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11.太陽のような存在
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お父様の言い付けを守って、私は今日もベッドの上で過ごしていた。
事実として、頭はまだ少し痛い。お医者様の話では、特に大きな問題はないらしいので大事にはならないと思うが、安静にしておくのが身のためだろう。
そんな私にお母様は今日も付いてくれている。ただ、お父様が来る時はやはり部屋から出て行き、会わないようにしていた。
「お母様、少し聞いてもいいですか?」
「あら? どうかしたの?」
「えっと……大きくなったら、私は魔法学園に通うんですよね?」
「え? ええ、そうよ」
そこで私は、お母様に少し聞いてみることにした。
魔法学園、それは二人にとって重要な場所であるだろう。この世界が基本的にゲームの世界と同じなら、そのはずだ。
だから、それを聞いてみようと思った。お母様に、魔法学園のことを。
「どんな所なんですか? 魔法学園って」
「どんな所……まあ、基本的には勉強をする所ね」
「……勉強は、お屋敷でもできますよね? 私も勉強していますし」
「それは……そうね。確かにその通りだわ」
私の言葉に、お母様はゆっくりと頷いた。
その後、お母様は考えるような仕草を見せる。魔法学園をどう説明するべきか、考えてくれているのだろう。
その様子は、あまり楽しそうではない。ということは、お母様にとって魔法学園は楽しい場所ではなかったということなのだろう。
「勉強という言い方は、正しくなかったのかもしれないわね。多分、あそこは学ぶための場所と言った方がいいかしら?」
「学ぶ場所? それはつまり、勉強する場所ということではないのですか?」
「学ぶというのは、勉学に関してだけという訳ではないわ。魔法学園では、色々なことが学べるのよ。楽しいことも、苦しいことも、きっと皆あそこで知るのね」
お母様は私の頬を撫でながら頷いた。もしかしたら、今の言葉を自分自身に言い聞かせているのかもしれない。
お母様は、笑っていた。少し苦しそうだが、それは確かに笑顔だ。
だから、お母様にとって魔法学園の日々は掛け替えのない日々だったのだろう。辛くて苦しくても、大切な日々だったのだろう。
「お母さんの知り合いにね、強く気高い人がいたの」
「知り合い? お友達ではなかったのですか?」
「ええ、そうではないわ。お母さんは、その人にひどいことをしてしまったから……考えてみれば、未だに彼女には謝れていないわね」
お母様が誰のことを言っているのかは、なんとなくわかった。
それはきっと、ゲームの主人公のことを言っているのだろう。
強く気高い人。ゲーム中のお母様だったら、絶対に口にしないような評価に、私は少し驚いてしまう。
「その子は平民で、特別な力を持っていたの。でも、そんなことは関係なくて、彼女の素晴らしい部分は内面だったわ」
「……どんな方だったんですか?」
「太陽のような人だったわね。誰にでも優しくて温かくて……皆を照らす存在だったのだと思うわ」
「太陽……」
「でも、お母さんにはその太陽が眩しすぎたのよ。だから私は……え?」
苦しそうに笑うお母様を見て、私の体は自然と動いていた。自分でも驚く程に素早く、お母様に抱き着いていたのだ。
「ファ、ファルミル? 急に動いたら危ないでしょう?」
「ごめんなさい、お母様……でも!」
「……そうね。ごめんなさい。こんなことは、あなたに言うべきことではなかったわね」
お母様は、そっと私を抱きしめてくれた。きっと、私の想いが伝わったから、そうしてくれたのだろう。
私は、お母様に自分卑下して欲しくない。だって、過去に何があったとしても、お母様は私の大好きな人だから。
事実として、頭はまだ少し痛い。お医者様の話では、特に大きな問題はないらしいので大事にはならないと思うが、安静にしておくのが身のためだろう。
そんな私にお母様は今日も付いてくれている。ただ、お父様が来る時はやはり部屋から出て行き、会わないようにしていた。
「お母様、少し聞いてもいいですか?」
「あら? どうかしたの?」
「えっと……大きくなったら、私は魔法学園に通うんですよね?」
「え? ええ、そうよ」
そこで私は、お母様に少し聞いてみることにした。
魔法学園、それは二人にとって重要な場所であるだろう。この世界が基本的にゲームの世界と同じなら、そのはずだ。
だから、それを聞いてみようと思った。お母様に、魔法学園のことを。
「どんな所なんですか? 魔法学園って」
「どんな所……まあ、基本的には勉強をする所ね」
「……勉強は、お屋敷でもできますよね? 私も勉強していますし」
「それは……そうね。確かにその通りだわ」
私の言葉に、お母様はゆっくりと頷いた。
その後、お母様は考えるような仕草を見せる。魔法学園をどう説明するべきか、考えてくれているのだろう。
その様子は、あまり楽しそうではない。ということは、お母様にとって魔法学園は楽しい場所ではなかったということなのだろう。
「勉強という言い方は、正しくなかったのかもしれないわね。多分、あそこは学ぶための場所と言った方がいいかしら?」
「学ぶ場所? それはつまり、勉強する場所ということではないのですか?」
「学ぶというのは、勉学に関してだけという訳ではないわ。魔法学園では、色々なことが学べるのよ。楽しいことも、苦しいことも、きっと皆あそこで知るのね」
お母様は私の頬を撫でながら頷いた。もしかしたら、今の言葉を自分自身に言い聞かせているのかもしれない。
お母様は、笑っていた。少し苦しそうだが、それは確かに笑顔だ。
だから、お母様にとって魔法学園の日々は掛け替えのない日々だったのだろう。辛くて苦しくても、大切な日々だったのだろう。
「お母さんの知り合いにね、強く気高い人がいたの」
「知り合い? お友達ではなかったのですか?」
「ええ、そうではないわ。お母さんは、その人にひどいことをしてしまったから……考えてみれば、未だに彼女には謝れていないわね」
お母様が誰のことを言っているのかは、なんとなくわかった。
それはきっと、ゲームの主人公のことを言っているのだろう。
強く気高い人。ゲーム中のお母様だったら、絶対に口にしないような評価に、私は少し驚いてしまう。
「その子は平民で、特別な力を持っていたの。でも、そんなことは関係なくて、彼女の素晴らしい部分は内面だったわ」
「……どんな方だったんですか?」
「太陽のような人だったわね。誰にでも優しくて温かくて……皆を照らす存在だったのだと思うわ」
「太陽……」
「でも、お母さんにはその太陽が眩しすぎたのよ。だから私は……え?」
苦しそうに笑うお母様を見て、私の体は自然と動いていた。自分でも驚く程に素早く、お母様に抱き着いていたのだ。
「ファ、ファルミル? 急に動いたら危ないでしょう?」
「ごめんなさい、お母様……でも!」
「……そうね。ごめんなさい。こんなことは、あなたに言うべきことではなかったわね」
お母様は、そっと私を抱きしめてくれた。きっと、私の想いが伝わったから、そうしてくれたのだろう。
私は、お母様に自分卑下して欲しくない。だって、過去に何があったとしても、お母様は私の大好きな人だから。
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