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8.異様な雰囲気
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お父様の部屋に佇んでいるブレットンさんの雰囲気は、異様なものであった。
いつもの彼らしくない怖い雰囲気に、私は少し気圧されていた。体がちっとも動かない。私は慣れ親しんでいるはずのブレットンさんに、恐怖を覚えているようだ。
「……アルティリアお嬢様?」
私のことを今の今まで認識していなかったのか、ブレットンさんは目を丸めていた。
彼の雰囲気は、そこでかなり和らいだ。いつも通りの彼に、私は少し安心する。
ただそこで私は、思い出すことになった。そもそもどうしてここに来たのかを。
私はお父様の叫びを聞いてここに来たのである。叫びをあげるということは、何かがあったということだ。私は周囲を見渡してお父様を探す。
「お父様……」
当然と言えば当然のことだが、お父様はすぐに見つかった。
ブレットンさんの足元に、お父様は寝転がっている。その体からは、力が感じられない。
私はゆっくりと息を呑んで、再びブレットンさんの方に視線を向ける。すると、彼の手に握られている銀色の刃に目が行った。
「ブレットンさん、あなたがやったのですか?」
「……ええ」
私の言葉に対して、ブレットンさんは端的な返答をしてきた。
それは単純明快で、何よりもわかりやすい返答だ。ブレットンさんは、お父様を刺したのである。それも恐らく、明確な殺意を持って。
それは私にとって、信じられないことであった。あの温厚なブレットンさんが、どうしてお父様のことを刺すのか、それがまったくわからない。
「アルティリアお嬢様は、すぐにここからお離れください。叫びを聞いた誰かが、すぐにこちらに駆けつけてきます。その前にあなたは屋敷を離れておくべきです。そうしなければ、面倒事に巻き込まれてしまう」
「ブレットンさん、私はあなたがこんなことをした理由を聞きたいと思っています」
「お話しすべきことなど、何もありはしません……と言っても、納得してはいただけませんか。こちらをお受け取り下さい」
「それは……」
ブレットンさんは、ナイフをお父様の傍に丁寧に置いた後、私に近づいて来た。
その手には、懐から取り出した封筒のようなものが握られている。手紙ということだろうか。私はとりあえずそれを受け取っておく。
「さあ、お嬢様は早くお逃げください。今は時間がないのですから」
「ブレットンさん……また、会えますよね?」
「……ええ、もちろんですとも」
ブレットンさんには、不思議な圧があった。
今は彼の言葉に従わなければならないと、そう思ってしまう。
ただ気掛かりなのは、これが今生の別れなのではないかということだ。それはなんだか、すごく嫌だった。
そんな風に後ろ髪を引かれながらも、私はその場を後にするのだった。
いつもの彼らしくない怖い雰囲気に、私は少し気圧されていた。体がちっとも動かない。私は慣れ親しんでいるはずのブレットンさんに、恐怖を覚えているようだ。
「……アルティリアお嬢様?」
私のことを今の今まで認識していなかったのか、ブレットンさんは目を丸めていた。
彼の雰囲気は、そこでかなり和らいだ。いつも通りの彼に、私は少し安心する。
ただそこで私は、思い出すことになった。そもそもどうしてここに来たのかを。
私はお父様の叫びを聞いてここに来たのである。叫びをあげるということは、何かがあったということだ。私は周囲を見渡してお父様を探す。
「お父様……」
当然と言えば当然のことだが、お父様はすぐに見つかった。
ブレットンさんの足元に、お父様は寝転がっている。その体からは、力が感じられない。
私はゆっくりと息を呑んで、再びブレットンさんの方に視線を向ける。すると、彼の手に握られている銀色の刃に目が行った。
「ブレットンさん、あなたがやったのですか?」
「……ええ」
私の言葉に対して、ブレットンさんは端的な返答をしてきた。
それは単純明快で、何よりもわかりやすい返答だ。ブレットンさんは、お父様を刺したのである。それも恐らく、明確な殺意を持って。
それは私にとって、信じられないことであった。あの温厚なブレットンさんが、どうしてお父様のことを刺すのか、それがまったくわからない。
「アルティリアお嬢様は、すぐにここからお離れください。叫びを聞いた誰かが、すぐにこちらに駆けつけてきます。その前にあなたは屋敷を離れておくべきです。そうしなければ、面倒事に巻き込まれてしまう」
「ブレットンさん、私はあなたがこんなことをした理由を聞きたいと思っています」
「お話しすべきことなど、何もありはしません……と言っても、納得してはいただけませんか。こちらをお受け取り下さい」
「それは……」
ブレットンさんは、ナイフをお父様の傍に丁寧に置いた後、私に近づいて来た。
その手には、懐から取り出した封筒のようなものが握られている。手紙ということだろうか。私はとりあえずそれを受け取っておく。
「さあ、お嬢様は早くお逃げください。今は時間がないのですから」
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今は彼の言葉に従わなければならないと、そう思ってしまう。
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そんな風に後ろ髪を引かれながらも、私はその場を後にするのだった。
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