おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗

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2.割り切った関係

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「悪いが、俺にまともな夫婦関係を求められても困る」

 初めてアルフェルグ様と対面した時、私はそのようなことを言われた。
 当然のことながら、面食らった。そんなことを言われるなんて、思ってもいなかったことだからだ。
 目の前にいる鋭い目つきの男性は、真っ直ぐにこちらを見つめていた。その真摯な視線からは、彼が本気であることだけは伝わってきたので、尚困る。

「……それは、どういうことですか? 言葉の意図を計りかねます」
「君との間に愛が芽生えることはないということだ。結婚するということは、家族になることだと認識しているが、俺にそれを求められても困る」
「困るのですか?」
「俺は凡そまともな家族というものを知らないからな。君も俺の出自については知っているだろう。それに伴う関係も」

 アルフェルグ様からの質問は、非常に答えにくいものだった。
 もちろん、彼の事情は理解している。結婚するにあたって、それは知っておかなければならなかったことだ。
 ただ、それは面と向かって本人に言いやすいことではない。当然のことながら、口をつぐんでしまう。

「家族というものを俺は信用することができない。それよりも利益による関係の方が信頼できる。そういう意味で、俺と君はビジネスライクな関係でいてもらいたい」
「なるほど、あなたの要求はよくわかりました」

 私はアルフェルグ様の意図を理解して、ゆっくりと頷いた。
 貴族の世界では、そういう夫婦は珍しいという訳ではない。割り切った関係とでもいうのだろうか。

 そうなりたい理由も、理解することができない訳ではなかった。
 その境遇もあって、彼は家族関係に関して、嫌なことを様々経験している。彼が妻を素直に受け入れることができないなんて、当たり前のことだ。
 それは私にとっては、幾分か悲しいことではあった。ただ別に、彼の要求を受け入れられない程に結婚に憧れがある訳でもない。

「もちろん、あなたがそういう関係を望むというなら、それでも構いません。でも、お互いに敵意がないというなら特別敵対する必要もないでしょう」
「ああ、それは俺もわかっている。むしろその点に関しては、こちらから頼みたい。対外的に、俺達は良き夫婦でいたいと思っている。俺も辛い立場だ。少しでも評価は上げたい」
「良き夫婦を演じるということですか?」
「そうお願いしたい。もちろん、見返りは用意しよう。そちらの要求に、俺はなるべく応えるつもりだ」

 私とアルフェルグ様の関係は、そこから始まった。
 私達は割り切った考え方で、良き夫婦になることを選んだのだ。
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