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5(クラール視点)
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「それが、この私ファルテリナ・ロガルサの歩んできた道です」
「……そうだったのですね」
話を聞き終えて、私は少しだけ困惑していた。
彼女の話があまりに突拍子もない話で、すぐに理解が追いつかなかったのだ。
だが、一つだけ理解していることはある。それは、彼女の話が嘘ではないということだ。
彼女は自らの身の上を淡々と話していた。その様子には、本当に過ぎたことを話しているという確信を得られる程の雰囲気があったのだ。
「大変だったのですね……」
「ええ……でも、大変だった、なんです。その出来事は、もう既に過去……今の私には、それ程関係がないことです」
彼女の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。
今の彼女になんと声をかければいいか。それがすぐにわかる程、私は聡い人間ではなかったのだ。
励ますことも共感することも、今の彼女にはかけるべきではないと思った。そこまではわかったのだが、私はその先を導き出すことができないのである。
「ウェンシィ王国を出てから、いくつかの国を旅してきました。ワンドル王国、タルニーア共和国……そして、このタルギス王国まで来ました。一昨日までは、ケナ島という島にいたんですけど」
「ケナ島ですか……」
「ええ、いい所でしたよ」
私が言葉を探している内に、彼女は次の話をしていた。
ケナ島というのは、タルギス王国に属している島だ。ただ、海に独立していることもあって、私はそこまで島に詳しい訳ではない。もしかしたら、実際に行った彼女の方が詳しいのではないだろうか。
「それで、昨日近くの町に来たんですけど、そこでの岬から見える景色は綺麗だと聞いたんです。それで、空と海を見ていたら、あなたが現れました」
「そうですか……なんというか、邪魔をしてしまいましたね」
「いえ、そんなことはありませんよ。こうして、話も聞いてもらえましたし」
そう言って、彼女はゆっくりと動き始めた。
どうやら、この場から立ち去るつもりらしい。
彼女は、これからも当てのない旅を続けるのだろうか。そう思った時、私の体は自然に動いていた。
「待ってください」
「あら? どうかしましたか?」
「私と一緒に来ませんか?」
「え?」
私の発言に、彼女は目を丸くした。
それは当然のことである。私も、自分で言ったことに驚いているからだ。
私は急に何を言っているのだろうか。今初めて来たばかりの彼女にこんなことを言うのは、明らかにおかしいことである。
「あなたに、私の部下になってもらいたいのです」
「部下?」
「私はクラール・ウォングレイ、商人一家の跡取り息子です。今はまだ父の仕事を手伝っている身ですが、何れは家を預かることになります。そんな私の元で、働いてみませんか?」
思考とは裏腹に、私の口は勝手に動いていた。
どうして、こんなことを言っているのか。私自身にもわからない。だが、もう言ってしまったので、取り下げることも無理だ。
という訳で、私は彼女の言葉を待つことになった。彼女は、少し悩むような仕草を見せている。私の言葉について、色々と考えているのだろう。
「……同情してくださっているのですか? でも、それだけでこんな訳のわからない女を引き取るなんて、お勧めしませんよ?」
「同情……確かに、そうなのかもしれません。ですが、私は何よりあなたという人間が聡い人間だと思いました。あなたのように冷静に判断できる人が、私は欲しい」
「……私の話が、全て嘘かもしれませんよ?」
「不思議とわかるのです。あなたの言葉は嘘ではないと」
「……おかしな人ですね」
私の口から勝手に出てくる言葉に対して、彼女は笑みを見せてくれた。
その笑みに、私は思わず見惚れてしまった。初めて見せた彼女の笑みは、それ程に可憐に思えたのだ。
「わかりました……それなら、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんです」
「……後悔しても知りませんからね?」
彼女は、ゆっくりと私の手を取ってくれた。
その温もりに、私は何故かとても幸福な気持ちになるのだった。
「……そうだったのですね」
話を聞き終えて、私は少しだけ困惑していた。
彼女の話があまりに突拍子もない話で、すぐに理解が追いつかなかったのだ。
だが、一つだけ理解していることはある。それは、彼女の話が嘘ではないということだ。
彼女は自らの身の上を淡々と話していた。その様子には、本当に過ぎたことを話しているという確信を得られる程の雰囲気があったのだ。
「大変だったのですね……」
「ええ……でも、大変だった、なんです。その出来事は、もう既に過去……今の私には、それ程関係がないことです」
彼女の言葉に、私は何も言い返すことができなかった。
今の彼女になんと声をかければいいか。それがすぐにわかる程、私は聡い人間ではなかったのだ。
励ますことも共感することも、今の彼女にはかけるべきではないと思った。そこまではわかったのだが、私はその先を導き出すことができないのである。
「ウェンシィ王国を出てから、いくつかの国を旅してきました。ワンドル王国、タルニーア共和国……そして、このタルギス王国まで来ました。一昨日までは、ケナ島という島にいたんですけど」
「ケナ島ですか……」
「ええ、いい所でしたよ」
私が言葉を探している内に、彼女は次の話をしていた。
ケナ島というのは、タルギス王国に属している島だ。ただ、海に独立していることもあって、私はそこまで島に詳しい訳ではない。もしかしたら、実際に行った彼女の方が詳しいのではないだろうか。
「それで、昨日近くの町に来たんですけど、そこでの岬から見える景色は綺麗だと聞いたんです。それで、空と海を見ていたら、あなたが現れました」
「そうですか……なんというか、邪魔をしてしまいましたね」
「いえ、そんなことはありませんよ。こうして、話も聞いてもらえましたし」
そう言って、彼女はゆっくりと動き始めた。
どうやら、この場から立ち去るつもりらしい。
彼女は、これからも当てのない旅を続けるのだろうか。そう思った時、私の体は自然に動いていた。
「待ってください」
「あら? どうかしましたか?」
「私と一緒に来ませんか?」
「え?」
私の発言に、彼女は目を丸くした。
それは当然のことである。私も、自分で言ったことに驚いているからだ。
私は急に何を言っているのだろうか。今初めて来たばかりの彼女にこんなことを言うのは、明らかにおかしいことである。
「あなたに、私の部下になってもらいたいのです」
「部下?」
「私はクラール・ウォングレイ、商人一家の跡取り息子です。今はまだ父の仕事を手伝っている身ですが、何れは家を預かることになります。そんな私の元で、働いてみませんか?」
思考とは裏腹に、私の口は勝手に動いていた。
どうして、こんなことを言っているのか。私自身にもわからない。だが、もう言ってしまったので、取り下げることも無理だ。
という訳で、私は彼女の言葉を待つことになった。彼女は、少し悩むような仕草を見せている。私の言葉について、色々と考えているのだろう。
「……同情してくださっているのですか? でも、それだけでこんな訳のわからない女を引き取るなんて、お勧めしませんよ?」
「同情……確かに、そうなのかもしれません。ですが、私は何よりあなたという人間が聡い人間だと思いました。あなたのように冷静に判断できる人が、私は欲しい」
「……私の話が、全て嘘かもしれませんよ?」
「不思議とわかるのです。あなたの言葉は嘘ではないと」
「……おかしな人ですね」
私の口から勝手に出てくる言葉に対して、彼女は笑みを見せてくれた。
その笑みに、私は思わず見惚れてしまった。初めて見せた彼女の笑みは、それ程に可憐に思えたのだ。
「わかりました……それなら、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんです」
「……後悔しても知りませんからね?」
彼女は、ゆっくりと私の手を取ってくれた。
その温もりに、私は何故かとても幸福な気持ちになるのだった。
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