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118.暗黒の魔女再び
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「かなり、こっちに近づいているみたいだね?」
「ええ、そのようですね……」
寮の下にゆっくりと降り立った私達は、迫ってきている岩の巨人の方に向かって行った。
彼らは、ゆっくりとこちらに歩いてきている。その足音は、すごい音だ。それは恐らく、彼らが同じ動きで、歩いているからなのだろう。
『……ふふ、まさかそちらから出て来てくれるとはね』
「え?」
「これは……」
次の瞬間、私の頭に声が響いてきた。
その声は、聞いたことがある声だ。忘れもしない、あの暗黒の魔女の声である。
「シャザーム……」
『……あなたは、アルフィアの中にいた魂ね。初めましてというべきかしら?』
「……シャザーム、最早そう呼ぶ必要もないのかもしれませんね。あなたの本当の名前は、ネルメア。そうなのでしょう?」
『ふふ、もう隠す必要もないわね……ええ、私の名前はネルメア。偉大なる英雄、オルディネスの妻……』
メルティナの質問に、シャザーム改めネルメアは素直に答えた。今まで陰謀を巡らせていた彼女にしては、やけに素直だ。何か心境に変化でもあったのだろうか。
「あなたがこうして直接出てきたということは、これが最後の戦いということですね?」
『ええ、その通りよ。最早、私に残されているのは、このゴーレム達のみ。残っている魔力では、新たに生成するのも難しい……だからこそ、ここであなた達を排除して、私は計画を完遂する!』
ネルメアは、雄叫びをあげるかのように宣言した。それは、彼女の覚悟の表れでもあるのだろう。
彼女には、もう手札がない。不退転の覚悟で、この戦いに臨んでいるのだ。
だからこそ、ここまで素直なのだろう。後に引けない彼女にとって、この戦いはどちらかが滅びるものだ。
つまり、隠す必要はない。勝てば私達は消え、負ければ自分が消えるのだから。
『手加減なんてしない。最初から、全力で叩き潰す! 行け! 私のゴーレム達よ!』
「メルティナ、来るみたいだよ。なんというか、すごいのが……」
「ええ、そのようですね……」
暗黒の魔女の言葉とともに、二体のゴーレムがこちらに向かって飛び上って来た。
その巨体が宙を舞うという光景は、なんとも恐ろしいものである。
だが、ここで怖がっていては始まらない。私達は今から、あれと戦わなければならないのだ。
『見せてあげるわ。これこそ、ゴーレムの最高峰の使い方……』
「え?」
「なっ……」
そこで、ゴーレムの内一体が動いた。空中で、もう一体のゴーレムの体にその拳を叩きつけたのである。
その瞬間、もう一体のゴーレムの体は破壊される。それら、岩の破片となってしまったのだ。
ゴーレムが一体破壊されたのは、私達にとってはいいことのように思える。だが、そうではない。あのゴーレムの破片は、私達の頭上にある。それは、とてもまずいことだ。
『岩の雨の餌食になるがいい!』
私達の元へ、岩が降り注いでくる。周りに逃げ場はない。私達は、空から降る無数の岩をここで受け止めなければならないのだ。
「ええ、そのようですね……」
寮の下にゆっくりと降り立った私達は、迫ってきている岩の巨人の方に向かって行った。
彼らは、ゆっくりとこちらに歩いてきている。その足音は、すごい音だ。それは恐らく、彼らが同じ動きで、歩いているからなのだろう。
『……ふふ、まさかそちらから出て来てくれるとはね』
「え?」
「これは……」
次の瞬間、私の頭に声が響いてきた。
その声は、聞いたことがある声だ。忘れもしない、あの暗黒の魔女の声である。
「シャザーム……」
『……あなたは、アルフィアの中にいた魂ね。初めましてというべきかしら?』
「……シャザーム、最早そう呼ぶ必要もないのかもしれませんね。あなたの本当の名前は、ネルメア。そうなのでしょう?」
『ふふ、もう隠す必要もないわね……ええ、私の名前はネルメア。偉大なる英雄、オルディネスの妻……』
メルティナの質問に、シャザーム改めネルメアは素直に答えた。今まで陰謀を巡らせていた彼女にしては、やけに素直だ。何か心境に変化でもあったのだろうか。
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『ええ、その通りよ。最早、私に残されているのは、このゴーレム達のみ。残っている魔力では、新たに生成するのも難しい……だからこそ、ここであなた達を排除して、私は計画を完遂する!』
ネルメアは、雄叫びをあげるかのように宣言した。それは、彼女の覚悟の表れでもあるのだろう。
彼女には、もう手札がない。不退転の覚悟で、この戦いに臨んでいるのだ。
だからこそ、ここまで素直なのだろう。後に引けない彼女にとって、この戦いはどちらかが滅びるものだ。
つまり、隠す必要はない。勝てば私達は消え、負ければ自分が消えるのだから。
『手加減なんてしない。最初から、全力で叩き潰す! 行け! 私のゴーレム達よ!』
「メルティナ、来るみたいだよ。なんというか、すごいのが……」
「ええ、そのようですね……」
暗黒の魔女の言葉とともに、二体のゴーレムがこちらに向かって飛び上って来た。
その巨体が宙を舞うという光景は、なんとも恐ろしいものである。
だが、ここで怖がっていては始まらない。私達は今から、あれと戦わなければならないのだ。
『見せてあげるわ。これこそ、ゴーレムの最高峰の使い方……』
「え?」
「なっ……」
そこで、ゴーレムの内一体が動いた。空中で、もう一体のゴーレムの体にその拳を叩きつけたのである。
その瞬間、もう一体のゴーレムの体は破壊される。それら、岩の破片となってしまったのだ。
ゴーレムが一体破壊されたのは、私達にとってはいいことのように思える。だが、そうではない。あのゴーレムの破片は、私達の頭上にある。それは、とてもまずいことだ。
『岩の雨の餌食になるがいい!』
私達の元へ、岩が降り注いでくる。周りに逃げ場はない。私達は、空から降る無数の岩をここで受け止めなければならないのだ。
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