63 / 142
不条理な世界(アルーグ視点)
しおりを挟む
世の中というものは、不条理なものだ。彼女からの手紙を読んで、俺はそんな感想を抱いていた。
その手紙に記されていたことは、大きく分けると二つだ。
一つは、セリネアの命が、もう長くはないこと。彼女は、病に侵されているそうだ。
もう一つは、彼女の娘ルネリアのことである。彼女を守って欲しい。その旨が、手紙には記されている。
「ルネリアを公爵家に……か」
セリネアの望みは、ルネリアを公爵家に加えることだった。色々と考えた結果、それが一番いいと考えたようである。
本当にそれでいいのかどうか、俺は考えようとした。だが、その思考を俺は切り捨てる。
ルネリアの親であるセリネアがそう考えたのだ。それをこの俺風情が捻じ曲げる必要などないだろう。
故に、俺は手紙の指示通りにすると決めた。セリネアは、父上と話がしたいそうだ。まずは、その場を設けるとしよう。
「……結局、俺は何をしていたのだろうな」
彼女への返信を書きながら、俺はゆっくりとそう呟いていた。
俺のしてきたことは、無駄だったのだ。それを理解して、俺はなんともいえない気分になるのだった。
◇◇◇
しばらくして、俺の元にセリネアの訃報が届いてきた。
村で話してから、何度か手紙のやり取りは交わしたものの、彼女とはあれっきり会っていない。
彼女の望みは、娘と残された時間を過ごすことだった。そこに、俺が介入するべき時などなかったのである。
「アルーグ様」
「む? どうかしたのか?」
「いえ、先程からぼうっとされてしましたから」
「そうか……それは、すまなかったな」
訃報が届いてから間もなくして、俺はカーティアと会っていた。
それは、元々予定していた会合だ。これからのことを、少し話し合いたかったため、俺は彼女を呼んだのである。
それなのに、俺はぼうっとしていたようだ。それはなんとも、情けない話だ。
「……先程伝えた通り、このラーデイン公爵家は隠し子であるルネリアを迎えに行く。お前には、迷惑をかけてしまうな」
「いえ」
「婚約関係の見直しも、考えられるかもしれない案件だ。もしも、そうなったら……」
「アルーグ様、もういいです」
俺の言葉をカーティアは遮ってきた。
これ以上の説明は、どうやら不要らしい。どうなるかは、彼女もよくわかっているということだろうか。
そんなことを思いながら、俺はふと彼女の顔を見た。今までは色々と考えていて、その顔を直視できていなかったのだ。
「……何?」
そして、俺は気付いた。彼女の目から、涙が流れているということに。
その手紙に記されていたことは、大きく分けると二つだ。
一つは、セリネアの命が、もう長くはないこと。彼女は、病に侵されているそうだ。
もう一つは、彼女の娘ルネリアのことである。彼女を守って欲しい。その旨が、手紙には記されている。
「ルネリアを公爵家に……か」
セリネアの望みは、ルネリアを公爵家に加えることだった。色々と考えた結果、それが一番いいと考えたようである。
本当にそれでいいのかどうか、俺は考えようとした。だが、その思考を俺は切り捨てる。
ルネリアの親であるセリネアがそう考えたのだ。それをこの俺風情が捻じ曲げる必要などないだろう。
故に、俺は手紙の指示通りにすると決めた。セリネアは、父上と話がしたいそうだ。まずは、その場を設けるとしよう。
「……結局、俺は何をしていたのだろうな」
彼女への返信を書きながら、俺はゆっくりとそう呟いていた。
俺のしてきたことは、無駄だったのだ。それを理解して、俺はなんともいえない気分になるのだった。
◇◇◇
しばらくして、俺の元にセリネアの訃報が届いてきた。
村で話してから、何度か手紙のやり取りは交わしたものの、彼女とはあれっきり会っていない。
彼女の望みは、娘と残された時間を過ごすことだった。そこに、俺が介入するべき時などなかったのである。
「アルーグ様」
「む? どうかしたのか?」
「いえ、先程からぼうっとされてしましたから」
「そうか……それは、すまなかったな」
訃報が届いてから間もなくして、俺はカーティアと会っていた。
それは、元々予定していた会合だ。これからのことを、少し話し合いたかったため、俺は彼女を呼んだのである。
それなのに、俺はぼうっとしていたようだ。それはなんとも、情けない話だ。
「……先程伝えた通り、このラーデイン公爵家は隠し子であるルネリアを迎えに行く。お前には、迷惑をかけてしまうな」
「いえ」
「婚約関係の見直しも、考えられるかもしれない案件だ。もしも、そうなったら……」
「アルーグ様、もういいです」
俺の言葉をカーティアは遮ってきた。
これ以上の説明は、どうやら不要らしい。どうなるかは、彼女もよくわかっているということだろうか。
そんなことを思いながら、俺はふと彼女の顔を見た。今までは色々と考えていて、その顔を直視できていなかったのだ。
「……何?」
そして、俺は気付いた。彼女の目から、涙が流れているということに。
286
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。
そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。
それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。
必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが…
正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。
アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日
※長編版と差し替えました。2025年7月2日
※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる