派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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69.取り戻せたもの

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 アルフィア達がシャザームの研究室を探索しているのと同じ時、メルティナはドルラーン侯爵家の屋敷に来ていた。
 彼女の目的は、リオーブの姉であるリリシアを元に戻すことだ。という訳で、メルティナはリリシアの部屋まで来ている。

「姉貴、いよいよ元に戻れるぞ……」

 リオーブは、ゆっくりと姉にそう語りかけた。その姿を見て、メルティナは考える。彼は今まで、どれ程苦しんできたのだろうかと。
 時が巻き戻る前から、彼は苦しんでいた。それを考えると、心が痛んだ。だから、メルティナは必ず彼女を元に戻さなければならないと、改めて決意を固めるのだった。

「さて、リオーブ様、それではあなたの中からリリシア様の魂を取り出します」
「ああ、頼む」
「はい……ソウルキャッチャー」

 メルティナは、リオーブに手をかざして、彼の中から魂を探り出す。以前見たことがあるため、魂はすぐに見つかった。
 その魂を、メルティナはゆっくりと引き抜いていく。

「これが、姉貴の魂……」
「はい、今からこの魂をリリシア様の体に入れます」
「あ、ああ……」

 メルティナは取り出した魂を、リリシアの中に入れる。特に抵抗もなく、魂は彼女の中に入っていく。

「んっ……」
「あ、姉貴? 目覚めたのか?」
「リオーブ? あれ? 私……」

 リリシアは、ゆっくりと目を覚ました。彼女は、少し驚いたような顔をしている。自分が元に戻ったことに困惑しているようだ。
 リリシアは、自分の体の調子を確かめるように動かしている。その直後、彼女の表情はあかるいものへと変化する。

「すごい! 私、元の体に戻ってる!」
「あ、姉貴?」

 次の瞬間、リリシアは歩み寄っていたリオーブを抱きしめた。
 その様子に、今度はメルティナが驚くことになる。想像していたよりも、リリシアという女性が活発な性格だったからだ。

「あ、でも、私の体、少し大きくなっているね? なんだか、少し変な感じ……」
「そ、それは成長しているからな……というか、姉貴、姉貴は一体現状をどこまで把握しているんだ?」
「え? ああ、リオーブの中から見ていたから、大体のことは知っているよ。でも、なんだか意識が薄っすらとしていたから、覚えていない部分もあるかも……」
「そ、そうか……」

 リリシアの言葉で、メルティナは気づいた。彼女の精神年齢は、十歳で止まっているのだと。
 リオーブの中から見ていたとはいえ、その精神は成長していないのだろう。

「というか、リオーブも変わったよね? 大きくなったし……私のことお姉ちゃんって、呼ばなくなった」
「い、いや、それは……」

 メルティナは、リリシアのことに対して悲しみを覚えていた。暗黒の魔女のせいで、彼女は時間を失った。それは、とても悲しいことだとそう思ったのだ。
 だが、それでも、目の前の彼女は笑っている。その笑顔をせめて無事に取り戻せたことはよかったと、メルティナはそう思うのだった。
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