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8.独自の伝手
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お母様は、私が思っていた以上の財産を残してくれていた。
どうやらお母様は、私が生まれた時から少しずつ銀行にお金を預けていたらしい。独自の伝手を使って、彼女はお父様に見つからないようにお金を溜めていたようだ。
もしかしたらお母様は、こうなることがわかっていたのだろうか。そんな気がしてしまうくらい、お母様の隠れた努力はすごかった。
「彼女から、エルシエット伯爵についてはよく聞いていた。故に、こちらから連絡を入れることもできず……申し訳ありませんでした」
「いえ、お気になさらないでください。私にとっては、むしろそれがありがたかったですから」
そんな母の知り合いであったラナキンスさんは、私に対してとても申し訳なさそうに頭を下げてきた。
しかし、彼の判断は正しかったといえるだろう。もしも、私に連絡を入れていたら、お父様はお母様が残してくれた財産を奪い取っていたはずだ。
「でも驚きました。お母様が、商人の方と親しくされていたなんて、私はまったく知りませんでしたから……」
「あなたの母君……アルシャナ様とは、妻を通じて知り合いました。慈悲深いあの方は、ボランティアの最中に私の妻と出会ったそうです」
「そうでしたか。ボランティアの話は、聞いたことはあったのですが……」
私のお母様は、慈善活動に力を入れていたと聞いたことがある。
お父様は、下らないことに労力とお金を使ったどうしようもない愚か者だと評していたが、お母様のその活動は素晴らしいものであると私は認識していた。
その活動の最中、お母様は独自の伝手を得たようである。その伝手が今回、私を大いに助けてくれたのだ。
「アルシャナ様はご両親が亡くなった時に得た遺産を、私に預けました。彼女から命じられたのは、その財産を少しずつ貯金して欲しいということと、同じく少しずつ寄付して欲しいということでした。手数料として、私にも毎月少しずつのお金を払うという条件付きの要求でした」
「お父様に悟られないように、ということですか?」
「ええ、エルシエット伯爵はこちらの動きにも気にかけていましたからね。故に私は、少しずつ彼女から預かったものを動かしていました。些細な動きですから、伯爵も見逃していたのでしょうな。今日に至るまでばれることはありませんでした」
ラナキンスさんが語る事実により、私はお父様の悪辣さを改めて認識した。
あの男は何から何までお母様から奪おうとしていたのだ。その所業は、到底許せるものではない。
やはり、あの人の元から出て行って良かった。私は今までよりも強くそう思うのだった。
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