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「ルルーナ嬢、どうかしたのか?」
「ゼナート様、この人物は……ゼレックさんです」
「ゼレック?」
「ええ、冒険者を名乗っていた老人で、今から十年前にこの地で亡くなりました。間違いありません。この絵に描かれているのは彼です」
私の頭の中には、はっきりと一人の冒険者の顔が現れていた。長い髭や白髪で印象は違うが、その人物が絵の人物であることは間違いないだろう。
その事実に、ゼナート様もダグラス様も驚いている。まさかこんなに早く、件の人物が見つかるとは思っていなかったのだろう。
「ルルーナ嬢、この人物の本当の名前はザルフィルドという。あなたは、彼に会ったことがあるのか?」
「ええ、あります。この町の酒場……ゼナート様と会ったあの酒場に、彼はよく訪れていたんです。そこで各地の伝説……英雄の話なんかを聞かせてくれました」
「英雄の話か。確かに、ザルフィルド様は、英雄願望があったと聞いている」
「やはり、間違いなさそうですね……」
ゼナート様の話も聞いて、私は益々絵の人物がゼレックさんであることを悟った。
しかしそれなら、少々困ったことになる。彼の最期というものは、非常に劇的なものだったからである。
「ゼレックさんは、この地で亡くなりました。ただ、老衰ではありません。彼は確かに病に犯されていたらしいですが……」
「ああ、ザルフィルド様は余命を宣告されていた。彼が王家を抜け出したのは、最後に自由を満喫したかったからだと考えられている」
「本人も長くないことは何度も話していました。でも彼は殺されたんです。カナプト山に住む山賊に……」
「……何?」
私の言葉に、ゼナート様はその表情を歪めた。
それはそうだろう。件の人物が、今回の事件に関与する一派に殺されたとなれば、動揺して当たり前だ。私だって、驚いている。
「町に住む子供が、行方不明になったんです。親が目を離した一瞬の好きに、どこかに消えてしまって……その捜索の最中でした。ここからは、推測になりますが……ゼレックさんは、カナプト山付近で山賊に連れ去れそうになる子供を見つけたのだと思います」
「……」
「彼は子供を助けるために、山賊と戦いました。その結果、相打ちになったと考えられています。ただ、真偽は不明です。見つかったのは山賊三人とゼレックさんの遺体、それからその傍で泣きじゃくっているまだ物心のついていない子供だけでしたから」
「なるほど……」
ゼナート様は、ゆっくりとため息をついた。
その表情からは、深い悲しみが読み取れる。やはり彼にも、肉親を思う気持ちはあるということなのだろう。
その事実に私は少し安心していた。なんだかゼナート様が、身近に感じられたのだ。
「ゼナート様、この人物は……ゼレックさんです」
「ゼレック?」
「ええ、冒険者を名乗っていた老人で、今から十年前にこの地で亡くなりました。間違いありません。この絵に描かれているのは彼です」
私の頭の中には、はっきりと一人の冒険者の顔が現れていた。長い髭や白髪で印象は違うが、その人物が絵の人物であることは間違いないだろう。
その事実に、ゼナート様もダグラス様も驚いている。まさかこんなに早く、件の人物が見つかるとは思っていなかったのだろう。
「ルルーナ嬢、この人物の本当の名前はザルフィルドという。あなたは、彼に会ったことがあるのか?」
「ええ、あります。この町の酒場……ゼナート様と会ったあの酒場に、彼はよく訪れていたんです。そこで各地の伝説……英雄の話なんかを聞かせてくれました」
「英雄の話か。確かに、ザルフィルド様は、英雄願望があったと聞いている」
「やはり、間違いなさそうですね……」
ゼナート様の話も聞いて、私は益々絵の人物がゼレックさんであることを悟った。
しかしそれなら、少々困ったことになる。彼の最期というものは、非常に劇的なものだったからである。
「ゼレックさんは、この地で亡くなりました。ただ、老衰ではありません。彼は確かに病に犯されていたらしいですが……」
「ああ、ザルフィルド様は余命を宣告されていた。彼が王家を抜け出したのは、最後に自由を満喫したかったからだと考えられている」
「本人も長くないことは何度も話していました。でも彼は殺されたんです。カナプト山に住む山賊に……」
「……何?」
私の言葉に、ゼナート様はその表情を歪めた。
それはそうだろう。件の人物が、今回の事件に関与する一派に殺されたとなれば、動揺して当たり前だ。私だって、驚いている。
「町に住む子供が、行方不明になったんです。親が目を離した一瞬の好きに、どこかに消えてしまって……その捜索の最中でした。ここからは、推測になりますが……ゼレックさんは、カナプト山付近で山賊に連れ去れそうになる子供を見つけたのだと思います」
「……」
「彼は子供を助けるために、山賊と戦いました。その結果、相打ちになったと考えられています。ただ、真偽は不明です。見つかったのは山賊三人とゼレックさんの遺体、それからその傍で泣きじゃくっているまだ物心のついていない子供だけでしたから」
「なるほど……」
ゼナート様は、ゆっくりとため息をついた。
その表情からは、深い悲しみが読み取れる。やはり彼にも、肉親を思う気持ちはあるということなのだろう。
その事実に私は少し安心していた。なんだかゼナート様が、身近に感じられたのだ。
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