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2.王家への不満

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 聖女の親衛隊は、王国の中でも優秀な魔法使いを集めたものだ。
 聖女には及ばないが、それでも一流の魔法使いが集まっている。そのため、エデルト王国でも名高い集団だ。
 その親衛隊に、私は所属している。本来ならば、それは誇りと思えただろう。しかし、今の私はそうは思えない。

「聖女パトリシアは、非常に優秀な魔法使いであった。それは俺も認めざるを得ないことだ。確かに王家の血筋は優秀な魔法使いを輩出してきたといえるだろう。しかし、今の王家はなんだ。堕落も甚だしい」

 親衛隊の中でも古株であるバルトンさんは、今の王家のやり方にかなり不満を持っているようだった。
 それは多かれ少なかれ、親衛隊のほとんどが思っていることであるだろう。

「しかしバルトンさん、仕方ない面もありますよ。王家は国をまとめなければなりませんからね。王家の評価を下げないためにも、優れた魔法使いが必要なのですから」
「ナーゼル、俺は別にそのことについて苦言を呈しているという訳ではない。王家の事情は理解できる。問題なのは、聖女の態度だ」
「気持ちはわかりますが、そういうことはあまり言わない方がいいですよ。どこから聖女の耳に入るか、わかりませんからね」

 怒れるバルトンさんのことを、ナーゼルさんは宥めていた。
 彼だって不満は抱いているはずだが、状況を考えているのだろう。ここにはもうすぐ聖女ファルティア様が来る。彼女に対する不満を述べていい状況ではないのだ。

「しかしだな……」
「聖女の機嫌は損ねないようにしましょう。それが身のためですよ。バルトンさんも、クビになったら困るでしょう? だからこそ、親衛隊に留まっている。違いますか?」
「それは……そうだが」

 ナーゼルさんは、あくまでも冷静だった。
 その考えは、合理的だといえるだろう。聖女の親衛隊をクビになりたくはない。特に平民にとって、この仕事の報酬は魅力的だ。

「……おやおや皆さん、相変わらず無駄話に花を咲かせているようですね?」
「あっ……」
「まったく、こんなのが親衛隊なんて、信じられません。もっとちゃんとしてもらわないと困ってしまいます」

 そんなことを考えていると、件の聖女ファルティア様がやって来た。
 彼女は、楽しそうな笑みを浮かべている。彼女がそういう笑みをしている時には、碌なことがない。いやというよりも、彼女と顔を合わせること自体、いいことはないといえるだろう。
 バルトンさんが言っていた通り、ファルティア様は今の王家の問題なのである。端的に言ってしまえば、彼女は性格が悪いのだ。
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