そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
44 / 44

44.新たな取材

しおりを挟む
「いやあ、記事は大反響でしたよ。お陰様で私も評価が上がって、正直ウハウハって感じです」
「そう、それは良かったわね」

 エルシエット伯爵家とのいざこざも終わってしばらくして、私の元にまたオルマナがやって来た。
 彼女の記事の評判は、私の耳にも入っている。元貴族の令嬢の商人、その珍しい経歴は人々の関心を集めているらしい。
 それに関して連絡をしている内に、オルマナともある程度仲が良くなった。それは思えば、不思議な縁である。

「こういう言い方は良くありませんが、直近でエルシエット伯爵家の悪評が流れたというのも、アルシエラさんの経歴のセンセーショナルさを際立たせましたね」
「ああ、それもやっぱり影響しているのかしら?」
「ええ、何故アルシエラさんが伯爵家を出たのか、それを皆なんとなく察したんだと思います」
「正確には追放されたのだけれどね……」
「まあ、その辺はいいじゃないですか。重要なのは、アルシエラさんに義があるってわかったことですから」

 オルマナは、とても楽しそうに笑っていた。
 彼女からすれば、エルシエット伯爵家の没落も記事を盛り上げる一部に過ぎないということなのかもしれない。
 ただ、流石にそれは私の前で言うべきことではないだろう。私は特に気にすることはないが、人によっては不快に思う可能性もある。そういう所は、まだまだ彼女も未熟ということだろうか。

「それで、ですね。本日は新しい記事を作りたくて、アルシエラさんの元を訪ねてきた訳なんですけど、いいですかね?」
「ええ、でも第二弾なんて本当に大丈夫なの? 私の半生は語った訳だし、もうそんなに面白い話はできないと思うのだけれど……」
「そんなことはありませんよ。商人として各地を巡ったアルシエラさんのことですから、面白い話の一つや二つくらいあるんじゃないですか?」
「いやまあ……ないことはないかもしれないけれど」

 オルマナに言われて、私は何個か話せるネタを思いついていた。
 商人として色々と活動していく中で、確かに不可思議なことに遭遇することはあった。それらの事件のことは、確かに前回の取材では話していない。
 そういったことを話せば、記事の一つや二つくらいはできるかもしれない。

「やっぱりあるんじゃないですか。それを聞かせてくださいよ」
「相変わらず調子が良いわね。最初に会った時は、もう少し可愛げがあったような気がするのだけれど、どうしてこうなってしまったのかしらね?」
「そ、それだけアルシエラさんと仲良くなったということですよ。私、多分どっちかというとこっちが素ですし……」
「……まあいいわ。それなら話してあげましょうかしらね」

 本当に調子が良くなったオルマナに対して、私は話を始める。
 こうして私は、再び取材を受けるのだった。
しおりを挟む
感想 15

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(15件)

はっぴぃ
2025.06.11 はっぴぃ

33.世に…

4頁1行目 叔母様→伯母様

母の姉だから、叔母ではなく伯母が正しいかと。

2025.06.16 木山楽斗

ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。

解除
兎子
2023.09.03 兎子

父親は手紙を握り潰すとか、本当に根性の悪い人でしたね。。😭
母親が本当に病気で亡くなったのかも怪しくなるくらい!
でも、いい人と巡り会えて、アルシエラが幸せになって良かったです。
面白かったです!

2023.09.03 木山楽斗

感想ありがとうございます。
仰る通り、父親はかなりの悪人だったと思います。
母親の死因にも、もしかしたら関わっていたかもしれません。
アルシエラの幸せを喜んでいただけるのは嬉しいです。
この作品で楽しんでいただけたなら幸いです。

解除
rickdius
2023.09.03 rickdius

 ビッチは平民になっても、姉にすがって生きていけるとでも思っていたの?

2023.09.03 木山楽斗

感想ありがとうございます。
確かにそのように思っていたのかもしれません。

解除

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。 そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。 しかしその婚約は、すぐに破談となる。 ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。 メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。 ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。 その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。