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 私は、イルファー様の弟であるウォーラス様と話していた。
 言い方は少し悪いかもしれないが、彼は軽い人間である。イルファー様と比べると、親しみやすい人といえるだろうか。
 そんな彼の前では、イルファー様も普通の人になっている。いつもの威厳に溢れた王子ではなく、ただの兄なのだ。

「そういえば、あんたは婚約破棄されたんだよな?」
「え? ええ、そうですね」
「なんというか、血は争えないのかね……」
「……どういうことですか?」

 そこで、ウォーラス様は私に意味深なことを言ってきた。
 私が婚約破棄されたことが、一体なんだというのだろうか。

「いや、弟のエルクルが連れて来たのも、婚約破棄された女性だったんだ。俺の兄弟は、皆そういう立場の人間を好きになる」
「そうなのですね……」

 ウォーラス様の言葉に、私は少し驚いた。
 以外にも、イルファー様は弟と似たようなことをしていたようだ。
 婚約破棄など、そうそう起こることではない。そこが被るなど、なんとも不思議な話である。

「ちなみに、ウォーラス様は違ったのですか?」
「俺は違ったさ。特に問題なく、婚約者も決まった。つまり、兄弟の中では俺が一番まともだったということだな」
「え? まあ、そうですね……」

 よくわからないが、ウォーラス様は勝ち誇っていた。
 確かに、彼は一番まともな人生を歩んでいるみたいなので、それは間違っていないかもしれない。
 ただ、そのような態度はなんだか少し鬱陶しい気がする。イルファー様も、結構複雑な顔をしているので、私と同じ気持ちなのだろう。

「婚約破棄されたからといって、なんだというのだ?」
「え? 兄貴? なんだか、怒っていないか?」
「別に怒ってなどいない」

 イルファー様は、明らかに怒っていた。
 それは、何に対する怒りなのだろうか。
 弟の態度が気に入らなかったのか、それとも私のためなのだろうか。後者だったら、少し嬉しいのだが。

「……まあ、兄貴もいい婚約者を見つけたな。こういう雰囲気の女性は、兄貴に合っていると思うぜ」
「……何?」
「いや、こういう冷静な人は、兄貴に合っている。テンションが高い人より、そういう人の方が上手くいくと思うぜ」

 ウォーラス様は、私とイルファー様がお似合いだと言ってきた。
 恐らく、怒ったイルファー様を諫めようとしているのだろう。
 その言葉で、イルファー様は少しだけ落ち着いていた。なんというか、ウォーラス様の態度に呆れているような感じだ。

「ふん……まあ、いい。とりあえず、お前には紹介したということにする。次はエルクルの元に行く」
「あ、ああ、あいつにもよろしくな」

 そこで、イルファー様は話を切り上げた。
 どうやら、次の王子の元に行くようだ。
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