妹の代わりに人質として嫁いだ私は、隣国の王太子様に何故か溺愛されています。

木山楽斗

文字の大きさ
11 / 12

11.認識の変化

しおりを挟む
「……アルネリア嬢は、妹思いなのだな」
「え?」
「妹のために、俺に嫁いできたということなのだろう?」

 私の話を聞いたラゼルト殿下は、少し真剣な顔をして言葉を発していた。
 それは今までの彼とは、少し違うような気がする。私は少し驚いてしまった。いつもどちらかというと朗らかな彼に、陰りが見えたのだ。

「……それはまあ、そうですね。全てが妹のためにやったという訳ではありませんが、姉として何かしたかったことは確かなことです」
「俺の妹も、カルノード王国に嫁いだ。もしかしたら、あいつも不安だったのかもしれないな。もっとも、俺が代わりになることなどはできないが」

 ラゼルト殿下の言葉に、私はこちらの国から嫁いだという王女様のことを思い出した。
 私はその人と会ったことはない。入れ違いになったからだ。人質という側面もあるため、私達はほぼ同時期に、入れ替わらなければならなかったのである。

「ルナティア様のことですよね。お会いしてみたい気持ちはありますね。同じ立場ですから」
「そうか。きっとルナティアも同じようなことを思っているのだろう。しかし、それは中々難しいというのが現状だ」
「ええ、わかっています」

 ラゼルト殿下は、同じく妹を持つ身として私に共感を抱いているのかもしれない。
 その表情には、やはり陰りが見える。少なくとも、今までの彼の私に対する接し方とは違う。色々と思う所があるのだろうか。

「……しかし、少し意外だな」
「意外、ですか?」
「ああいや、アルネリア嬢にも家族というものがあって、暮らしていたのだなと今更思って」
「それは……」

 ラゼルト殿下は、苦笑いを浮かべていた。
 その表情を見て、私は理解する。今の会話で、彼の中にあった私への幻想というものが崩れたのだということを。

 女神ラルネシア様と私の大きな違いは、実在しているかどうかということである。ラゼルト殿下の中では、それが上手く噛み砕けていなかったのだろう。
 それはわかっていたことである。その認識が彼の中で改められたとしたら、どうなるのだろうか。私は少し怖かった。ラゼルト殿下が豹変する可能性もあったからだ。

「アルネリア嬢、すまなかったな。今までの俺の態度というものは、あなたにとって良いものではなかっただろう」
「あ、いえ、そんなことは……」
「しかし、改めて思った。あなたは美しい。妹のために、困難に立ち向かう勇気をあなたは持っている。俺はあなたを尊敬する」

 ラゼルト殿下の言葉に、私は少し面食らうことになった。
 彼は澄んだ目で、私のことを見ている。その視線からは、今までとは違う意思というものが感じられる。
 どうやら彼の中では、色々と割り切りがついたらしい。今までと接し方は変わるかもしれないが、それでも悪いようにはならないだろう。私はそう思うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

エリート医務官は女騎士を徹底的に甘やかしたい

鳥花風星
恋愛
女騎士であるニーナには、ガイアという専属魔術医務官がいる。エリートであり甘いルックスで令嬢たちからモテモテのガイアだが、なぜか浮いた話はなく、結婚もしていない。ニーナも結婚に興味がなく、ガイアは一緒いにいて気楽な存在だった。 とある日、ニーナはガイアから女避けのために契約結婚を持ちかけられる。ちょっと口うるさいただの専属魔術医務官だと思っていたのに、契約結婚を受け入れた途端にガイアの態度は日に日に甘くなっていく。

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

隣国の王族公爵と政略結婚したのですが、子持ちとは聞いてません!?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「わたくしの旦那様には、もしかして隠し子がいるのかしら?」 新婚の公爵夫人レイラは、夫イーステンの隠し子疑惑に気付いてしまった。 「我が家の敷地内で子供を見かけたのですが?」と問えば周囲も夫も「子供なんていない」と否定するが、目の前には夫そっくりの子供がいるのだ。 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n3645ib/ )

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

処理中です...