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21.聞いておきたいこと

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「ふう……こうやってあなたとお茶をするのは、随分と久し振りね」
「そうですね……お母様とは、年に数回しか会うことができませんから」
「そうね……」

 ソルダスがお父様に呼び出され、お母様が中庭に来たため、私のお茶の相手は弟から母となった。
 お母様と会うのも、随分と久し振りだ。私が学校に通っていた頃は、ほぼ毎日のような顔を合わせられたが、卒業してからはある一定の期間しか会えなくなった。それは少し悲しいことである。

「国に頼まれたことではあるけれど、そろそろ潮時なのかもしれないわね……」
「ああ、お父様も言っていました。そろそろ国からお母様を返してもらう時だと」
「そんなことを言っていたのね。まあ、さっきはその辺りの話もしていたけれど、もう少し事務的な感じで言ってきたのに」
「本人の前でそういう表現をするのは、恥ずかしかったのでしょうね」
「そういう所も、昔から変わっていないのね」

 お母様は、私に笑顔でそう言ってきた。
 なんだかんだ言いながら、二人はとても仲の良い夫婦であるように思える。いい機会なので、その辺りについて聞いてみてもいいかもしれない。

「お母様、少しお聞きしたいことがあるのですが、構いませんか?」
「聞きたいこと? 何かしら?」
「色々とありましたが、私もそろそろ本当に嫁ぐ時が来ました。ですから、伺っておきたいのです。その辺りの心構えなどを」
「心構え……」

 私の言葉に、お母様は表情を変えた。
 なんというか、少し困ったような表情をしている。この質問は、お母様にとってすぐに答えられるようなものではないらしい。

「私も嫁ぐ時は色々と考えていたとは思うのだけれど、色々とあったからその辺りのことはすっかり曖昧になってしまったというか……」
「それは、教師になったからですか?」
「ええ、それによって、私はオンラルト侯爵夫人としての役割を放棄してしまったから、あなたにどうこう言える立場ではないのよね。私が言えるのは理想論のような気がしてしまうわ。実際には、教師としての期間はそれ程長い訳ではないのだけれどね……」

 お母様は、その高い能力を評価されて、王国に引き抜かれた人材だ。
 もちろん、それは誇れることである。オンラルト侯爵家にとっても利益はあるため、それはまったく駄目なことではない。
 だが、真面目なお母様は侯爵家を離れていたことに罪悪感のようなものを覚えているのだろう。いや、単純にお母様は王都で教鞭を振るうよりも、お父様のことを支えたかったということなのかもしれない。
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