惜しみません。エルグレンド王国の強力な術師も協力します。ですから、なんとかしてください』
ラルーグ様は、無茶な願いをしてきた。
だが、もしかしたらなんとかなるかもしれない。
私は、私以外の術師が普通の術師であることを想定していた。だが、強力な術師が助力してくれるなら、その仮定は覆るのだ。
「……わかりました。できる限りのことはやってみます。でも、どうしようもないかもしれませんよ?」
『ええ、お願いします』
ラルーグ様は、特に声色を変えずにそう言ってきた。
あの人のことなので、失敗した時は何か考えているのだろう。だから、私はそこまで心配する必要はないのかもしれない。
もっとも、失敗すると厄介なことになるのは確かなのだろう。そのため、私は急いで結界を解くしかないのだ。
彼女は、命を燃やしてこの結界を張ったのだ。いや、張らされたのかもしれない。
今回の失敗で、彼女が結界を張れなくなったことは理解されただろう。その責任を取らされたとしてもおかしくはない。
「その禁忌の魔法によって張られた結界は、通常よりも強固なのですか?」
「ええ、私もよく知りませんが、強力になるらしいです」
「そうですか……」
命を使った結界は、とても強力なものであると聞いている。
実際に強い力を感じるので、それは間違いないだろう。
「でも、解けない訳ではありません。根本は、前の結界と同じですから、時間と術師がいれば、解けるはずです」
「なるほど……具体的に、どれくらいかかるかわかりますか?」
「……二日はかかりますかね」
リルガー様の質問に、私はそのように結論を出した。
恐らく、この結界を解くには二日程必要である。
二日という時間は、今の状況でいえばとても長い。そのため、リルガー様からもあまりいい反応は返って来ないだろう。
「兄上、聞いていましたか?」
『ええ、聞いていますよ』
「あ、ラルーグ様」
そこで、リルガー様はラルーグ様に通信した。
どうやら、本部に繋いでいたようである。
『イルアナさん、この結界を二日で解くことができると言いましたね?』
「ええ、そうですけど……」
『一日でやってください』
「え?」
ラルーグ様は、驚くべきことを言ってきた。
二日かかるはずの作業を一日でやれ。そんな言葉は、受け入れられるはずはない。
「無理です。流石に一日ではできません」
『やってもらわなければ困るのです。ここは、この戦いの正念場。相手に立て直す時間を与える訳にはいかないのです』
「でも……」
『もちろん、こちらも協力は惜しみません。エルグレンド王国の強力な術師も協力します。ですから、なんとかしてください』
ラルーグ様は、無茶な願いをしてきた。
だが、もしかしたらなんとかなるかもしれない。
私は、私以外の術師が普通の術師であることを想定していた。だが、強力な術師が助力してくれるなら、その仮定は覆るのだ。
「……わかりました。できる限りのことはやってみます。でも、どうしようもないかもしれませんよ?」
『ええ、お願いします』
ラルーグ様は、特に声色を変えずにそう言ってきた。
あの人のことなので、失敗した時は何か考えているのだろう。だから、私はそこまで心配する必要はないのかもしれない。
もっとも、失敗すると厄介なことになるのは確かなのだろう。そのため、私は急いで結界を解くしかないのだ。
7
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜
赤紫
恋愛
私、リリアナは前世で介護士として過労死した後、異世界で最強の癒しの力を持つ聖女に転生しました。でも完璧すぎる治療魔法を「異常」と恐れられ、婚約者の王太子から「君の力は危険だ」と婚約破棄されて魔獣の森に追放されてしまいます。
絶望の中で瀕死の隣国王子を救ったところ、「君は最高だ!」と初めて私の力を称賛してくれました。新天地では「真の聖女」と呼ばれ、前世の介護経験も活かして疫病を根絶!魔獣との共存も実現して、国民の皆さんから「ありがとう!」の声をたくさんいただきました。
そんな時、私を捨てた元の国で災いが起こり、「戻ってきて」と懇願されたけれど——「私を捨てた国には用はありません」。
今度こそ私は、私を理解してくれる人たちと本当の幸せを掴みます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる