4 / 44
4.婚約者からの提案
しおりを挟む
私には、婚約者がいた。
それは、ディクソン・バラドア伯爵令息という人物である。
彼は、少々高慢な人間であった。私のこともどこか見下していて、なんだかあまりいい印象がない人だった。
「君とは婚約破棄したいと思っている」
「……え?」
ある日私は、ディクソン様からそのようなことを言い渡される。
その言葉に、私は驚いてしまった。突然の婚約破棄、そんなことを言われて動揺しない人はいないだろう。
「ど、どういうことですか?」
「どういうこともこういうこともないさ。君との婚約を破棄したい。そう思っているんだ」
「な、何故……?」
ディクソン様のことは、別に好きではない。
ただこの婚約は、お父様に言い渡された私の使命だ。それを果たせないとなると、色々とまずい気がする。
故に私は、少し食い下がってみることにした。もちろん、婚約破棄なんて言い出すのは考えた末なのだろうが、踏み止まってもらえるならそうしてもらいたかったのだ。
「……僕の婚約者として、君は相応しくない」
「相応しくない?」
「君はつまらない人間なんだよ。君といたって、僕の心はまったくもって揺れ動かない。面白くないんだよ、君との会話は……」
ディクソン様は、私を見下しながらそのようなことを言ってきた。
基本的に、私は余計なことは言わないようにしている。それを言ったらひどい目に合うと、刷り込まれていたからだ。
私のそういった点が、ディクソン様は気に入らなかったらしい。
「そうですか……しかし、婚約破棄なんてそんなことをしたら、大変なことになるではありませんか。私達だけの問題ではないのですよ?」
「その点に関しては問題がない。宛てがあるからな」
「宛て?」
「ああ、君と婚約破棄してもまったく問題はないのさ。なぜなら、僕の新しい婚約者は君と同じエルシエット伯爵家の人間だからな」
「なっ、それはまさか……」
ディクソン様の言葉に、私は驚いた。
すると次の瞬間、部屋の奥の方から一人の女性が現れる。
彼女のことは、よく知っていた。なぜなら彼女は、私の妹であるからだ。
「お姉様、残念でしたね? ディクソン様は、私のものなのです」
「あ、あなたがディクソン様の新しい婚約者……?」
「ああ、故にまったく問題はない。エルシエット伯爵家とバラドア伯爵家との婚約は維持されるのだ」
「なっ……」
婚約者と妹は、私のことを嘲笑ってきた。
そんな二人の様子に、私は思わず困惑してしまう。
確かに一見すると、二人の理論は完璧であるように思える。だが、そうではないのだ。バラドア伯爵家の次期当主であるディクソン様と、エルシエット伯爵家を継ぐ婿を迎えるイフェリアが結ばれるということは、非常にまずいことなのである。
それは、ディクソン・バラドア伯爵令息という人物である。
彼は、少々高慢な人間であった。私のこともどこか見下していて、なんだかあまりいい印象がない人だった。
「君とは婚約破棄したいと思っている」
「……え?」
ある日私は、ディクソン様からそのようなことを言い渡される。
その言葉に、私は驚いてしまった。突然の婚約破棄、そんなことを言われて動揺しない人はいないだろう。
「ど、どういうことですか?」
「どういうこともこういうこともないさ。君との婚約を破棄したい。そう思っているんだ」
「な、何故……?」
ディクソン様のことは、別に好きではない。
ただこの婚約は、お父様に言い渡された私の使命だ。それを果たせないとなると、色々とまずい気がする。
故に私は、少し食い下がってみることにした。もちろん、婚約破棄なんて言い出すのは考えた末なのだろうが、踏み止まってもらえるならそうしてもらいたかったのだ。
「……僕の婚約者として、君は相応しくない」
「相応しくない?」
「君はつまらない人間なんだよ。君といたって、僕の心はまったくもって揺れ動かない。面白くないんだよ、君との会話は……」
ディクソン様は、私を見下しながらそのようなことを言ってきた。
基本的に、私は余計なことは言わないようにしている。それを言ったらひどい目に合うと、刷り込まれていたからだ。
私のそういった点が、ディクソン様は気に入らなかったらしい。
「そうですか……しかし、婚約破棄なんてそんなことをしたら、大変なことになるではありませんか。私達だけの問題ではないのですよ?」
「その点に関しては問題がない。宛てがあるからな」
「宛て?」
「ああ、君と婚約破棄してもまったく問題はないのさ。なぜなら、僕の新しい婚約者は君と同じエルシエット伯爵家の人間だからな」
「なっ、それはまさか……」
ディクソン様の言葉に、私は驚いた。
すると次の瞬間、部屋の奥の方から一人の女性が現れる。
彼女のことは、よく知っていた。なぜなら彼女は、私の妹であるからだ。
「お姉様、残念でしたね? ディクソン様は、私のものなのです」
「あ、あなたがディクソン様の新しい婚約者……?」
「ああ、故にまったく問題はない。エルシエット伯爵家とバラドア伯爵家との婚約は維持されるのだ」
「なっ……」
婚約者と妹は、私のことを嘲笑ってきた。
そんな二人の様子に、私は思わず困惑してしまう。
確かに一見すると、二人の理論は完璧であるように思える。だが、そうではないのだ。バラドア伯爵家の次期当主であるディクソン様と、エルシエット伯爵家を継ぐ婿を迎えるイフェリアが結ばれるということは、非常にまずいことなのである。
165
あなたにおすすめの小説
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです
ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。
「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」
隣には涙を流す義妹ルミレア。
彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。
だが――王太子は知らなかった。
ヴァレリオン公爵家が
王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証――
王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。
婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。
「では契約を終了いたします」
その瞬間、王国の歯車は止まり始める。
港は停止。
銀行は資金不足。
商人は取引停止。
そしてついに――
王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。
「私は悪くない!」
「騙されたんだ!」
見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。
王太子、義妹、義父母。
すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。
「契約は終わりました」
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
お望み通り、別れて差し上げます!
珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる