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7.隠されていたもの

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「こうやって荷物をまとめてみると、案外少ないものね……」

 私は、荷物をまとめてエルシエット伯爵家から出て行くことにした。
 故に部屋の中から必要なものを鞄に詰めていたのだが、持って行こうと思うようなものは少なかった。
 それだけ、私はこの家が嫌だったということだろうか。こう考えてみると、どうしてここに留まりたいと思っていたのかわからないくらいである。

「あら? これは……」

 そこで私は、あまり使っていないタンスの中から木箱を見つけた。
 それは、身に覚えがないものである。どうしてそこにそんなものがあるのか、私にはまったく理解できない。

「イフェリアの悪戯かしらね……?」

 私は、その木箱をとりあえず取り出した。
 少々怖いが、中を見てみた方がいいだろう。もしかしたら私が忘れているだけかもしれないし、確認しておく必要はある。

「……これは手紙?」

 木箱の中に入っていたのは、一通の手紙であった。
 そんなものを入れて木箱を棚に隠したというなら、流石に忘れるなんてことはないだろう。ということは、これは他の人が入れたものということになる。
 その入れた人物が、イフェリアである可能性も低いだろう。この紙に罵倒の言葉が書いてあるという悪戯は、なんというか変だ。別の人物と考えるべきだろう。

「……これは、お母様からの手紙?」

 手紙に目を通して、私は驚くことになった。
 その手紙は、お母様が生前私に残してくれた手紙だったのだ。それを読んで、私は思わず震えてしまう。
 今は亡きお母様からの手紙、それは私の心を揺さぶってきた。だが、私はなんとか冷静さを保って手紙を読み進めていく。

「……お母様は、私に財産を残してくれていたの?」

 手紙には、お母様が私に財産を残してくれたという旨が書いてあった。
 その事実に、私は驚いていた。そんな話をお母様から生前に聞いたことがなかったからだ。
 しかし恐らく、それはお父様にばれないためだったのだろう。もしもばれたら、そのお金は持っていかれてしまっていたはずだ。

「お金に関してどうしようかと思っていたけれど、これならなんとかなりそうね……それに、お母様は頼れる人まで紹介してくれている」

 お母様の手紙には、色々なことが書いてあった。
 もしも伯爵家から追い出された場合、誰を頼ればいいかなど詳細に記してくれている。
 これは私にとって、足掛かりになりそうだ。何をすればいいかが、段々と見えてきた。

「お母様、ありがとうございます」

 私は、お母様に感謝していた。
 彼女のおかげで、私の未来は思っていたよりも明るいものになりそうだ。
 こうして私は、お母様からの手紙によって活路を切り開くことができたのだった。
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