散々虐げてきた私が初恋の子だったからと今更手の平を返した所で、許せる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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16.容赦なき行為

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「オルドス侯爵令息、もう一度お聞きします。あなたは一体何をした?」
「いや、僕は……」

 ラーバスさんは、オルドス様をその目を細めて睨みつけていた。
 それにオルドス様は、体を丸めている。怯えているのだろうか。そう私が思った次の瞬間、彼の体が素早く動いていた。

「僕は悪くないんだ!」
「うぐっ……」

 私の目の前に、血が飛び散った。
 それは、ラーバスさんの血だ。オルドス様が、短剣を取り出して彼の体に突き刺したのである。

「ラーバスさん!」
「ははっ! ふん、騎士だかなんだか知らないが、所詮は馬鹿な下民の一人だ。こうしてナイフを突き立てたら、一たまりも――」

 心配で叫んでいた私は、すぐに言葉を詰まらせることになった。
 オルドス様の体が、ゆっくりと宙に浮き始めたからだ。
 ラーバスさんは、彼の胸倉を掴んでいる。その体にナイフが突き刺さったままであるというのに、彼は意にも介さない。

「何をっ――うぐっ!」

 ラーバスさんは、そのままオルドス様を近くの壁に叩きつけた。
 突然のことに、オルドス様は目を丸めている。まさかこんなことをされるなんて思ってもいなかったのだろう。完全に呆気に取られているといった感じだ。

「お、お前、何をしたのか、わかっているのか? この僕にこのようなことをするなんて……」
「先に手を出したのは、あなたの方だ。この場合は、正当なる防衛になる。さて、あなたには感謝しなければならないな。お陰で、色々と手間が省ける」
「手間だと? お前、一体何――あがっ!」

 ラーバスさんは、容赦なくオルドス様の鳩尾に拳を叩きこんだ。
 壁際に追い込まれて逃げ場がないオルドス様は、大きく口を開けて苦しんでいる。程なくして彼の口からは、液体が溢れ出した。やがて彼は、ゆっくりと膝をつく。

「い、痛いっ……苦しい。どうして僕が、こんな目に」
「オルドス侯爵令息。質問に答えていただきたい。あなたが何をしたのかを話してもらいたい。それ程難しいことではないでしょう」
「ぼ、僕はっ――げほっ!」
「申し訳ない。先程のことがあったため、つい手が出てしまった……いや、出たのは足か」

 ラーバスさんの言葉を否定しようとしたオルドス様は、蹴りによってほぼ無理やり立ち上がらされていた。
 それは紛れもなく拷問である。紳士的だったはずのラーバスさんとは思えない程に、暴力的な行いだ。
 とはいえ、彼は騎士である。時には容赦や情けも捨てなければならないのが、騎士だ。オルドス様が余計なことをしたために、ラーバスさんも非情にならざるを得なかったようである。
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