私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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14.覚悟などは

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「……戦士として、ヴォルバルトは覚悟している」

 それなりの沈黙の後、グライム辺境伯は重たい口を開いた。
 その口から出た言葉に、私は唇を噛む。それが私にとって、最も恐れていたことだからだ。
 ブレットンさんは、その罪を自らの手で清算するつもりなのだろう。様々なものをお父様に奪われた彼は、覚悟を決めていたのかもしれない。

「グライム辺境伯、あなたにこういったことを言うのは少し気が引けます。ですが、それでも言わせてください。そんなものは下らない覚悟であると……」
「アルティリア嬢……」
「私は……ずっと一人きりなのだと思っていました。実の父親は私に冷たく、母と呼ぶべき人や腹違いの妹も私を受け入れはしませんでした。だけれど、私にはまだたった一人家族と呼ぶことができる人がいます」

 思い返してみると、ブレットンさんは私に温かい目を向けていた。
 それはきっと、私のことを孫のように思ってくれていたからだろう。
 私はそれを長らく理解していなかった。だけど今は知っている。その繋がりは、希薄なものではないということを。

 だからこそ、ブレットンさんの選択を許すことはできなかった。
 まだ、私はこうしてここにいる。そんな私を残してこの世を去ろうなんて、勝手だ。私はまだ、今まで良くしてくれた感謝も伝えられていないというのに。

「……つい最近の話ではあるが、息子に孫ができた」
「え?」
「長男の子供だ。可愛いものでな。これでも厳格な父親をやってきたつもりだったが、息子達からは笑われている」

 グライム辺境伯は、そこで表情を暗くした。
 どうやら彼も、ブレットンさんの選択というものを快く思っている訳ではないらしい。それはもしかしたら、いや間違いなく、孫を持ったことによって心境が変化したということなのだろう。

「もちろん、私なんてヴォルバルトに比べればまだまだ若輩者だ。完璧に彼の気持ちを理解できるという訳ではない。だが、君という存在を見ていると思う。彼が決して、何の未練もなく旅立てる訳ではないということが……」
「グライム辺境伯、あなたは……」
「やはり止めるべきだ。私も随分と耄碌したものだ。君に言われるまで気付けなかったことが恥ずかしい。すぐに馬車を手配しよう。君のことは、グライム辺境伯の名の元に守る。どうか私の友を止めてくれ。今ならまだ、間に合うはずだ」

 私は、グライム辺境伯の言葉に頷いた。
 迷いなんてものはない。私はもう一度ブレットンさんと話をつけるために、あの忌まわしき屋敷へと足を運ぶことを決めた。
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