私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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5.家との決別

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「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
「な、なんだと……」

 私の言葉に驚愕して固まっているお父様を見るのは、少しばかり気分が良かった。
 とはいえ、その思考は中々に理解できないものである。私がいつかはそのようなことを言うと、今まで思ってこなかったのだろうか。色々とひどいことを言ってきたというのに。

「お前、本気で言っているのか? アンデルト伯爵家から出て行って、お前が生きていけると思っているのか? お前などという人間は、貴族の名の元に生かされているだけなのだぞ!」
「何を言われようとも考えは変わりません。大体、いらないと言ったのはお父様ではありませんか。それを今更、曲げようと言うのですか?」
「むぐっ、それは……」

 お父様は、言葉を詰まらせていた。
 自分が矛盾したことを言っているということを、理解したからだろう。
 結局の所、お父様は本気ではなかったのだ。私を追い出すつもりなんて、最初からなかったのだろう。罵倒して悦に浸りたいだけなのだ。

 お父様はそうやって、ずっとお母様の影を追っているということなのかもしれない。
 しかしそれでも、なんとも馬鹿げた話だ。お父様はお母様を貶すことでしか縛り付けられない。愛と呼ぶにはあまりにも醜い感情である。

 お母様はきっと、苦痛の日々を送っていたのだろう。
 メイドとしてこのアンデルト伯爵家に仕えることは、幸福ではなかったはずである。もちろん、私を授かったことも不幸だったしか言いようがない。

「私が言葉を曲げるはずがないだろう」

 プライドが高いお父様は、私に言いくるめられるということを良しとしなかった。
 そうやって、小さい所もお父様の短所であるといえる。ただそれは、こちらとしては大いに利用できることだった。お父様を操ることは、私にとっては案外容易いことなのかもしれない。

「お前はアンデルト伯爵家には必要がない人間だ。私はお前を追い出してやる……に、二度と、二度とこの屋敷の門をくぐることは許さん……許さんぞ!」

 お父様は、明らかに虚勢を張っていた。
 本当は私のことを手放したくないのだろう。それがその表情や言葉からは伝わってきた。
 だがそれも、私にとっては不愉快なことだ。お父様からの執着なんて、嬉しいものではない。むしろ気分が悪くなってくる。

 こんな屋敷には、いつまでもいるものではない。
 そう思いながら、私はお父様に背を向ける。これは私が踏み出す大きな一歩だ。私はやっと、アンデルト伯爵家の呪縛から抜け出すことができるのかもしれない。
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