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19.思い出の中では

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「しかし、姉さんがランドラさんに婚約破棄されたと聞いた時は驚いたよ」
「ええ、それはそうよね……」

 私は、ソルダスととともに中庭でお茶をしていた。
 お父様とお母様は二人で話している。恐らく、私達には聞かせられない積もる話があるのだろう。
 という訳で、私達は姉と弟で話しているという訳だ。当然のことながら、積もる話は私達の間にもある。

「ソルダスは、ランドラ様とそれなりに仲が良かったわよね?」
「まあ、そうだね。僕には兄がいないし、ランドラさんにはそもそも兄弟がいないから、お互いに兄と弟みたいに思っていたのかもしれないね」
「なんだか、遠い昔みたいに言うわね?」
「まあ、実際に遠い昔の話のように思えるからね。小さな頃は一緒に遊んだりしたけど、いつからかそういうことはなくなったし……」
「まあ、お互いに大人になっていくものね。王都の学園にも行く訳だし……」

 お父様とアルガール侯爵が親友であったため、私もソルダスもランドラ様とはそれなりに長い付き合いがあった。
 男の子同士であったためか、ソルダスはランドラ様によく懐いていたような気がする。ランドラ様も、ソルダスには良くしてくれていたし、良好な関係を築けていたといえるだろう。

「それが、どうしてあんなことになってしまったのか……」
「……事情は聞いているけれど、平民の農家の女性に恋をしたんだよね?」
「ええ、そうよ。まあ、それ自体は百歩譲っていいとしても、彼はそれを軽く思いすぎているのよ。そうするなら、もっと覚悟を決めないといけないのに」
「まあ、平民を妻に迎えるなら、半端な気持ちでは駄目だよね……」
「それで、実際に今は結構まずい状況みたいなのよね。葬儀の時にその女性を連れて来たから、親族や他の貴族からの印象が悪くなっていて……」
「それはまずいことをしたよね……」

 ランドラ様は、現在あまりいい立場にいない。例の一件によって、周りの貴族から反感を買ってしまったからである。
 本人がそれを理解しているかどうかは、定かではない。だが、きっとこれからランドラ様は苦しい生活を送ることになるだろう。

「……かつての友人がそんな風になっているなんて悲しいけれど、姉さんがひどい扱いを受けたことも事実だから怒りも覚えている。ちょっと複雑な気分だね」
「ソルダス……」

 ソルダスは、複雑な表情をしていた。
 関わらなくなったことによって、彼にとってランドラ様は幼い日のままなのだろう。
 そう考えると、少々私も悲しくなってくる。少なくとも、幼少の頃は私達の関係も良好であったと思い出したからだ。
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