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24.名実ともに(アルティリア視点)
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「きっと、あの子が私達をお互いに変えてくれたのでしょうね。今こうして話せているのもあの子のおかげ……」
「ああ、そうだな。ファルミルは、僕と君を父親と母親にしてくれた。まだ子供だった僕達を変えてくれたんだ。そして僕は今、さらに変わりたいと思っている」
「それは、どのように?」
「僕は君と夫婦になりたい。いや、違うな。こういう言い方では、誤解が生じてしまう」
ファルクス様は、そこで言葉を切った。
大切なことを言おうとしている。それが伝わってきたから、私は言葉を待つ。
「アルティリア、僕は君のことを愛している。馬鹿げた話かもしれないが、僕は母親となった君に好意を抱いたんだ」
「……ありがとうございます、ファルクス様。でも、馬鹿げた話などではないと思いますよ? だって私も、父親になったあなたのことを好きになったのですから」
「……そうか、ありがとう」
私達は、お互いの好意を伝え合った。
きっとそれは、今よりももっと前に芽生えた気持ちだったのだろう。だが、関係が進み過ぎた私達は、それを口にすることができなかったのだ。
だから私達は、微妙な距離を取って生活をしていた。お互いを気遣いながらもすれ違い、向き合おうとしてこなかった。
それが今やっと終わったのだ。ファルミルのおかげで。
「ファルミルは、私達を夫婦に、恋人にしてくれたのですね?」
「ああ、確かにその通りだな。あの子が生まれて、僕達は随分と変わったようだ」
「でも、それはいい変化です」
「そうだな……その通りだ」
お互いに顔を赤くしながら、私達は笑い合った。
私達は恋人という関係を経ずに夫婦となって、子供まで作った。そこまで進んで、やっと私達は恋人になれたのかもしれない。
「さてと、それでは誓いを立ておくべきだろうか」
「誓い、ですか? それはなんというか、少し照れますね」
「うむ、確かにそうだな……」
私の隣まで来たファルクス様は、少しそわそわしていた。
私も、なんだか落ち着かない。こういう時に、どうしていいかわからないのだ。
お互いにそれなりにいい年ではあるのだが、恋人とこういう時にどうするべきなのかまったくわかっていない。
「む?」
「あら?」
そこで私達は、何か物音がしたことに気付いた。
それは、部屋の外から聞こえてきたような気がする。
当然、今は夜中だ。普通に考えたら、この時間に誰かが出歩いているはずはない。
「アルティリア、ここでじっとしていてくれ」
「は、はい……」
ファルクス様は、少し表情を強張らせて部屋の外に向かう。
泥棒が入って来たという可能性もない訳ではない。そう思って警戒しているのだろう。
彼が私を守ろうとしてくれている。その事実に、私は思わず笑みを浮かべてしまう。だが、もしも本当に泥棒であるなら笑っている場合ではない。
「……誰だ? ……ん?」
「あっ……」
「ファルミル?」
ファルクス様が戸を勢いよく開けると、そこにはファルミルとファルミルを見るように頼んだメイドのクローシャがいた。
戸の傍で屈んでいるということから、何をしていたかはすぐに理解できる。彼女達は、私達の話を聞いていたのだ。
「ああ、そうだな。ファルミルは、僕と君を父親と母親にしてくれた。まだ子供だった僕達を変えてくれたんだ。そして僕は今、さらに変わりたいと思っている」
「それは、どのように?」
「僕は君と夫婦になりたい。いや、違うな。こういう言い方では、誤解が生じてしまう」
ファルクス様は、そこで言葉を切った。
大切なことを言おうとしている。それが伝わってきたから、私は言葉を待つ。
「アルティリア、僕は君のことを愛している。馬鹿げた話かもしれないが、僕は母親となった君に好意を抱いたんだ」
「……ありがとうございます、ファルクス様。でも、馬鹿げた話などではないと思いますよ? だって私も、父親になったあなたのことを好きになったのですから」
「……そうか、ありがとう」
私達は、お互いの好意を伝え合った。
きっとそれは、今よりももっと前に芽生えた気持ちだったのだろう。だが、関係が進み過ぎた私達は、それを口にすることができなかったのだ。
だから私達は、微妙な距離を取って生活をしていた。お互いを気遣いながらもすれ違い、向き合おうとしてこなかった。
それが今やっと終わったのだ。ファルミルのおかげで。
「ファルミルは、私達を夫婦に、恋人にしてくれたのですね?」
「ああ、確かにその通りだな。あの子が生まれて、僕達は随分と変わったようだ」
「でも、それはいい変化です」
「そうだな……その通りだ」
お互いに顔を赤くしながら、私達は笑い合った。
私達は恋人という関係を経ずに夫婦となって、子供まで作った。そこまで進んで、やっと私達は恋人になれたのかもしれない。
「さてと、それでは誓いを立ておくべきだろうか」
「誓い、ですか? それはなんというか、少し照れますね」
「うむ、確かにそうだな……」
私の隣まで来たファルクス様は、少しそわそわしていた。
私も、なんだか落ち着かない。こういう時に、どうしていいかわからないのだ。
お互いにそれなりにいい年ではあるのだが、恋人とこういう時にどうするべきなのかまったくわかっていない。
「む?」
「あら?」
そこで私達は、何か物音がしたことに気付いた。
それは、部屋の外から聞こえてきたような気がする。
当然、今は夜中だ。普通に考えたら、この時間に誰かが出歩いているはずはない。
「アルティリア、ここでじっとしていてくれ」
「は、はい……」
ファルクス様は、少し表情を強張らせて部屋の外に向かう。
泥棒が入って来たという可能性もない訳ではない。そう思って警戒しているのだろう。
彼が私を守ろうとしてくれている。その事実に、私は思わず笑みを浮かべてしまう。だが、もしも本当に泥棒であるなら笑っている場合ではない。
「……誰だ? ……ん?」
「あっ……」
「ファルミル?」
ファルクス様が戸を勢いよく開けると、そこにはファルミルとファルミルを見るように頼んだメイドのクローシャがいた。
戸の傍で屈んでいるということから、何をしていたかはすぐに理解できる。彼女達は、私達の話を聞いていたのだ。
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