13 / 40
13.歓喜する辺境伯
しおりを挟む
「アルティリア嬢、どうなのだ? ヴォルバルト――いや、ここは敢えてブレットンと呼ぼう。彼はやったのか? やり遂げたのか?」
「……諸悪の根源を断ち切ったという意味ならば、彼はやり遂げたといえるでしょうね」
「……そうか!」
私の少し曖昧な返答に対して、グライム辺境伯は笑顔を浮かべていた。言わんとしていることは、理解してくれたようだ。
ただ、本来であれば、それは許されるようなことではない。しかし、私も気持ちは同じだった。お父様は悪魔だ。少なくとも母親と父親になるはずだった人を奪われた私は、そう言ってもいいだろう。
「立場上、直接的に手を貸す訳にもいかなかったが……流石はヴォルバルトだ。彼ならば必ずやり遂げられるとは思っていたが、やはり嬉しいものだな。祝杯でもあげたい気分だ」
「それは流石に、不謹慎かと」
「ふむ、それもそうではあるな」
グライム辺境伯の喜びようは、異様であるとも思えた。
それは戦地で築いた友情というものを、私が正しく理解できていないからだろうか。
いや、お父様のことだ。私が知らない悪事も働いていたに違いない。その辺りの認識の違いが、グライム辺境伯の反応には現れているのではないだろうか。
「さてと、それで君のことだが……」
「あ、えっと……」
「ヴォルバルトは、私に対してそれ程何かを望んではいなかった。手を貸すと言っても、拒否していたくらいだ。しかし、そんな彼が唯一私に頼んできたことがある。それが他ならぬ君のことだ。何かあったら保護してもらいたいと、頼まれている」
「お世話になっても、よろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。遠慮する必要などはない。むしろこちらから頼みたいくらいだ。今回の件で、私はヴォルバルトをほとんど手助けできていないからな」
グライム辺境伯を頼ることについて、私は遠慮しようとは思っていなかった。
行き場なんてどこにもない私がこのままどこかに行っても、野垂れ死ぬのが関の山だろう。
当然のことながら命は惜しいため、ここはブレットンさんに感謝しながら助力を得ることにする。ただ、私にはもう一つ気になっていることがあった。
「ブレットンさんは、どうなるのでしょうか?」
「む……」
「私は、あの悪魔を手にかけたブレットンさんがどうするのかを考えていました。その結果は、良いものであるとは言い難いと思うのですが……」
私の言葉に対して、グライム辺境伯は目を瞑った。
その思案が、私にとっては答えに等しい。ブレットンさんは、これで終わっても良いという覚悟で、ことに臨んだのだろう。
「……諸悪の根源を断ち切ったという意味ならば、彼はやり遂げたといえるでしょうね」
「……そうか!」
私の少し曖昧な返答に対して、グライム辺境伯は笑顔を浮かべていた。言わんとしていることは、理解してくれたようだ。
ただ、本来であれば、それは許されるようなことではない。しかし、私も気持ちは同じだった。お父様は悪魔だ。少なくとも母親と父親になるはずだった人を奪われた私は、そう言ってもいいだろう。
「立場上、直接的に手を貸す訳にもいかなかったが……流石はヴォルバルトだ。彼ならば必ずやり遂げられるとは思っていたが、やはり嬉しいものだな。祝杯でもあげたい気分だ」
「それは流石に、不謹慎かと」
「ふむ、それもそうではあるな」
グライム辺境伯の喜びようは、異様であるとも思えた。
それは戦地で築いた友情というものを、私が正しく理解できていないからだろうか。
いや、お父様のことだ。私が知らない悪事も働いていたに違いない。その辺りの認識の違いが、グライム辺境伯の反応には現れているのではないだろうか。
「さてと、それで君のことだが……」
「あ、えっと……」
「ヴォルバルトは、私に対してそれ程何かを望んではいなかった。手を貸すと言っても、拒否していたくらいだ。しかし、そんな彼が唯一私に頼んできたことがある。それが他ならぬ君のことだ。何かあったら保護してもらいたいと、頼まれている」
「お世話になっても、よろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。遠慮する必要などはない。むしろこちらから頼みたいくらいだ。今回の件で、私はヴォルバルトをほとんど手助けできていないからな」
グライム辺境伯を頼ることについて、私は遠慮しようとは思っていなかった。
行き場なんてどこにもない私がこのままどこかに行っても、野垂れ死ぬのが関の山だろう。
当然のことながら命は惜しいため、ここはブレットンさんに感謝しながら助力を得ることにする。ただ、私にはもう一つ気になっていることがあった。
「ブレットンさんは、どうなるのでしょうか?」
「む……」
「私は、あの悪魔を手にかけたブレットンさんがどうするのかを考えていました。その結果は、良いものであるとは言い難いと思うのですが……」
私の言葉に対して、グライム辺境伯は目を瞑った。
その思案が、私にとっては答えに等しい。ブレットンさんは、これで終わっても良いという覚悟で、ことに臨んだのだろう。
648
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
愛する寵姫と国を捨てて逃げた貴方が何故ここに?
ましゅぺちーの
恋愛
シュベール王国では寵姫にのめり込み、政を疎かにする王がいた。
そんな愚かな王に人々の怒りは限界に達し、反乱が起きた。
反乱がおきると真っ先に王は愛する寵姫を連れ、国を捨てて逃げた。
城に残った王妃は処刑を覚悟していたが今までの功績により無罪放免となり、王妃はその後女王として即位した。
その数年後、女王となった王妃の元へやってきたのは王妃の元夫であり、シュベール王国の元王だった。
愛する寵姫と国を捨てて逃げた貴方が何故ここにいるのですか?
全14話。番外編ありです。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
旦那様、本当によろしいのですか?【完結】
翔千
恋愛
ロロビア王国、アークライド公爵家の娘ロザリア・ミラ・アークライドは夫のファーガスと結婚し、順風満帆の結婚生活・・・・・とは言い難い生活を送って来た。
なかなか子供を授かれず、夫はいつしかロザリアにに無関心なり、義母には子供が授からないことを責められていた。
そんな毎日をロザリアは笑顔で受け流していた。そんな、ある日、
「今日から愛しのサンドラがこの屋敷に住むから、お前は出て行け」
突然夫にそう告げられた。
夫の隣には豊満ボディの美人さんと嘲るように笑う義母。
理由も理不尽。だが、ロザリアは、
「旦那様、本当によろしいのですか?」
そういつもの微笑みを浮かべていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる