散々虐げてきた私が初恋の子だったからと今更手の平を返した所で、許せる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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25.彼が欲しいもの

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「ローヴァン男爵、あなたの気持ちは理解できます。といっても、こんな若造が理解などということは、おこがましいことかもしれませんが……」
「いえ、そのようなことは……」

 気持ちを打ち明けたお父様に対して、ラーバスさんはどこか嬉しそうな顔をしていた。
 それはきっと、私に対する思いやりに溢れたお父様の言葉に、感服しているということだろうか。好意的解釈かもしれないが、今はそう思いたい所である。

「ですが、私は敢えてあなたに言わなければならない。私とミルティア嬢が婚約したならば、ローヴァン男爵家は救われます。私の地位は、侯爵に相当するものになるでしょうから」
「先程も言った通り、私はその申し出を受けたくはありません」
「ええ、わかっています。ただ理解していただきたいのは、私にとってそれはどうでもいいことだということです」
「え?」

 ラーバスさんの言葉に、お父様は目を丸めていた。
 突然の突き放すような言葉をかけられて、困惑しているのだろう。
 もちろん、私も少し驚いている。てっきり、ラーバスさんは私達を助けるために婚約の話を持ち出したものだと、思っていたからだ。

「それは単に、副次的な作用でしかありません。私にとって重要なのは、ミルティア嬢の方ですから」
「ミルティアの方?」
「ええ、私はミルティア嬢を妻に迎えたいと思っています。父上から話をいただいた時、結婚などが必要になることは理解していました。そこで思い浮かんだのは、ミルティア嬢です」

 ラーバスさんの視線が、一瞬だけ私の方に向いた。
 その視線に、私は少し照れてしまう。今の彼の言葉は、なんというか少し情熱のようなものが感じられたからだ。

「ミルティア嬢は、強く聡明な女性です。今回の事件で彼女と関りましたが、その強さというものを何度も感じました。私はそんなミルティア嬢に、惹かれているのです」
「ラ、ラーバスさん、それは……」

 私は、またも思わず口を開いていた。
 しかし、これに関しては本当に仕方ないことである。なぜなら今ラーバスさんが言ったことは、実質的に愛の告白に等しいものだからだ。

 まさか彼がそのような思いを抱いていたなんて、考えてもいなかったことである。私はかなり、動揺してしまっている。
 お父様やお母様も、かなり驚いているようだった。唯一メルリナだけは、目をキラキラと輝かせているが。

 何はともあれ、私はラーバスさんの言葉をきちんと受け止めなければならないだろう。
 ここまで真っ直ぐに言葉をかけてもらったのだから、私も言葉を返すべきだ。そう思って私は、ゆっくりと深呼吸するのだった。
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