散々虐げてきた私が初恋の子だったからと今更手の平を返した所で、許せる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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15.恐怖する彼

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「……君の家はどうなるんだ?」
「はい?」
「僕と婚約破棄したら、君の家がどうなるのかと言っているんだ」

 床にあるペンダントの破片を見ながら、オルドス様は少し冷たい声色で言葉を発していた。
 彼にとって、最も重要だった支えを砕いたことによって、私への印象が変わったのかもしれない。しかしそれは、私にとっては最早どうでもいいことだ。

「ローヴァン男爵家が終わろうとも、私は構いません。そんなことよりも、あなたを裁く方が大切なことですから」
「僕の権力があれば、君の努力なんて徒労に終わる。いくらでも揉み消せるんだ。このくらいのことは……」
「……そうはさせませんよ」

 オルドス様の言葉に答えたのは、私ではなくラーバスさんだった。
 彼は、私を庇うように前を立つ。オルドス様の雰囲気が変わったため、守ろうとしてくれているのかもしれない。

「……お前は誰だ? 一介の騎士如きが、僕に何の用なんだ」
「名乗る程の者ではありません。私は国王様からの遣いに過ぎませんからね」
「国王、だと?」
「国王様は、ミルティア嬢の境遇にひどく心を痛めておられる。もちろん、ローヴァン男爵家を贔屓にするようなことはしませんが、あなたへの裁きには全面的に協力するつもりです」
「な、なんだと……」

 ラーバスさんの言葉に、オルドス様は額から汗を流していた。
 その様子に、私は少しだけ違和感を覚える。いくらなんでも、怯え過ぎているからだ。
 もちろん、私にしたことが判明しただけでも、彼は窮地に立たされるだろう。ただ、その怯え方は少々度が過ぎているといえる。彼はまるで、死への恐怖に怯えているかのようだ。

「オルドス侯爵令息、あなたは一体何をした?」

 それにはラーバスさんも気付いたのか、彼は眉間にしわを寄せて、オルドス様に詰め寄った。
 すると彼は、顔を青くしていく。どうやら、何か隠していることがあるのは間違いないようだ。

「僕は悪くない。僕のせいじゃないんだ。そうだ。あれは事故、事故だったんだ」
「……まさか」
「違う。そんな馬鹿なことがあるはずがない。あれは終わったことじゃないか。終わったことなんだ。今更、何を言うんだよ!」

 オルドス様の言葉に、私はある考えが頭に過っていた。
 それはずっと、頭の片隅で考えていたことではある。できれば考えたくなかったことだ。

 彼の嗜虐的な趣味は、使用人達の態度からしても最近始まったことではない。それならもしかしたら、私よりも以前に被害を受けた者がいるのではないか、そう考えたことがない訳ではない。
 ただ、私はその先の結果まで考えてはいなかった。だけどもしもそういった人がいて、その人が今どうなっているのかと考えていくと、一つの結論に達することになる。
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