そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

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4.婚約者からの提案

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 私には、婚約者がいた。
 それは、ディクソン・バラドア伯爵令息という人物である。
 彼は、少々高慢な人間であった。私のこともどこか見下していて、なんだかあまりいい印象がない人だった。

「君とは婚約破棄したいと思っている」
「……え?」

 ある日私は、ディクソン様からそのようなことを言い渡される。
 その言葉に、私は驚いてしまった。突然の婚約破棄、そんなことを言われて動揺しない人はいないだろう。

「ど、どういうことですか?」
「どういうこともこういうこともないさ。君との婚約を破棄したい。そう思っているんだ」
「な、何故……?」

 ディクソン様のことは、別に好きではない。
 ただこの婚約は、お父様に言い渡された私の使命だ。それを果たせないとなると、色々とまずい気がする。
 故に私は、少し食い下がってみることにした。もちろん、婚約破棄なんて言い出すのは考えた末なのだろうが、踏み止まってもらえるならそうしてもらいたかったのだ。

「……僕の婚約者として、君は相応しくない」
「相応しくない?」
「君はつまらない人間なんだよ。君といたって、僕の心はまったくもって揺れ動かない。面白くないんだよ、君との会話は……」

 ディクソン様は、私を見下しながらそのようなことを言ってきた。
 基本的に、私は余計なことは言わないようにしている。それを言ったらひどい目に合うと、刷り込まれていたからだ。
 私のそういった点が、ディクソン様は気に入らなかったらしい。

「そうですか……しかし、婚約破棄なんてそんなことをしたら、大変なことになるではありませんか。私達だけの問題ではないのですよ?」
「その点に関しては問題がない。宛てがあるからな」
「宛て?」
「ああ、君と婚約破棄してもまったく問題はないのさ。なぜなら、僕の新しい婚約者は君と同じエルシエット伯爵家の人間だからな」
「なっ、それはまさか……」

 ディクソン様の言葉に、私は驚いた。
 すると次の瞬間、部屋の奥の方から一人の女性が現れる。
 彼女のことは、よく知っていた。なぜなら彼女は、私の妹であるからだ。

「お姉様、残念でしたね? ディクソン様は、私のものなのです」
「あ、あなたがディクソン様の新しい婚約者……?」
「ああ、故にまったく問題はない。エルシエット伯爵家とバラドア伯爵家との婚約は維持されるのだ」
「なっ……」

 婚約者と妹は、私のことを嘲笑ってきた。
 そんな二人の様子に、私は思わず困惑してしまう。
 確かに一見すると、二人の理論は完璧であるように思える。だが、そうではないのだ。バラドア伯爵家の次期当主であるディクソン様と、エルシエット伯爵家を継ぐ婿を迎えるイフェリアが結ばれるということは、非常にまずいことなのである。
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