15 / 40
15.辺境伯の息子
しおりを挟む
「……父上の代わりなんて、気は進まないが、仕方ないことなのだろうな」
私は、馬車で対面して座っている男性の顔を見た。
その男性は、グライム辺境伯とよく似ている。それは当然のことだ。彼は辺境伯のご子息なのだから。
グライム辺境伯の次男であるギーゼル様は、今回の件に乗り気という訳でもないようだ。
彼にはブレットンさんとの交流はそれ程ないだろうし、それは当然のことだといえる。しかしながら、グライム辺境伯が自ら出向くという訳にもいかないらしく、彼に白羽の矢が立ったのだ。
「ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」
「いや、あなたが謝る必要があることではないさ。もっとも、俺はヴォルバルト氏――ブレットンだったか? いや、どちらにしてもその人に関する認識というものが薄い。父上の友人と言われても、そんなに肩入れできる訳ではないというのが正直な所だ」
ギーゼル様は、ブレットンさんが私のお父様を手にかけた、という事実に関して、色々と思う所があるらしい。
それも当然のことなので、私は返答に詰まってしまった。言い返す言葉もない。それでも、私にとって大切な人であるということは変わらないのだが。
「……気を悪くさせてしまったなら、申し訳ない」
「え?」
「ただ、俺の考えというものはきちんと伝えておかなければならないと思っている。これからしばらくの間、一緒に行動する訳だしな。認識の齟齬があってはならないと思っている」
黙った私に対して、ギーゼル様は予想していなかったことを言ってきた。
その言葉によって、私は理解する。彼は正直者なのだ。体裁ばかり気にする貴族としては珍しいことだが、真っ直ぐな人なのかもしれない。
「俺個人としては、ブレットン氏のことを擁護しようとは思っていない。同情の余地はあると思っているが、それだけだ。この国の法から考えると、彼はあくまでも殺人者ということになる。俺はまだそれを受け入れられる器じゃない。少なくとも今は、肩入れできない」
「……」
「しかしだ、父上の代理としてここに立っている以上、父上の気持ちに従うつもりだ。単純な話ではあるが、その方が俺も動きやすいしな。今回の件で、うだうだと考えるつもりはない。それは無駄なことだからだ」
「……ふふっ」
「え? なんで笑うんだ?」
ギーゼル様の言葉に、私は思わず笑ってしまった。
彼という人間がどこまでも真っ直ぐであるということが、よくわかったからだ。
しかしそういう風に割り切ってもらえているのは、ありがたい限りである。これで私も心おきなく、行動することができそうだ。
私は、馬車で対面して座っている男性の顔を見た。
その男性は、グライム辺境伯とよく似ている。それは当然のことだ。彼は辺境伯のご子息なのだから。
グライム辺境伯の次男であるギーゼル様は、今回の件に乗り気という訳でもないようだ。
彼にはブレットンさんとの交流はそれ程ないだろうし、それは当然のことだといえる。しかしながら、グライム辺境伯が自ら出向くという訳にもいかないらしく、彼に白羽の矢が立ったのだ。
「ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません」
「いや、あなたが謝る必要があることではないさ。もっとも、俺はヴォルバルト氏――ブレットンだったか? いや、どちらにしてもその人に関する認識というものが薄い。父上の友人と言われても、そんなに肩入れできる訳ではないというのが正直な所だ」
ギーゼル様は、ブレットンさんが私のお父様を手にかけた、という事実に関して、色々と思う所があるらしい。
それも当然のことなので、私は返答に詰まってしまった。言い返す言葉もない。それでも、私にとって大切な人であるということは変わらないのだが。
「……気を悪くさせてしまったなら、申し訳ない」
「え?」
「ただ、俺の考えというものはきちんと伝えておかなければならないと思っている。これからしばらくの間、一緒に行動する訳だしな。認識の齟齬があってはならないと思っている」
黙った私に対して、ギーゼル様は予想していなかったことを言ってきた。
その言葉によって、私は理解する。彼は正直者なのだ。体裁ばかり気にする貴族としては珍しいことだが、真っ直ぐな人なのかもしれない。
「俺個人としては、ブレットン氏のことを擁護しようとは思っていない。同情の余地はあると思っているが、それだけだ。この国の法から考えると、彼はあくまでも殺人者ということになる。俺はまだそれを受け入れられる器じゃない。少なくとも今は、肩入れできない」
「……」
「しかしだ、父上の代理としてここに立っている以上、父上の気持ちに従うつもりだ。単純な話ではあるが、その方が俺も動きやすいしな。今回の件で、うだうだと考えるつもりはない。それは無駄なことだからだ」
「……ふふっ」
「え? なんで笑うんだ?」
ギーゼル様の言葉に、私は思わず笑ってしまった。
彼という人間がどこまでも真っ直ぐであるということが、よくわかったからだ。
しかしそういう風に割り切ってもらえているのは、ありがたい限りである。これで私も心おきなく、行動することができそうだ。
560
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
愛する寵姫と国を捨てて逃げた貴方が何故ここに?
ましゅぺちーの
恋愛
シュベール王国では寵姫にのめり込み、政を疎かにする王がいた。
そんな愚かな王に人々の怒りは限界に達し、反乱が起きた。
反乱がおきると真っ先に王は愛する寵姫を連れ、国を捨てて逃げた。
城に残った王妃は処刑を覚悟していたが今までの功績により無罪放免となり、王妃はその後女王として即位した。
その数年後、女王となった王妃の元へやってきたのは王妃の元夫であり、シュベール王国の元王だった。
愛する寵姫と国を捨てて逃げた貴方が何故ここにいるのですか?
全14話。番外編ありです。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
旦那様、本当によろしいのですか?【完結】
翔千
恋愛
ロロビア王国、アークライド公爵家の娘ロザリア・ミラ・アークライドは夫のファーガスと結婚し、順風満帆の結婚生活・・・・・とは言い難い生活を送って来た。
なかなか子供を授かれず、夫はいつしかロザリアにに無関心なり、義母には子供が授からないことを責められていた。
そんな毎日をロザリアは笑顔で受け流していた。そんな、ある日、
「今日から愛しのサンドラがこの屋敷に住むから、お前は出て行け」
突然夫にそう告げられた。
夫の隣には豊満ボディの美人さんと嘲るように笑う義母。
理由も理不尽。だが、ロザリアは、
「旦那様、本当によろしいのですか?」
そういつもの微笑みを浮かべていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる