私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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21.縋りついてでも

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「……アルティリアお嬢様のことは大切に思っています」

 ブレットンさんは、私の方を見てゆっくりとそう呟いた。
 ただその表情は、明るいものであるとは言い難い。まだその考えは、変わっていないということなのだろうか。

「しかし当初私は、あなたのことを軽んじていました。目的はあくまでも、アンデルト伯爵家に対する復讐でした。あなたのことを優先しようとは思っていませんでした。私は冷酷な人間なのです。結局復讐を諦めきれなかった」

 ブレットンさんは、ゆっくりと言葉を発していた。
 それは言いながらも、色々と考えているかのようだった。
 迷っているということなのだろう。彼は揺れているのだ。私やレオールさんの言葉は、通じていない訳ではなかったようである。

「ブレットン、お前はアルティリア嬢のことを守ろうとしていたのだろう」
「……何を言う、レオール」
「話を聞いてきた俺にはわかる。アンデルト伯爵は危険な男だ。何れはアルティリア嬢にもその毒牙を向けただろう。お前はそれを危惧していたのではないのか?」
「……そのようなことはない!」

 レオールさんの言葉に、ブレットンさんは大きな声を出した。
 それは、図星であることを表しているといえる。ただ、私は驚いてもいない。あのお父様のことは、わかりたくはないがそれなりにわかっているからだ。
 お父様は、お母様に執着していた。その執着は私にも及んでいた。それはどんどんと、大きくなっていっていたのだ。

「ブレットンさん、私はあなたの行いを非難することができません。私にとってもお父様は、忌むべき人だったからです」
「アルティリアお嬢様……」
「増してや、あなたが私のためにお父様を手にかけたというなら、猶更です」
「……」

 私は、ブレットンさんにとことん縋りつくことにした。
 それが彼に対して、最も有効な方法であるということがわかっているからだ。
 それは彼にとっては、酷なことかもしれない。ただそもそも、死んで楽になるなんてことが間違っているのだ。彼は生きて、罪を償わなければならないのだから。

「ブレットンさん、あなたが罪を犯したというなら、それは生きて償うべきことです。今回は厳正な裁きを受けられるかはわかりませんが、しかしそれでも死んで楽になろうなんて思ってはいけません。私も罪を一緒に背負ってみせます。だから……」
「……ご立派になられましたね」

 ブレットンさんは、ゆっくりと天を仰いだ。
 彼の表情は、先程までとは違う。晴れやかとは言わないが、憑き物が落ちたかのようだ。
 その表情を見れば、彼がどのような決意をしたかはわかる。生きていくことを、ブレットンさんは選んでくれたのだろう。
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