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3.傲慢なる聖女

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「……ファルティア様、お疲れ様です。本日も見事な手腕でした」
「あら、それは嫌味かしらね? 私が何もしていないことは、あなた達が一番よくわかっているというのに」
「まさか。こちらにとって、とても動きやすい誘導だったと言っているだけですよ」

 やって来たファルティア様に最初に話しかけたのは、ナーゼルさんだった。
 彼はとても穏やかに、聖女に話しかけている。不満の類は、一切表に出していない。その辺りは流石だ。
 それを見抜いてかどうかはわからないが、ファルティア様は不満そうにしている。彼女は、いつもそんな感じだ。

「それで、あなた達は一体何の話をしていたのですか?」
「世間話ですよ。ファルティア様が言った通り、無駄話でしかありません」
「本当でしょうか? まさかとは思いますが、私に対する愚痴を口にしていたのではないでしょうね?」
「滅相もございません」

 ファルティア様の疑念を、ナーゼルさんは飄々と躱していた。
 ナーゼルさんは魔法使いとしても当然優秀だが、こういう時にもとても頼りになる人だ。
 ただ、ファルティア様は疑念を持って、バルトンさんの方を見ている。先程の会話を聞いていた訳ではないだろうが、彼の不満を少しは悟っているということだろう。

「……老いぼれがいつまでも醜く縋りつくなんて、みっともないとは思わないのでしょうか?」
「……何?」
「くだらない誇りなんて、時代遅れだとも気付いていない。ロートルがいますね……ええ、バルトンさん、あなたのことです」

 そこでファルティア様は、バルトンさんの方に矛先を向けた。
 もしかしたら、最初から狙いは彼だったのかもしれない。ファルティア様は、ナーゼルさんを押しのけてバルトンさんの方へと向かっていく。

「王国も最近は経費削減のために動いているのです。聖女の親衛隊も数が多すぎると指摘されることがありますからね。何人かやめていただきたいのですけれど」
「……私にやめろと仰っているのですか?」
「そういう訳ではありませんよ。ただ、引き際は弁えた方がいいと言っているだけです」

 ファルティア様は、自分に大きな不満を持っているバルトンさんを排除したいのだろう。
 しかし彼は古参の実力者であり、国王様からの信頼も厚い。そう簡単に揺るがない地位にいるのだ。

「まあただ、あなたがやめないと若き有望な者達が割を食うことになってしまいますよ」
「それは……」

 故に彼女は、バルトンさんを年齢の面で追い詰めようとしている。やめられない理由を持つ彼が、ああ言われたら年長者であるが故に、率先してやめようとするかもしれない。実に狡猾で、嫌らしいやり方だ。

「ああ、でもその前に一つ言っておかなければならないことがあります。アメリアさん、あなたはクビです」
「……え?」

 そこで私は、固まってしまった。
 ファルティア様からの突然の宣告、それに思考が追いつかなかったのだ。
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