30 / 31
29.緊張する挨拶
しおりを挟む
クレイド様は、私のお兄様とお姉様と会うことになった。
ウェリーナお姉様の方は、特に心配していないのだが、問題はイルフェンお兄様の方である。
彼が、クレイド様を許してくれるのか。それが、重要なことである。
もっとも、イルフェンお兄様に私の婚約を決める権利があるという訳ではないのだが。
「初めまして、僕はクレイド・レヴラント。この国の第三王子で、エルミナさんの婚約者をさせていただいています」
二人の前で、クレイド様はそのような挨拶をした。
明らかに緊張している様子だ。やはり、イルフェンお兄様のことが気になっているのだろう。
「エルミナから、話は聞いています。どうか、エルミナのことをよろしくお願いします、クレイド様……」
「は、はい……」
クレイド様の挨拶に、ウェリーナお姉様はそのように返した。
それは、とても丁寧な挨拶である。流石は、お姉様だ。
一方で、私はお兄様のことが気になっていた。とりあえず、彼の様子を窺ってみる。
「……」
イルフェンお兄様は、険しい顔をしていた。
その表情は、微妙なものだ。ただ、敵意を向けているようにも見えるが、緊張しているようにも見えなくもない。
「イルフェンお兄様も、挨拶してください。もしかして、緊張しているのですか?」
「……いや、そういう訳ではない」
そんなお兄様に、お姉様が話しかけてくれた。
流石に、この場で何も言わないのはまずいことは、お兄様もわかっているはずだ。私に対する思いは強いが、こういう場ではきちんとできる人である。きっと、いい答えを出してくれるはずだと信じたい。
「……クレイド王子、エルミナは私にとって大切な妹です。あなたにその妹を任せる。それは私にとって、とても心配なことなのです」
「……はい。大切な妹君を預かるということは、とても重大なことだと認識しています」
「どうか、よろしくお願いします」
「はい……」
イルフェンお兄様は、クレイド様にゆっくりと頭を下げた。
やはり、彼の心境にも変化があったのだろうか。それとも、私達にああ言っていただけで、実際に会ったらこんな感じになったのだろうか。
どちらにしても、お兄様はとても丁寧な挨拶をしてくれた。それが、私は嬉しい。これで、やっとクレイド様が認められたのだ。とても安心できる。
こうして、クレイド様と二人の挨拶は終わったのだった。
ウェリーナお姉様の方は、特に心配していないのだが、問題はイルフェンお兄様の方である。
彼が、クレイド様を許してくれるのか。それが、重要なことである。
もっとも、イルフェンお兄様に私の婚約を決める権利があるという訳ではないのだが。
「初めまして、僕はクレイド・レヴラント。この国の第三王子で、エルミナさんの婚約者をさせていただいています」
二人の前で、クレイド様はそのような挨拶をした。
明らかに緊張している様子だ。やはり、イルフェンお兄様のことが気になっているのだろう。
「エルミナから、話は聞いています。どうか、エルミナのことをよろしくお願いします、クレイド様……」
「は、はい……」
クレイド様の挨拶に、ウェリーナお姉様はそのように返した。
それは、とても丁寧な挨拶である。流石は、お姉様だ。
一方で、私はお兄様のことが気になっていた。とりあえず、彼の様子を窺ってみる。
「……」
イルフェンお兄様は、険しい顔をしていた。
その表情は、微妙なものだ。ただ、敵意を向けているようにも見えるが、緊張しているようにも見えなくもない。
「イルフェンお兄様も、挨拶してください。もしかして、緊張しているのですか?」
「……いや、そういう訳ではない」
そんなお兄様に、お姉様が話しかけてくれた。
流石に、この場で何も言わないのはまずいことは、お兄様もわかっているはずだ。私に対する思いは強いが、こういう場ではきちんとできる人である。きっと、いい答えを出してくれるはずだと信じたい。
「……クレイド王子、エルミナは私にとって大切な妹です。あなたにその妹を任せる。それは私にとって、とても心配なことなのです」
「……はい。大切な妹君を預かるということは、とても重大なことだと認識しています」
「どうか、よろしくお願いします」
「はい……」
イルフェンお兄様は、クレイド様にゆっくりと頭を下げた。
やはり、彼の心境にも変化があったのだろうか。それとも、私達にああ言っていただけで、実際に会ったらこんな感じになったのだろうか。
どちらにしても、お兄様はとても丁寧な挨拶をしてくれた。それが、私は嬉しい。これで、やっとクレイド様が認められたのだ。とても安心できる。
こうして、クレイド様と二人の挨拶は終わったのだった。
62
あなたにおすすめの小説
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
【完結】地下牢同棲は、溺愛のはじまりでした〜ざまぁ後の優雅な幽閉ライフのつもりが、裏切り者が押しかけてきた〜
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
悪役令嬢の役割を終えて、優雅な幽閉ライフの始まりだ!! と思ったら、なぜか隣の牢との間の壁が崩壊した。
その先にいたのは、悪役令嬢時代に私を裏切った男──ナザトだった。
一緒に脱獄しようと誘われるけど、やっと手に入れた投獄スローライフを手放す気はない。
断れば、ナザトは「一緒に逃げようかと思ったけど、それが嫌なら同棲だな」と言い、問答無用で幽閉先の地下牢で同棲が開始されたのだった。
全4話です。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる