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68.さらに昔の
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「調査魔法……スキャン」
ディゾール様は、古い資料に向かって魔法を使った。
その直後、彼は少し驚いたような表情になる。どうやら、この資料には何か予想外の秘密が隠されているようだ。
「生徒会長、どうしたんだい?」
「……どうやら、俺達は大きな勘違いをしていたようだ。この資料が作られたのは、シャザームが生きていた時代より昔だ」
「……なんだって?」
ディゾール様の言葉に、私達は驚いていた。この資料が、暗黒の魔女が生きていた時代よりも前に作られている。それは、どういうことなのだろうか。
彼女は、魂奪取魔法の開発者とされている。それなのに、この魂奪取魔法が示された資料は、彼女が生きていた時代よりも前に作られたもの。それが示していることは、ただ一つだ。
「まさか、魂奪取魔法を作ったのは、シャザームではないの?」
「……状況から考えると、そうなるね。暗黒の魔女は、この資料を見つけた。そして、自らが開発者だと公言した。そういうことなんだろう」
ディゾール様の言う通り、私達は大きな勘違いをしていたようである。
彼女は、偶々この資料を見つけて、開発者になった。それが、真実だったのだ。
「まあ、でも、そういうことは稀にあることだよ。いいことではないけどね」
「そうなのね……」
キャロムは、魔法の開発者である。そのため、その辺りの事情はよく知っているのだろう。
自分が見つけた資料に書いてある未発見の魔法を、自らが開発したとする。それは、確かにあり得そうなことだ。
「でも、これを書いたのは一体誰なのかしら?」
「さあ、それはわからないな……ああ、でも、もしかしたら著名な人かもしれない。魔法の開発者って、結構複数の魔法を開発していたりするから」
「そういうものなのね……」
これが誰が書いたものかは、少し気になる。
キャロムの言う通り、著名人が書いたのかもしれない。しかし、無名の者が書いた可能性もない訳ではないだろう。
ただ、それは単純に興味の問題である。今、それを深く考える必要はないだろう。
「……というか、キャロムはこれを予測していたの?」
「え? ああ、まあね。もしかしたら、そうかもしれないとは思ったよ。古い資料だったし……」
「流石ね……」
「いや、別にそんなことはないよ」
私の賞賛に、キャロムは謙遜した。
その様子を、私はなんだかおかしく思う。少し前のキャロムだったら、ここで当たり前だとか答えていたのではないかとそう思ったからだ。
「さて、まあ、とりあえず、それは置ておいて、魂を結合する魔法に関する資料を探そうか。僕達の目下の問題は、それだからね」
「ええ、そうしましょうか」
キャロムの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして、私達はシャザームの研究室の探索を続けるのだった。
ディゾール様は、古い資料に向かって魔法を使った。
その直後、彼は少し驚いたような表情になる。どうやら、この資料には何か予想外の秘密が隠されているようだ。
「生徒会長、どうしたんだい?」
「……どうやら、俺達は大きな勘違いをしていたようだ。この資料が作られたのは、シャザームが生きていた時代より昔だ」
「……なんだって?」
ディゾール様の言葉に、私達は驚いていた。この資料が、暗黒の魔女が生きていた時代よりも前に作られている。それは、どういうことなのだろうか。
彼女は、魂奪取魔法の開発者とされている。それなのに、この魂奪取魔法が示された資料は、彼女が生きていた時代よりも前に作られたもの。それが示していることは、ただ一つだ。
「まさか、魂奪取魔法を作ったのは、シャザームではないの?」
「……状況から考えると、そうなるね。暗黒の魔女は、この資料を見つけた。そして、自らが開発者だと公言した。そういうことなんだろう」
ディゾール様の言う通り、私達は大きな勘違いをしていたようである。
彼女は、偶々この資料を見つけて、開発者になった。それが、真実だったのだ。
「まあ、でも、そういうことは稀にあることだよ。いいことではないけどね」
「そうなのね……」
キャロムは、魔法の開発者である。そのため、その辺りの事情はよく知っているのだろう。
自分が見つけた資料に書いてある未発見の魔法を、自らが開発したとする。それは、確かにあり得そうなことだ。
「でも、これを書いたのは一体誰なのかしら?」
「さあ、それはわからないな……ああ、でも、もしかしたら著名な人かもしれない。魔法の開発者って、結構複数の魔法を開発していたりするから」
「そういうものなのね……」
これが誰が書いたものかは、少し気になる。
キャロムの言う通り、著名人が書いたのかもしれない。しかし、無名の者が書いた可能性もない訳ではないだろう。
ただ、それは単純に興味の問題である。今、それを深く考える必要はないだろう。
「……というか、キャロムはこれを予測していたの?」
「え? ああ、まあね。もしかしたら、そうかもしれないとは思ったよ。古い資料だったし……」
「流石ね……」
「いや、別にそんなことはないよ」
私の賞賛に、キャロムは謙遜した。
その様子を、私はなんだかおかしく思う。少し前のキャロムだったら、ここで当たり前だとか答えていたのではないかとそう思ったからだ。
「さて、まあ、とりあえず、それは置ておいて、魂を結合する魔法に関する資料を探そうか。僕達の目下の問題は、それだからね」
「ええ、そうしましょうか」
キャロムの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして、私達はシャザームの研究室の探索を続けるのだった。
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