32 / 38
32.かつての友人(ファルクス視点)
しおりを挟む
かつての友人ラムリアは、現在はディルフォンド侯爵夫人である。
級友であるエグリクスと結ばれた彼女は、平民から貴族の仲間入りを果たしたのだ。
そういった経歴であるため、彼女は色々と苦労していると聞いている。ただ、持ち前の気高さや前向きな心で、そういった悪評を覆したようだ。
「ラムリアから返信があったよ。彼女も是非君に会いたいそうだ」
「そうですか……」
手紙を出した所、ラムリアはすぐに返信を返してくれた。
そこには、自分もアルティリアと会いたいと思っていた旨が記されていた。それに対して、アルティリアは少し苦しそうな表情をする。
「どうかしたのかい?」
「いえ、彼女はどこまでも優しい女性であると思ったのです」
「まあ、確かにそれはそうだと思うけど……」
「彼女が私に会いたいなんて、そんなことはあり得ませんよ。これは社交辞令です。彼女の優しさから出た言葉だと思います」
アルティリアは、ラムリアの言葉を信じていないようだ。
かつて彼女は、ラムリアを敵対視していた。色々とひどいことも言ったらしい。だから、ラムリアが会いたいとは思っていないと、考えているようだ。
だが、僕はそうではないと考えている。ラムリアは、恐らく心からアルティリアに会いたいと思っているはずだ。
「こういうことは、あまり君には言いたくはないが、ラムリアはそんな人ではないと思う」
「……そうなのですか?」
「ああ、まあ、貴族となったから彼女も社交辞令は身に着けているだろうけど、こういった時にそういうことを言う人ではないはずだ。その根本的な部分は、変わっていないと思っている。そこが変わるような人ではないと僕は思う」
「なるほど……」
僕の言葉に、アルティリアはまた苦しそうな顔をした。
その理由は、なんとなくわかる。やはりこんなことは言うべきではなかったかもしれない。とはいえ、誤解したまま二人が会うことも良くないと思うし、色々と難しい所だ。
「アルティリア、僕は君のことを愛しているよ」
「え? ど、どうしたんですか? 急に……」
「いや、その……過去には、色々とあったかもしれない。だけど、今の僕は君を愛しているということをわかって欲しいんだ。だから安心してくれないか?」
「ファルクス様……」
僕はアルティリアの隣に座り、そのまま彼女と口づけを交わした。
それで、彼女は笑顔を見せてくれる。それが、どうしようもなく嬉しい。
「……別に、今のファルクス様を疑っている訳ではありません。ただ、やはり彼女と仲が良かったんだと思うと、少し胸が苦しくて」
「……ごめん。いや、謝るのは違うかな。えっと……愛している」
「ふふ、わかっていますよ」
こういう時に何を言えばいいのか、僕はわかっていなかった。
ただ、愛を囁き唇を重ねることしかできないのがもどかしい。心の中にある愛をどうやって伝えるべきなのか、僕はそれを考えるのだった。
級友であるエグリクスと結ばれた彼女は、平民から貴族の仲間入りを果たしたのだ。
そういった経歴であるため、彼女は色々と苦労していると聞いている。ただ、持ち前の気高さや前向きな心で、そういった悪評を覆したようだ。
「ラムリアから返信があったよ。彼女も是非君に会いたいそうだ」
「そうですか……」
手紙を出した所、ラムリアはすぐに返信を返してくれた。
そこには、自分もアルティリアと会いたいと思っていた旨が記されていた。それに対して、アルティリアは少し苦しそうな表情をする。
「どうかしたのかい?」
「いえ、彼女はどこまでも優しい女性であると思ったのです」
「まあ、確かにそれはそうだと思うけど……」
「彼女が私に会いたいなんて、そんなことはあり得ませんよ。これは社交辞令です。彼女の優しさから出た言葉だと思います」
アルティリアは、ラムリアの言葉を信じていないようだ。
かつて彼女は、ラムリアを敵対視していた。色々とひどいことも言ったらしい。だから、ラムリアが会いたいとは思っていないと、考えているようだ。
だが、僕はそうではないと考えている。ラムリアは、恐らく心からアルティリアに会いたいと思っているはずだ。
「こういうことは、あまり君には言いたくはないが、ラムリアはそんな人ではないと思う」
「……そうなのですか?」
「ああ、まあ、貴族となったから彼女も社交辞令は身に着けているだろうけど、こういった時にそういうことを言う人ではないはずだ。その根本的な部分は、変わっていないと思っている。そこが変わるような人ではないと僕は思う」
「なるほど……」
僕の言葉に、アルティリアはまた苦しそうな顔をした。
その理由は、なんとなくわかる。やはりこんなことは言うべきではなかったかもしれない。とはいえ、誤解したまま二人が会うことも良くないと思うし、色々と難しい所だ。
「アルティリア、僕は君のことを愛しているよ」
「え? ど、どうしたんですか? 急に……」
「いや、その……過去には、色々とあったかもしれない。だけど、今の僕は君を愛しているということをわかって欲しいんだ。だから安心してくれないか?」
「ファルクス様……」
僕はアルティリアの隣に座り、そのまま彼女と口づけを交わした。
それで、彼女は笑顔を見せてくれる。それが、どうしようもなく嬉しい。
「……別に、今のファルクス様を疑っている訳ではありません。ただ、やはり彼女と仲が良かったんだと思うと、少し胸が苦しくて」
「……ごめん。いや、謝るのは違うかな。えっと……愛している」
「ふふ、わかっていますよ」
こういう時に何を言えばいいのか、僕はわかっていなかった。
ただ、愛を囁き唇を重ねることしかできないのがもどかしい。心の中にある愛をどうやって伝えるべきなのか、僕はそれを考えるのだった。
34
あなたにおすすめの小説
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
ヤンデレ悪役令嬢は僕の婚約者です。少しも病んでないけれど。
霜月零
恋愛
「うげっ?!」
第6王子たる僕は、ミーヤ=ダーネスト公爵令嬢を見た瞬間、王子らしからぬ悲鳴を上げてしまいました。
だって、彼女は、ヤンデレ悪役令嬢なんです!
どうして思いだしたのが僕のほうなんでしょう。
普通、こうゆう時に前世を思い出すのは、悪役令嬢ではないのですか?
でも僕が思い出してしまったからには、全力で逃げます。
だって、僕、ヤンデレ悪役令嬢に将来刺されるルペストリス王子なんです。
逃げないと、死んじゃいます。
でも……。
ミーヤ公爵令嬢、とっても、かわいくないですか?
これは、ヤンデレ悪役令嬢から逃げきるつもりで、いつの間にかでれでれになってしまった僕のお話です。
※完結まで執筆済み。連日更新となります。
他サイトでも公開中です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる